実用上の観点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/20 06:56 UTC 版)
右の図1は、TEMにおける並列電子ビームの経路の概略図で、試料にあたってから蛍光スクリーンに映し出されるまでを描いている。試料に照射された電子ビームは試料を透過する際に構成元素の持つ静電ポテンシャルによって散乱される。散乱された電子は回折を起こすが、電磁対物レンズによって、試料から有限の距離に位置する、後焦点面 (図の破線で示した面) に電子回折パターンを形成する。これは、対物レンズを使用せずに、検出器を無限遠に置いた場合に得られるフラウンホーファー回折と等価である (すなわち、TEMにおける対物レンズは物体のフーリエ変換器の役割を果たしている)。また、このレンズは試料の1つの点を通過して散乱した電子を蛍光スクリーン上の1点に集め、それによって試料の像を形成する役割も果たす。この対物レンズの良し悪しが主に像質を左右するため、TEMでは最も重要なレンズとして扱われる。顕微鏡の他の磁気レンズを操作すると、像ではなくこの回折パターンをスクリーンに投影することもできる。このようにして得た回折パターンの例を図2に示す。試料を電子ビームに対して傾けると、結晶のいくつかの向きの回折パターンが得られる。そうすることで、結晶の逆格子を3次元にマッピングすることができる。体系的な回折点の不在を調べることで、ブラベー格子を見分けたり、結晶構造内の螺旋軸や映進面の存在を特定できる。
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