出走
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 15:56 UTC 版)
F1レースに出走するためには、FIAが発給するモータースポーツライセンスの最上位クラスである「スーパーライセンス」を所持していなければならない。2015年までも下位カテゴリーの経験の必要性が言及されていたが、2001年のキミ・ライコネンのように、F1マシンで指定距離を走行したドライバーであれば、個別の審査を経てライセンスが発給されることもあった。ただ、時代が進むにつれ、ドライバーの低年齢化が著しく進み、2014年にはマックス・フェルスタッペン(トロ・ロッソ)が史上最年少の17歳でF1のフリー走行をこなし、翌年フェルスタッペンはレギュラー契約を結んでF1デビューを果たした。しかし、これがきっかけとなって、フォーミュラワンドライバーの低年齢化が各国の交通法規や酒に関する法律に抵触すると議論が進んだ結果、運転経験が少ないドライバーのデビューに苦言が呈された。 その結果、FIAはスーパーライセンスの発給規定を一層厳格化することになり、2016年以降は 各レースカテゴリに2年以上(開催レース数の80%以上)参戦し、参戦した年の成績に応じて与えられる「スーパーライセンスポイント」を過去3年間で40点以上獲得していること 近年のF1マシンで300km以上の距離を走行した経験があること 自動車運転免許を取得していること 年齢が18歳以上であること が明記され、多くの条件に該当する必要がある方針へ変化した(詳細はスーパーライセンス、マックス・フェルスタッペンを参照)。 そのため、前述の通り、スーパーライセンスの発給資格を満たしていることが2016年以降は絶対条件となったため、かつてのような18歳未満のドライバーはいかなる特例をもってしてもF1への出場はおろか、リザーブドライバーとしての登録やテストドライバーとしてフリー走行のみに参加することすら認められなくなった。過度な低年齢化や経験不足によるデビューの抑制の評価する声もあるものの、1991年にミハエル・シューマッハがF1へスポット参戦する形でF1デビューした事例や2001年にジェンソン・バトンがウィリアムズのドライバーとしてフル参戦した事例は、この基準の場合、認められていなかったことになるため、ポイントで左右される仕組みに関しては見解が分かれている。 ただし、下位カテゴリーの参戦が2年以上が必要という点や年齢制限が導入されたものの、2016年以降であってもスーパーライセンスポイントの獲得状況によっては、かつてのような、直下の下位カテゴリー(2017年以降ならFIA F2)に参戦せず、飛び級的な形で参戦することは可能である。ポイント上ではFIA F3とそれ以下に属するカテゴリーの成績の2年分で発給条件を満たすことは可能であり、実際、ランス・ストロールはイタリアF4とヨーロッパF3のタイトルを立て続けに獲得し、ライセンスポイントの40点を超えたため、いわゆるF3からF1に飛び級的な形でのF1デビューを果たしている。ただ、飛び級は事実上ストロールが最後となっており、2018年以降はF2を1年間フル参戦を果たしたドライバーにスーパーライセンスを発給している傾向が増えつつある。 各F1チームは1シーズン4人までのドライバーをレースで起用することができる。最大4人のレースドライバーに加え、グランプリ週末金曜日の練習走行(P1・P2)では各セッション2人までの追加ドライバーを出走させることができるが、それらの追加ドライバーは最低でも「フリー走行限定スーパーライセンス」を所持している必要がある。多くのF1チームはレギュラードライバーが参戦できない場合の代役、およびマシン開発の担当者として「リザーブドライバー」や「テストドライバー」を任命しているが、F1のテスト制限が進んだ現在では彼らの主な役割はドライビングシミュレーター上での作業となっている。その関係でフリー走行もテスト的な役割を担わなくてはいけなくなってしまったため、リザーブドライバーがフリー走行のみ参加して経験を積むということは困難になっており、技量維持のためフォーミュラEといった別カテゴリーへ参戦している事例も少なくない。実際、2020年度にはセルジオ・ペレスが新型コロナウイルスの影響で欠場することになった際、チームは登録していたリザーブドライバーではなく、前年にF1のレギュラーシートを喪失していたニコ・ヒュルケンベルグを急遽起用している。ヒュルケンベルグはその前の段階では出走したチームのリザーブドライバーとしても登録されていなかったが、登録していたリザーブドライバーが別カテゴリーへ参戦中だったため調整が間に合わないと判断したことや2019年まで彼はF1に参戦していた関係上、スーパーライセンスの発給資格は3年間有効とするという基準を満たしており、申請さえすればライセンスを得られる状況であったという背景もある。 F1に参戦するドライバーは自らのカーナンバーを2から99までの数字(永久欠番である17を除く)から自由に選択することができ、選択された数字はそのドライバーのキャリアを通して固定されたカーナンバーとなる。カーナンバー1は専用ナンバーとして現役のドライバーズチャンピオンに与えられるが、チャンピオンは自分が選択した固定ナンバーを使い続けることも可能である。 シーズン中、各ドライバーのヘルメットは同一のデザインを使用し続けなくてはならないが、ドライバーのホームレース(もしくはチームのホームレース)やモナコGPなど、特別な1戦でのみはそれに合わせた特別仕様のデザインが許されている。ただし、基本1回限りとされているヘルメットのデザイン変更だが、これには抜け穴があり、「シーズン中に申請されたデザイン変更が許可される回数は1回限り」だが、ドライバー側が「無許可でデザイン変更した場合」であっても、それを理由に罰せられたことはなく、厳密には形骸化している。実際、2018年のベッテルはすべてのレースにてロゴの位置や文字のフォントの変更などの最初に発表したデザインから大きく逸脱しない程度のデザイン変更を毎戦加えて出走した。そのため、デザイン変更の規定に矛盾が生じつつあったが、2019年ロシアGPにてトロロッソのダニール・クビアトがヘルメットのデザイン変更を申請したのだが、その権利をイタリアGPで使用していたことを理由に却下された件をきっかけに批判が殺到。ただ擁護するなら、時のレギュレーションに従ってFIAは却下したのだが、いわゆる規定の矛盾が問題視された。その結果、2020年からはドライバーヘルメットのデザイン変更の回数制限が撤廃されることとなった。
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