人気投票型の読者参加型ゲーム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/01/03 10:10 UTC 版)
「読者参加型ゲーム」の記事における「人気投票型の読者参加型ゲーム」の解説
キャラクター登録型の冒険RPG風の読者参加型ゲームが主流の1992年、『マル勝PCエンジン』誌に『女神スタジアム』という新しいタイプの読者参加型ゲームが登場する。これは、読者のキャラクターを活躍させるのでなく製作側が用意した数人のキャラクターを活躍させてストーリーを語っていくというゲームであった。どのキャラクターが活躍するかは読者の応援ハガキにより決まるため、読者は好みのキャラクターを活躍させるべくハガキを送ろうというのがコンセプトであった。つまり人気投票を行い、その結果でストーリーが変化するという形式の読者参加型ゲームである。(この節以降、このように読者による人気投票を主体とする形式の読者参加型ゲームを「人気投票型」と便宜上呼称する)。この「女神スタジアム」以降、このような人気投票型読者参加型ゲームが他にも増えていくことになる。 人気投票型読者参加ゲームは、読者が自分が活躍させたいキャラクターを一人選び、投票数に従いキャラクターの活躍の度合いが決定されるというのが基本的な流れである。読者が行うことは人気投票に参加するだけという手軽さが売りだが、ただの投票には終わらないようにゲーム性が工夫されているものも多く存在する。 ゲーム性の工夫としてよくある物が、キャラクター同士がなんらかをめぐった争奪戦のライバルとして対立しているような構図になっているものである。どのキャラクターがその争奪戦で有利に立てるかは投票数によって決まる。純粋に投票数だけで争奪戦の有利不利が決まるものもあれば、RPG型と同じくキャラクターに能力値を設定して行為判定による対決で争奪戦の順位を決定するものも存在する。このとき、そのキャラクターの投票数が行為判定へのボーナスとして影響するのが基本である。人気のあるキャラクターはそれだけ強くなるのである(逆に行為判定が行われるゲームでは人気のないキャラクターが逆転することもありえる)。このような争奪戦タイプのゲームでは読者同士が組織票を行うためキャラクターごとの応援団のようなものも誌上のコーナーで発足することもある。「本命であるAというキャラクターのライバルのBというキャラクターを蹴落とすためにCというキャラクターを支援する」などといった戦略もあり、別のキャラクターの応援団同士が連携するなどといったこと良く行われる。 キャラクターへの人気投票を行うだけでなく、「キャラクターたちに対してどういう行動をさせたいか」や「キャラクターたちがどんな事件に巻き込まれるか」などを用意された選択肢から選んでハガキに書いて送ることを主体にしたゲームもある。近年ではこのタイプが人気投票型の主流である。このタイプの場合では、それぞれのキャラクターに対してもっとも応募数が多い選択肢が採用されて次回のキャラクターたちの行動が決定される。そしてその複数のキャラクターたちのそれぞれの行動が一つのストーリーを形作るのである。このタイプのゲームでは「キャラクターの対決における行為判定」のような数値処理が絡む部分をルールとしてデザインする必要がない反面、予想外の選択肢にもストーリーを対応させる高い文芸力が問われる。また、『シスター・プリンセス』や『双恋』などの恋愛ゲーム 的な要素を主体にした人気投票ゲームの場合、ヒロインキャラクターとは別に「主人公」が設定されることがある。そしてこの主人公の行動を読者の投稿で決定するのである。この主人公はヒロインとは違い読者の分身ということで名前や個性は設定されないこともある。 これらの人気投票型のゲームは、応募数が大量にあってもさばきやすいということもあり、製作側からは重宝された。人気投票に対象となるキャラクターたちは基本的にいわゆる美少女キャラが用意されるのが定番だった。これは人気投票を行うのに値するだけの華がキャラクターには必要だったということが大きい。1990年代後半の時期は、『電撃G's magazine』や『E-LOGIN』など、アダルトゲームを含む「美少女ゲーム」の紹介を主軸とする雑誌で多くの人気投票型の読者参加型ゲームが展開された(なお、『パソコンパラダイス』も1990年代初期から現在に至るまで読者参加型ゲームの連載で知られるアダルトゲーム雑誌だが、この雑誌で行われているのはキャラクター登録型が中心である)。 美少女キャラクターを使った人気投票型読者参加ゲームには、RPG風の読者参加型ゲーム以上にメディアミックスが容易であるというメリットもある。その美少女キャラクターさえ出せればどのような形のメディアミックスも可能だからである。いわゆるギャルゲーの形でコンピュータゲーム化されたものは多い。コミック化、アニメ化、小説化されたものもある。中でも1999年に電撃G's magazineで開始された『シスタープリンセス』がメディアミックス展開で大ヒットし、キャラクターグッズが大量に販売された。 この成功を受け、美少女キャラクターを使った人気投票型読者参加ゲームは、萌え系キャラクタービジネスの一つのモデルとしても使われるようになる。メディアミックス系キャラクターコンテンツを立ち上げる際、はじめに人気投票型読者参加型ゲームを行い、どんなキャラが人気か、どんなストーリー展開が望まれているかなどをリサーチすることが可能なのである。また、読者の食いつきが悪い企画はその時点でメディアミックス計画を白紙に戻すこともできる。2000年代以降はこの流れによってゲーム誌以外の、メディアミックス系キャラクター誌でも人気投票型読者参加ゲームが行われるようになった。人気投票型読者参加ゲームが積極的に行われたキャラクター誌には『メガミマガジン』や『電撃萌王』、『マジキュー』など多数ある。
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