政府の定義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/27 14:28 UTC 版)
米国研究公正局(ORI、Office of Research Integrity)は、米国の生物医学系の分野の科学における不正行為に対処する米国の政府機関である。対象の3本柱は、ねつ造、改竄、盗用である。他の分野、例えば、数学、コンピュータ科学、社会科学などの科学における不正行為は、米国の別の政府機関であるアメリカ国立科学財団 (National Science Foundation, NSF)が管轄する。 管轄が異なるとはいえ、米国政府の「盗用の定義」は共通している。実質的に、研究不正の理念・諸規則・対処は、米国研究公正局が米国の中心的な役割を果たしてきた。 研究公正局の上部機関のアメリカ公衆衛生局(United States Public Health Service)が、「盗用の定義」をしている。 研究不正を、研究の提案、実行、評価、結果発表における、捏造、改竄、盗用と定義する。盗用は、適切なクレジットをしないで、他人のアイデア、作業過程、結果、語群を横領することである。ただし悪意のない間違及び意見の相違は含まない。 — Federal Register / Vol.70, No.94 / Tuesday, May 17, 2005 / Rules and Regulations、28,386ページ ミシガン大学名誉教授のゲイル・ダマー(Gail M. Dummer)がミシガン大学のサイト で、大学院生向けに盗用の解説をしている。その解説が上記のアメリカ公衆衛生局の「盗用の定義」を具体的に解説している。 「適切なクレジットをする」とは、オリジナルの著者、作者、研究者、学者の名前を論文中に示すこと、他の研究者が原典を探せるための書誌情報を記述すること、その分野の標準規範に従うこと、直接の引用は引用符を使うこと、である。 「アイデア」とは、学会発表、非公開の審査などで得た原初のアイデア情報の利用で、出版論文として未公表なアイデアである。 「作業過程」とは、他の研究者が書いた方法(特に、その分野の共通知識となっていない方法)を利用することである。 「結果」とは、他の研究者の研究結果であるデータ、図、表を流用したレポート・発表である。 「語群」とは、4-6個以上の連続した単語群で、その複製、フレーズの編成替え、大幅な言い換えをし、利用する行為である。 — ゲイル・ダマー(Gail M. Dummer)ミシガン大学名誉教授 米国研究公正局の「盗用の定義」は上記を踏まえ次のようである。 アメリカ公衆衛生局(United States Public Health Service)の盗用の定義は、科学界から広い賛同を得ている。「盗用」の定義には一般的に少しあいまいな点があるので、研究公正局の考えを示す。盗用は、「知的財産の盗み・横領」、そして、「他人の研究成果を実質的に出所不明にして複製する」ことである。オーサーシップや研究功績の帰属に関する問題は対象外である。「知的財産の盗み・横領」は、研究費申請書の審査や投稿論文原稿の査読など、特権的立場で得たアイディアや分析・解析方法という知的財産の盗み・横領である。 「他人の研究成果を実質的に出所不明にして複製する」は、他人の文書のセンテンスやパラグラフを一字一句、あるいはほぼ一字一句、出所不明にして流用し、元著者を示さず、本人が記述したかのように通常の読者を誤解させる行為である。研究公正局は、通常使用される実験法や先行研究の中の文章と同じ、あるいはほとんど同じフレーズを限定的に流用する場合は、その流用を問題視しない。そういう流用は、読者に重要な誤解を与えるとは考えないからである。 — 米国研究公正局 後に、「研究費申請書の審査や投稿論文原稿の査読など、特権的立場で得たアイディアや分析・解析方法」であっても、引用すれば「盗用」ではないと改訂した。
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