自律神経反射
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/22 00:54 UTC 版)
反射とは、ある刺激に対してステレオタイプに生じる応答のことである。反射は刺激を受容する受容器、受容器の興奮を伝える求心性神経、情報を統合する、中枢神経(反射中枢)、中枢で統合された結果、発せられたシグナルを末梢器官に伝える遠心性神経、そして応答する効果器という以上から構成されている。数多く生体に存在する反射において、自律神経系が関与しているものもあり、(1)内臓-内臓反射、(2)体性-内臓反射、(3)内臓-体性反射がそれである。これらが、広義の自律神経反射であるが、ふつう、自律神経反射と言った場合、(1)と(2)を指す。自律神経系が関与する反射は数多く存在するため、ここでそのすべてを列挙することはかなわないため、以下に反射のグループとそれに属する反射機構の代表的なものについてのみ記載する。 内臓-内臓反射 とは求心路と遠心路がともに自律神経線維によって構成される反射機構であり、多くの内臓機能はこの機序によって自律的に行われている。この反射の代表例は動脈圧受容器反射である。頚部の動脈系には圧受容器と呼ばれる圧センサーが存在する。この圧受容器は常に動脈圧をモニターし、この情報は求心性自律神経を介して中枢神経に伝えられる。中枢神経はこの情報を基にして、交感神経及び迷走神経のフローを変化させることによって、血圧調節している。圧受容器反射は最も基本的かつ重要な反射性の循環調節機序であり、内臓-内臓反射の一例でもある。 体性-内臓反射 とは求心路が体性感覚神経、遠心路が自律神経系からそれぞれ構成される反射機構である。この反射の例としては、体性-交感神経反射が古くから知られている。これは、皮膚に侵害性刺激(いわゆる痛み刺激)を加えると交感神経系の機能が亢進し、心拍数の増大、血圧の増加等が生じる反射である。他にも、温熱刺激を皮膚に加えると発汗が生じるが、これは温度刺激が体性感覚神経を介して、汗腺支配の交感神経を興奮させた結果生じるもので、体性-内臓反射と言えるだろう。また、古くから、鍼療法、物理療法として、体表へ種々の刺激(機械的刺激、温度刺激、化学的刺激、香りなど)を加えて身体機能を改善、維持する医療が存在するが、これらの療法の生理学的機序の一部はこの体性-自律神経反射で説明できる可能性がある。これまでに、鍼刺激が中枢神経系において内因性モルヒネであるエンドルフィン、ダイノルフィン等を増やすこと、種々の感覚刺激が自律神経系を介して、末梢器官(消化管機能、泌尿器、循環器、内分泌器官)に作用することが基礎医学及び臨床医学において研究されている。 内臓-体性反射 とは、求心路が求心性自律神経、遠心路が体性運動神経からなる反射機構である。この群に属するものでは筋性防御が有名である。これは、腹腔臓器、腹膜の障害(炎症、機械的な変化)が求心路を介して腹筋群を収縮させるという現象である。臨床的に多くの消化器疾患で認められ、特に虫垂炎の理学的所見として有名である。筋性防御は上記のような生理学的な反射弓に基づく現象である。
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