重粒子線
炭素イオンなどの粒子を加速させ、放射線として発射する方式。がん治療の方式である放射線治療の手法として利用されている。
一般的に、電子よりも重い粒子が重粒子と呼ばれる。放射線治療では炭素イオンが利用される場合が多い。
従来の放射線治療において使用されてきたX線や電子線などに比べて粒子が大きく、任意の地点にめがけて放出することが容易であるという特徴を持つ。このため、患部を狙い撃ちして治療にあたることが可能である。これによって正常な細胞への影響が減り、副作用の危険性が比較的緩和されるという。
重粒子線は大規模な装置(加速器)を必要とする。国内の代表的な設備としては、独立行政法人放射線医学総合研究所が所有する「HIMAC」などがある。
関連サイト:
重粒子線治療について知りたい方へ - 放射線医学総合研究所
重イオン
重イオン(じゅうイオン)とは、相対的に重い原子のイオンのことを指す。大体炭素以上の重たい原子のイオンのことを指すが、リチウム以上の物をさすこともある。加速器の分野で使われる用語で、重イオン加速器で加速してビームとし重粒子線として扱う。
応用分野としては、炭素イオン線などを患部に照射する重粒子線がん治療や、重粒子線を標的に照射して得られた不安定核を二次ビームとしてあつかうRIビーム等がある。
炭素イオン線
重粒子線の一種である炭素イオン線(たんそイオンせん、英語:carbon ion beam[1])は、炭素原子を加速器で高速に加速したものである。
放射線医学総合研究所と兵庫県立粒子線医療センターは炭素イオン線と陽子線を用いてがん治療をしている。放射線医学総合研究所の重粒子線医科学センター病院ではHIMACを使っている[2]。
炭素イオン線はDNAに致命的な損傷を与え細胞分裂を抑えるため、がん治療に用いられている。エックス線を当ててもDNAの障害が一部回復してしまうのに対し、炭素イオン線はDNAに致命的なダメージを与えるため回復しにくい。
また、細胞が増えるとき、DNA合成期になると、エックス線が効きにくいのに対し、炭素イオン線は効果が高い。
さらに、ブドウ糖を多く摂取し酸素不足になったがん細胞にはエックス線やガンマ線が効きにくいのに対して、炭素イオン線は直接作用が大きいため、二倍の効果を発揮できる。そして、正常組織に対する影響が少ないというのも特徴である。
しかし、すべてのがんがとりつくせるわけではない。また、高額な治療費がかかると言われている。
脚注
- ^ 群馬大学重粒子線医学研究センター. “用語集”. 群馬大学. 2010年6月21日閲覧。
- ^ “重粒子(炭素イオン)線治療の対象部位とその適応について”. 放射線医学総合研究所. 2010年6月21日閲覧。
関連項目
参考文献
- 東嶋 和子著 『放射線利用の基礎知識』 ブルーバックス 平成18年12月20日第1版第1刷発行
外部リンク
重粒子線
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/03/11 06:27 UTC 版)
「重粒子線がん治療」も参照 重粒子は素粒子物理学ではバリオンを指すが、量子ビームとしてはイオンビームのうち医療に用いられるものを指すことが多い。重粒子線治療に用いられる重粒子ビームは主に炭素イオンを加速器を使って光速の70%程度に加速したものである。陽子線と同様に体内深部の腫瘍をターゲットとした治療に優れる。重粒子線治療施設はHIMACを初め現在国内に6か所ある。
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