概念とその発展とは? わかりやすく解説

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概念とその発展

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/17 16:19 UTC 版)

ソーシャル・キャピタル」の記事における「概念とその発展」の解説

ソーシャル・キャピタルという概念19世紀から存在しており、ジョン・デューイ1899年の『学校と社会』でこの語を用いているのを見ることができる。アメリカ合衆国ヴァージニア州西部農村地域視学官であったL.J.ハニファンにより、1916年学校がうまく機能するためには、地域学校におけるコミュニティ関与が重要であると論じ論文中でも、この語は使われた。1961年ジェイン・ジェイコブズ論文の中でこの言葉復活させ、ネットワーク価値に関する言葉として用いたが、明確な定義はなかった。 初めまとまった説明をしたのは1972年ピエール・ブルデューである(しかし明確な定義は1984年)。ブルデューは、人間の持つ資本(あるいは社会的資源価値一般)を、文化資本経済資本社会関係資本3つ分類した彼の言う社会関係資本とは人脈である。彼は社会的地位再生産議論において、これらの資本多く持つ人ほど、進学就職において有利であり高社会的地位につくことができるとした。その後アメリカ合衆国の社会学者ジェームズ・コールマンGlenn Louryの1977年の定義を用い1988年1990年文献でこの概念発展させ有名にした。コールマンの言うソーシャル・キャピタルとは、ヒューマン・キャピタル人的資本)と対応する概念である。コールマンによればヒューマン・キャピタル個人が持つものだが、ソーシャル・キャピタルは、人と人との間に存在する具体的な内容としては、信頼つきあいなど人間関係中間集団個人社会の間にある、地域コミュニティー組織ボランティア組織など)の3つを含むものである。この定義は多義的にすぎるとの批判もあるのだが、アメリカ社会学において広く受け入れられ近年、非常に有名な概念となった。この背景には、米国における地域コミュニティ衰退や、過度な個人主義への反省が、米国内においても存在するという事情があると言ってよい。 コールマンアンソニー・ギデンズは、これを重要な社会概念として彼らの議論中に取り入れた。さらに1993年アメリカ合衆国の政治学者ロバート・パットナムが『Making Democracy Work』(邦訳哲学する民主主義』)の中で、イタリア北部と南部で、州政府の統治効果格差があるのは、ソーシャル・キャピタル蓄積違いよるものだと指摘した。これがきっかけとなり、同書での「ソーシャル・キャピタルとは、人々協調行動活発にすることによって、社会効率性高めることのできる、「信頼」「規範」「ネットワーク」といった社会的仕組み特徴」であるとする定義が広く理解される至ったパットナムによれば北部の方が効率的な統治制度をもつのは、中世から続く市民社会伝統があるからだとし、平的で自発的な市民同士活動自発的な団体存在民主主義にとって重要であることを提起した米国の地域社会推移描き出したパットナム著書Bowling alone』(邦訳孤独なボウリング』)も米国ベストセラーとなったソーシャル・キャピタル概念端的にいえば、「社会問題に関わっていく自発的団体多様さ」「社会全体人間関係豊かさ」を意味するといえる。あるいは地域力社会結束力と言ってもよい。多く友人付き合うか、地域スポーツクラブのような組織属しているか、公の問題討議できる団体入っているか、近所の人と雑談するかなど「顔の見え付き合い」すべてを指すといって過言ではない。今日、このソーシャル・キャピタル概念は、国際機関欧米各国はじめ日本などにおいても広く注目され様々な概念規定研究試みられている。たとえば、OECDはこの概念を、「グループ内部またはグループ間での協力容易にする共通の規範価値観理解伴ったネットワーク」と定義している。また、市民同士コミュニケーション密度や、市民行政パートナーシップが活発であるほど、豊かな社会形成されるという考え方立ったソフトな概念であるとしている。これは国際的に広く理解されている。 パットナムによると、ソーシャル・キャピタルが豊かであることの意義とは、市民地域全体つながり重要性示している。彼は社会資本測る指標として、地域組織や団体での活動頻度投票率ボランティア活動友人知人とのつながり社会への信頼度をあげている。ソーシャルキャピタル豊かな地域は、政治的コミットメント拡大子供教育成果の向上や、近隣治安の向上、地域経済の発展地域住民健康状態の向上など、経済面社会面において好ましい効果もたらしていると指摘している。この概念は、日本国内でも、政府や、地方分権社会形成推進している多く都道府県市町村において、市民自発的行政参加市民団体行政による協働のまちづくり推進するための原動力となる地域力の、基礎をなす概念として注目されている。また阪神淡路大震災以降その復興過程ソーシャル・キャピタル重要性指摘され山内直人阪大)の研究復興速度充実度などで効率良いことが実証された。また、洞爺湖温泉での有珠山噴火災害住民グループが、岡田弘北大)など学識経験者顧問とした有珠山噴火再生住民の会を結成しワークショップなどを効率的に進め観光資源創出などの計画立案し北海道協力のもといち早く再生果たした観光領域におけるソーシャル・キャピタル事例として挙げられよう。 わが国において、ソーシャル・キャピタルの定義化試みたものとしては、稲葉陽二の「心の外部性を伴った社会における信頼規範ネットワーク」や、福祉領域視野入れた山村靖彦の「人々コミュニティ内在している信頼や絆、コミュニケーションなどを高め資源であり、それが機能することにより地域福祉の向上に寄与するもの」などがある。 ソーシャル・キャピタルに関する日本主な研究者として、鹿毛利枝子東京大学)、山内直人大阪大学)、稲葉陽二日本大学)、近藤克則日本福祉大学)、宮川公男(元一橋大学)、大守隆内閣府政策参与)、金光淳(京都産業大学)、坂本治也(関西大学)、西出優子東北大学)、柗永佳甫(大阪商業大学)、宮田加久子明治学院大学)、山村靖彦(久留米大学)、上野眞也(熊本大学)が挙げられる

※この「概念とその発展」の解説は、「ソーシャル・キャピタル」の解説の一部です。
「概念とその発展」を含む「ソーシャル・キャピタル」の記事については、「ソーシャル・キャピタル」の概要を参照ください。

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