実施権(じっしけん)
”実施権”とは、特許されている発明を実施するための権利をいう。いわゆるライセンスである。
実施権には、権利者とライセンスを受ける者との契約に基づく実施権と、権利者の意図とは関係なく法律上の条件を満たす者に与えられる実施権(法定実施権)とがある。
契約に基づく実施権には、”専用実施権””通常実施権”の2種類がある。”専用実施権”は、ライセンスを受けた者だけが独占的に実施できる(exclusive licence)。したがって、特許権者は、同じ内容について、複数人に専用実施権を設定することはできない。また、設定した範囲内においては、特許権者であってもその発明を実施することはできない。専用実施権者は、設定を受けた範囲内においては、ほぼ、特許権者と同等の地位を有する。たとえば、設定を受けた範囲内において、侵害行為があった場合、専用実施権者は、差し止め請求、損害賠償請求を行うことができる。
なお、専用実施権は、特許庁の原簿に登録しなければ効力を生じない(特許法98条1項2号)。実務的には、ライセンス契約書において「独占的」である旨を、当事者間で定めておき、特許庁原簿への登録を行わない場合もある。このような場合、法的には、専用実施権と呼ぶことはできず、”独占的通常実施権”と呼ばれている。”独占的通常実施権”を有する者が、差し止め請求、損害賠償請求を行使できるか否かは、議論が分かれている。
”通常実施権”は、独占的ではなく単に実施するだけの権利である(non-exclusive licence)。したがって、特許権者は、同じ内容について、複数人に通常実施権を設定することができる。
通常実施権者は、設定した範囲内において、他人が発明を実施した場合であっても、差し止め請求、損害賠償請求を行うことはできない。このような場合、特許権者に、差し止め請求、損害賠償請求を行ってもらうこととなる。
なお、通常実施権は、特許庁の原簿に登録しなくとも、当事者間の契約だけで効力を生じる。また、原簿に登録しなくとも、第三者に対抗することができる(特許法99条)。たとえば、特許権者がその特許を譲渡した場合でも、新しい特許権者に対し、通常実施権者としての地位を主張することができる。つまり、特許権者が変わっても、引き続き、特許発明の実施を続けることができる。
法定通常実施権には、特許権者が出願する前からその発明を実施していた者に法律上与えられる“先使用に基づく通常実施権”(79条)などがある。
なお、互いにライセンスしあうことを、クロスライセンスと呼ぶ。また、ライセンスを受けた者が、さらに他人にライセンスをすることをサブライセンス(再実施権)という。
(執筆:弁理士 古谷栄男)
実施権
また、特許法上所定の条件を備える場合は特許権者以外の者が特許発明を実施できることが法的に認められ、特許法上裁定という手段によって特許権者以外の者が特許発明を実施することが認められたりする場合もある。
しかし、通常は、特許権者以外の者がその特許発明を適当な対価を支払って実施することを希望する場合や、特許権者が自らの実施のための資金、設備、人員等を手当てできないため他人に実施させることを希望する場合に実施される権利をいう。
いずれも実施できる期間、地域、実施品の内容などの範囲や実施料等は契約で自由に設定することができる。「実施権」は、専用実施権と通常実施権に大別される。
ライセンス(実施権)
実施権
実施権
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/29 12:21 UTC 版)
詳細は「実施権」を参照 実施権とは、特許権者による制限なく業として特許発明を実施することができる権利をいう。実施権には大別して専用実施権および通常実施権の2種類があり、いずれも業として特許発明を実施することができる権利である(特許法七十七条2項、特許法七十八条2項)。両者の主な違いは専用実施権は物権的な権利であるのに対し、通常実施権は債権的な性格を有する事にあり逐条20版(p280)、それゆえ前者は独占排他性の有するのに対し、後者はそうでない。これが原因で両者には以下のような差がある: 専用実施権の場合は地域・内容・期間の条件が同一の専用実施権を2人の者に設定する事はできないが逐条20版(p278)、通常実施権の場合は同時に同条件の通常実施権を複数の者に許諾できる逐条20版(p280)。 専用実施権を設定した場合特許権者自身であっても専用実施権者に許諾した地域・内容・期間には発明を実施できないが、通常実施権の場合は通常実施権者に許諾した地域・内容・期間であっても特許権者自身が発明を実施できる逐条20版(p280)。(専用実施権を設定しても自身の特許発明を実施したい場合には専用実施権者から通常実施権を許諾してもらう必要がある高橋5版(p188))。 専用実施権者には権利侵害の際の差止請求権、損害賠償請求権があるが、通常実施権者の場合は、差止請求権も損害賠償請求権も否定する立場が多数説である(後述する独占的通常実施権の場合を除く)高橋5版(p195)。
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