世界資本主義論としての『資本論』体系
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「世界資本主義論」の記事における「世界資本主義論としての『資本論』体系」の解説
純粋資本主義か世界資本主義かという観点の相違は、原理論が内包されているはずの『資本論』体系に関する解釈の改変をも要請した。侘美光彦は、『資本論』第3巻が一応出来上がったあと、第1巻・第2巻が彫琢されたことを重視し、(1)「第3巻の成立後、少なくとも「資本の流通過程」論の内容がマルクス自身の手によってかなり大幅に変更された」こと、(2)「産業資本はなによりもまず貨幣資本の循環、すなわち、前貸し資本を投下しつつ、その社会に必要な使用価値生産の一環となるような生産過程を根拠として、一定期間後にその前貸し資本を上回る貨幣資本を取得する資本として表示されるべきであった」とし、(3)「資本家にとって合理的克現実的な行動原理としての利潤率の規定が、[資本論第3巻では(補注)]体系的に十分には位置づけられていない」と指摘し、マルクスが第3巻執筆中に萌芽的に把握したが完成できなかった観点に基づいて第1巻・第2巻をも読み直されるべきだと主張した。 第3巻の主要原稿執筆以降のマルクスの方法論的発展にもとづいて、第1・2巻と第3巻との関係を再整理すると、第1・2巻における価値均衡から第3巻における生産価格金鉱へと移行するのでなく、第3巻における価値関係にもとづく競争の中から生産価格均衡が達成され、その均衡の底に、第1・2巻における価値関係が存在する、というように、いわば方法的にも逆転して理解されねばならないのである。。 これは、いわゆるプラン問題および転形問題に対する世界資本主義論的アプローチを提起している。このような観点からも侘美光彦は、競争論、商人資本論、産業循環論、恐慌論を基礎にすえる世界資本主義という構想を提起した。
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