唇のねじれた男とは? わかりやすく解説

唇のねじれた男

作者アーサー・コナン・ドイル

収載図書ホームズの名推理ベスト5
出版社講談社インターナショナル
刊行年月1998.12
シリーズ名講談社ルビー・ブックス

収載図書シャーロック・ホームズの冒険新訳シャーロック・ホームズ全集
出版社光文社
刊行年月2006.1
シリーズ名光文社文庫

収載図書シャーロック・ホームズの冒険
出版社エミルオン
刊行年月2007.10
シリーズ名コナン・ドイル小説全集


唇のねじれた男

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/17 10:05 UTC 版)

唇のねじれた男
著者 コナン・ドイル
発表年 1891年
出典 シャーロック・ホームズの冒険
依頼者 セントクレア夫人
発生年 1889年
事件 ネビル・セントクレア氏失踪事件
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唇のねじれた男」(くちびるのねじれたおとこ、The Man with the Twisted Lip)は、イギリスの小説家、アーサー・コナン・ドイルによる短編小説。シャーロック・ホームズシリーズの一つで、56ある短編小説のうち6番目に発表された作品である。「ストランド・マガジン」1891年12月号初出。1892年発行の短編集『シャーロック・ホームズの冒険』(The Adventures of Sherlock Holmes) に収録された[1]

あらすじ

1889年6月に起こった事件と冒頭に記される。

ワトスン(結婚し、と暮らしている)のところに、妻の友人であるケート・ホイットニーが悲嘆してやってきた。ケートの夫アイザ・ホイットニーがアヘン窟へ行ったきり、2日間も帰って来ないので、ぜひ連れ出してほしいとの求めによって、ワトスンは単身アヘン窟へ向かう。アヘン窟の中でワトスンは、首尾よくアイザを見つけるが、同時に老人に変装していたホームズの姿も見つけ、事件が起こっていることを知る。

その事件とは次のようなものである。今週の月曜日[2]に、ネビル・セントクレアの姿が、偶然にも街を歩いていた妻によって、アヘン窟の3階で目撃された。夫がアヘン窟にいることに驚いた妻が、警官とともに現場に向かったところ、セントクレアの姿は消え失せていて、唇のねじれた身体障害を患っていると思われる男ヒュー・ブーンがそこにいるだけであった。セントクレアの持ち物は、上着以外の衣服、帽子、靴や時計まで残されていた。窓枠には血痕が付いていたので、ヒューはその場で逮捕された。アヘン窟の経営者の男は、3階で起こったことは何も知らないと証言した。その後の捜査で、アヘン窟の目の前を流れる川の中には、セントクレアの上着が沈んでいて、そのポケットには小銭がいっぱい詰め込まれているのが見つかった。だがセントクレア本人の遺体は発見されず、所在も不明のままだった。

ホームズは、残念だがセントクレアは既に亡くなっているだろうと推理した。だがセントクレア夫人が、夫が生きている証拠の手紙が届いたと言ってきた。その手紙には、事件から3日後の木曜日の消印が押されていた。妻の証言によると、その筆跡はセントクレアが急いで書くときのものに相違ないという。また同封されていた指輪も、印形がついているのでセントクレア本人の持ち物だった。ただ不思議なのは、手紙の表面に書かれた宛先の文字は夫の筆跡ではなく、誰かが時間をかけて休み休み書いたようだった。これらの証拠をもとに、ホームズはクッションを集めて座り込み、パイプから紫の煙を立ち上らせて、セントクレア氏失踪の謎解きにとりかかった。

夜が明けてワトスンが目覚めたときも、ホームズはクッションに座っていた。ホームズは浴室からスポンジを持ってくると、留置場へ行こうと誘った。当直の警部に案内されて、逮捕されたヒュー・ブーンが入れられている独房に来たホームズとワトスン。小窓を開けてみると、ヒューはまだ眠っているようだ。静かに扉を開け、水で湿らせたスポンジを持って入ったホームズは、おもむろにヒューの顔を縦と横に強くこすった。そしてホームズは「ネビル・セントクレア氏を紹介します」と言った。その顔は、写真に写っていたセントクレアに間違いなかった。警部も失踪した本人がここにいることに驚いていた。セントクレアは眠い目をこすってきょろきょろと周囲を見回したが、自分の正体がばれたことを知って、悲鳴をあげ枕に顔をうずめた。やがてセントクレアは起き上がり、私が失踪したのでなければ何の罪でここに入れられたのか、と尋ねた。

セントクレアが話した事件の概要は次のとおりである。彼は新聞記者だったが、あるとき編集長から、乞食についての連載記事を書いてくれと頼まれた。むかし役者をしていたころ、メーキャップには自信があったので、乞食に変装して街角に座ってみた。一日が終わって、儲けを数えてみたら2ポンドを越していた。これに味を占め、記者をやめて乞食の仕事だけをした。家を出るときはきちんとした身なりをし、例のアヘン窟で乞食に変装して仕事をし、また着替えて家に帰るという生活をしていた。このことを知っているのは、アヘン窟の経営者だけである。妻に見られたときは、上着のポケットに小銭を入れて川に捨て、すぐにヒュー・ブーンに変装した。自分が無事であることを手紙に書いて経営者に託したが、届いたのが金曜日になるとは思わなかった、などなど…。セントクレアは、二度と乞食の真似をしないと誓った。

ワトスンの名前について

ワトスンのフルネームは「ジョン・H・ワトスン」である。だが、妻のメアリーはこの作品でなぜかワトスンのことを「ジェームズ」と呼んでいて、シリーズ中この1カ所だけであり以前より問題になっている。これは、ワトスンの姓は作者ドイルが、ポーツマス在住の時に加入していたポーツマス文芸・科学協会の友人の医師ジェームズ・ワトスンから姓を借り、同名を避けて名をジョンと変えたが、この時にうっかりモデルの本名を呼ばせてしまったとの説がある[3][4]。しかし実在人物として取り扱うシャーロキアンとして、推理作家ドロシー・セイヤーズは、ワトスンのミドルネームはヘイミシュ(Hamish:ジェームズに当たるスコットランド名)で、Hはその頭文字である、という推論による解決策を提示している[3]

脚注

  1. ^ ジャック・トレイシー『シャーロック・ホームズ大百科事典』日暮雅通訳、河出書房新社、2002年、101頁
  2. ^ 「今日」の日付と曜日があっていない記述があるので何日かは不明。序盤でアイザ・ホイットニーに日を問われたワトソンが「今日は6月19日の金曜日」と言っているが、1889年の6月19日は水曜日である。なお、ホイットニーは「今日が水曜日」だと思っていた。
  3. ^ a b 水野雅士 『シャーロッキアンの放浪三昧』青弓社 2008年 pp.81-82
  4. ^ ジョン・ディクスン・カー『コナン・ドイル』ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1993年

外部リンク


唇のねじれた男(シャーロック・ホームズの冒険)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/08/31 09:26 UTC 版)

メアリー・モースタン」の記事における「唇のねじれた男(シャーロック・ホームズの冒険)」の解説

ある晩、メアリー友人ケート・ホイットニーが助け求めて駆けつけて来る。なお、この作品ではメアリーワトスンを「ジェームズ」と呼んでいる(ワトスンフルネームは「ジョン・H・ワトスン」である)。

※この「唇のねじれた男(シャーロック・ホームズの冒険)」の解説は、「メアリー・モースタン」の解説の一部です。
「唇のねじれた男(シャーロック・ホームズの冒険)」を含む「メアリー・モースタン」の記事については、「メアリー・モースタン」の概要を参照ください。

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