暖かい雨
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/02 06:17 UTC 版)
最初から最後まで液体の状態で降水過程を経て、「暖かい雲」(warm cloud) から「暖かい雨」(warm rain) が降るもの。固体の状態を経ないもの。 例えば熱帯の海の空気の場合を考えてみる。空気に含まれる水蒸気の量が非常に多く、巨大な凝結核により形成された雲粒が多数ある上、強い上昇気流によって飽和水蒸気量が大きな割合で低下する(=空気中の水蒸気のうち、雲粒になって分離される量が格段に多い)。すると、ライミングがなくとも、凝結過程での成長が速くなる。 凝結過程で著しく成長すれば、先述したように一様に大きな雲粒ができる。すると、併合過程での成長も大きい。これは、雲の中における雲粒の大きさ別分布と衝突率の関係による。半径が5μm以下の小さな雲粒はほとんど併合せず、10μm以上の雲粒多数と20μm以上の雲粒少数であれば衝突率は10%、15μm以上の雲粒多数と30μm以上の雲粒少数であれば衝突率は50%、15μm以上の雲粒多数と30μmを大きく超える雲粒少数であれば衝突率はほぼ100%と考えられている。さらに他の研究により、30μm以上の雲粒ができなくても、20μm以上の雲粒同士の衝突により大きな雲粒ができるという報告もあるが、詳しく分かっていない部分もある。 よって、このような条件が整えば、急速に雲粒が成長して大きな雨粒になる。一方、凝結過程での成長が乏しければ、ほとんど成長しない。つまり、大気中の水蒸気量が多かったり、空気の上昇幅が大きければ大粒の雨になりやすいが、逆なら霧雨にもなりやすい。 地表付近で暖かい雲ができて滞留すると、凝結過程・併合過程ともに成長がほとんどないため、雲粒の大きさがほとんど変わらない状態が維持され、霧になる。これが上空で起これば層雲や高層雲といった、消えにくい雲になる。成長初期の積雲も「暖かい雲」であるが、晴天時に出ることが多く、再蒸発しやすいので消えやすい。
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