ウルドゥー文字 ウルドゥー文字の概要

ウルドゥー文字

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/05/24 01:45 UTC 版)

ウルドゥー文字
UAEにある3言語の標識、下がウルドゥー文字。上のアラビア文字と字体が異なるのがわかる
類型: アブジャド
言語: ウルドゥー語
時期: 11世紀頃-現在
親の文字体系:
Unicode範囲: U+0600 to U+06FF
U+0750 to U+077F
U+FB50 to U+FDFF
U+FE70 to U+FEFF
注意: このページはUnicodeで書かれた国際音声記号 (IPA) を含む場合があります。
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青銅器時代中期 前19–15世紀

メロエ 前3世紀
カナダ先住民 1840年
注音 1913年

概要

南アジアは、10世紀末のガズナ朝による侵攻に始まり、デリー・スルタン朝時代にイスラーム勢力の配下に置かれた。とくに、ムガル帝国では大々的にペルシア語文化が持ち込まれた。1648年にムガル帝国の首都はデリーに移り、デリー方言を基本にして、ペルシア語の影響下にウルドゥー語が成立した。このため、ウルドゥー文字もペルシア文字を元にしているが、ウルドゥー語の音韻体系に合わせ、いくつか字母・記号が追加されている。

また、基本書体も、ペルシアで発展したナスタアリーク体である。現在のペルシア語はナスフ体で印刷されることも多いが、ウルドゥー語ではいまでもナスタアリーク体を主に使用する。

字母

以下に、38字母とその名称を記す[1]。文字名称の baṛī は「大きい」、chōṭī は「小さい」という意味。33番目と38番目の文字は、それぞれ語末でのみ32番目・37番目の文字と区別される。

番号 独立形 文字名 末字形 中字形 頭字形
1 ا (母音) alif ـا
2 ب b ـب ـبـ بـ
3 پ p ـپ ـپـ پـ
4 ت t ـت ـتـ تـ
5 ٹ ʈ ṭē ـٹ ـٹـ ٹـ
6 ث s ـث ـثـ ثـ
7 ج jīm ـج ـجـ جـ
8 چ ـچ ـچـ چـ
9 ح h baṛī hē ـح ـحـ حـ
10 خ x ـخ ـخـ خـ
11 د d dāl ـد
12 ڈ ɖ ḍāl ـڈ
13 ذ z zāl ـذ
14 ر r ـر
15 ڑ ɽ ṛē ـڑ
16 ز z ـز
17 ژ ʒ žē ـژ
18 س s sīn ـس ـسـ سـ
19 ش ʃ šīn ـش ـشـ شـ
20 ص s svād ـص ـصـ صـ
21 ض z zvād ـض ـضـ ضـ
22 ط t tōē ـط ـطـ طـ
23 ظ z zōē ـظ ـظـ ظـ
24 ع ʔ ain ـع ـعـ عـ
25 غ ɣ γain ـغ ـغـ غـ
26 ف f ـف ـفـ فـ
27 ق q qāf ـق ـقـ قـ
28 ک k kāf ـک ـکـ کـ
29 گ ɡ gāf ـگ ـگـ گـ
30 ل l lām ـل ـلـ لـ
31 م m mīm ـم ـمـ مـ
32 ن n nūn ـن ـنـ نـ
33 ں (鼻母音化) nūn-e-γunna ـں
34 و v, oː, ɔː vāō ـو
35 ہ h chōṭī hē ـہ ـہـ ہـ
36 ھ 帯気音 dō cašmī hē ـھ ـھـ ھـ
37 ی j, iː chōṭī yē ـی ـیـ یـ
38 ے eː, ɛː baṛī yē ـے

ペルシア文字との違い

そり舌音を表すために、以下の3文字が追加されている。

文字 ٹ ڈ ڑ
音価 ʈ ɖ ɽ

35番目の ہ (chōṭī hē) は、字形が(とくに頭字形で)ペルシア文字のもの(ه)と異なっている。

36番目の ھ (dō cašmī hēdō cašmī は「めがね」を意味する) は、子音字と組み合わせて帯気音をあらわすために使用する。単独の字形はペルシア文字の ه の頭字形に似ており、繋げて書いた際も頭字形と中字形は同じ形だが、尾字形は ه の場合と違って中字形と同じ形になる。

文字 کھ گھ چھ جھ ٹھ ڈھ ڑھ تھ دھ پھ بھ مھ نھ رھ لھ يھ
音価 tʃʰ dʒʰ ʈʰ dʒʰ ɽʰ t̪ʰ d̪ʰ

33番目の ں (nūn-e-γunna, 点のない ن)は、鼻母音を表すためにあるが、語末以外では通常の ن を使用する。

38番目の ے (baṛī yē) は、語末の母音 eː, ɛː を表すが、語末以外では通常の ی を使用する。

現代ペルシア語では غق が同音になっているが、ウルドゥー語では両者を区別する。ただし実際には ق は k (閉鎖音の前では x, ɣ)に合流していることが多い[2]


  1. ^ Schmidt (2007) p.344 による
  2. ^ a b Schmidt (2007) p.310
  3. ^ 町田 (1999) pp.67-68
  4. ^ 町田 (1999) p.14(), p.23(鼻音), p.42()
  5. ^ Schmidt (2007) p.343


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