体系と型
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/14 13:59 UTC 版)
アクセントには大きく分けて強弱アクセントと高低アクセントがあるが、東京式アクセントは高低アクセントである。高低と言っても、ドレミのような絶対的な音の高さではなく、前の音節よりも高いか低いかという相対的な高さである。東京式アクセントの体系は、語において音の高さ(ピッチ)の下がり目が有るか無いか、有るならばどこに(何拍目に)有るのかが区別され、語ごとにこれが決まっているものである。共通語・東京方言では、1拍目の後に下がり目がある場合を除き、単独の発音では「たまごが」「さかなが」のように、1拍目と2拍目の間にピッチの上昇がある(高く発音する部分を強調表現で示す)()。しかし連文節では「このたまごが」「このさかなが」のようになり、必ず語頭で上昇するわけではない。上昇はアクセントの特徴ではなく、一まとまりに発音した句の最初に現れる特徴で、句音調と呼ぶ。一方、「このたまごが」の「ま」と「ご」の間の下がり目は変わらない。この下がり目が単語に固有のアクセントであり、記号○を用いる。「たまご」のアクセントは○○○のように表記し、ピッチの下がり目が2拍目の直後にあることを表す。このような音の下がり目のあるアクセントを起伏式(起伏型、有核型とも)と言う。音が下がる直前の拍(○)をアクセント核と言う。また、「さかな」のように音の下がり目が無いものを平板式(平板型、無核型とも)と言い、アクセント核が無いので○○○のように表す。 ところで、語のアクセントは、助詞(「が」「は」など)が付いた形で考える必要がある。つまり、共通語のアクセントでは、「鼻」と「花」はどちらも単独の場合は「はな」と発音されて区別がない が、助詞を付けて考えると「(鼻)はなが」、「(花)はなが」と発音され区別がある。この例では、「鼻」はアクセント核のない平板型であるのに対し、「花」は2拍目にアクセント核がある型である。起伏式のうち、「花」のような単語の最後の拍にアクセント核があるものを尾高型と言い、その後に付く助詞が低く発音される。一方、平板型では後に続く助詞のピッチは下がらない。また、アクセント核が1拍目にあるものは頭高型と呼ばれる。東京式アクセントでは、一つの語に(音韻論的に意味のある)下がり目は一か所しかなく、アクセント核は単語の最初の拍から最後の拍までのどこかに置かれる(どこにも置くことができる)か、あるいはどこにも置かれないので、n拍語にはn+1種類のアクセント型(例えば2拍なら○○、○○、○○の3種類)がある。1拍名詞は単独ではアクセントの区別がつかない(東北北部を除く)が、助詞を付けた場合、○型は「とが」(戸が)のように助詞が高いか名詞と同じ高さで、○型では「めが」(目が)のように助詞が低くなる。 一方、近畿地方・四国地方を中心に分布する京阪式アクセントの体系は、ピッチの下がり目だけでなく、語頭が高いか低いかも区別するものである。つまり、語頭が高いもの(高起式)は文中でも語頭が高く、語頭が低いもの(低起式)は文中でも低く始まる、というように語頭の高低は固定されている。例えば京阪式では「そえる」(高起平板)と「いちご」(低起・2拍目に核)は文中では「そえるいちご」のように発音され、東京式では単独の場合に「そえる」、「いちご」となるものが文中では「そえるいちご」(共通語の場合)のようになるのとは対照的である。このように、東京式アクセントと京阪式アクセントでは、どの語がどのアクセント型に当てはまるかだけでなく、アクセントの弁別システムが異なる。
※この「体系と型」の解説は、「東京式アクセント」の解説の一部です。
「体系と型」を含む「東京式アクセント」の記事については、「東京式アクセント」の概要を参照ください。
- 体系と型のページへのリンク