シシャモ 利用

シシャモ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/12 01:00 UTC 版)

利用

漁獲高の減少のため、キュウリウオや輸入品のカラフトシシャモ(カペリン)が「シシャモ」として食卓に上ることも多い。安価に販売されることから、今日では単に「シシャモ」と言う場合カラフトシシャモを指すことが一般的であり、寿司ネタなどに使われるシシャモ子もそちらの魚卵を使う。同じキュウリウオ科に属しているが、シシャモはシシャモ属、カラフトシシャモはカラフトシシャモ属である。干物に加工された状態でもの面積および配列、吻長、胸鰭長、尾柄高、主鰓蓋骨の形状で本種とカラフトシシャモを識別することが可能である[14]

身の味自体は雄の方が風味が良い。また雄雌共に大きい(太い)ほど味がよいともいわれるが、その反面、大きくなるほども大きく硬い物(現在では骨が硬いほどの大きい物は稀)になるため食べにくいとも言う。一夜干しのほか、糠漬け、干しシシャモ、珍味漬物、フライ、天ぷら等にもされ、10-11月の漁期には地元で刺身や寿司ネタ(身の大きい雄を使用)ともなるが、漁獲量が少ないこともあり高価である。

アイヌ民族による伝承

シシャモに関するアイヌ民族の伝説は複数の種類がある。

  • カムイが食べ物に困っていた人間達に食糧を与えようとして、楊の葉を川(鵡川)に流したところシシャモになった。シシャモはススハム「スス=楊」、「ハム=葉」が語源である[15][16]。楊の葉を川に流した神は、雷神の妹の祈りを受けたフクロウの女神であるなど、類似の伝説もある。
  • 神の木である楊の葉が水に落ちて朽ちるのを哀れんだ神が魚に変えたという伝説[17]
  • 飢えに苦しんでいたアイヌの娘が病気の父のために川岸で神に祈りをささげたところ、楊の葉が川に次々と落ちて泳ぎ回りそれがシシャモになったという伝説[18][5]。娘ではなく息子とされる場合もある。
  • シュシュランペツの川のほとりで踊る男女の淫乱の神が楊の葉を川に流すという伝説[19]。アイヌ言語学者の知里真志保は「巫・神・川」を意味するトゥスランペツ(tusúrampet)がシュシュランペツ(susúrampet)に訛り、susúram が susu-ham(楊・葉)となって柳葉伝説が生まれたと推測する[19]。なお「シシャモ」が日本人を意味することについては偶然の一致とみなしている。

シシャモカムイノミ

アイヌの口碑伝説と記録の一つにあるシシャモ豊漁祈願の儀式。現在も北海道むかわ町で行われている。

神様に人間の言葉を届けてくれる火の女神、アペフチがいる炉を囲み、大地の神、水の神、山の神などへ、恵みへの感謝と豊漁への祈願を行う。なお、この儀式を行っている鵡川アイヌ文化伝承保存会は、平成6年に国の重要無形民俗文化財保護団体に指定されている。


  1. ^ 河川と海を行き来する魚類 (PDF) 高知大学
  2. ^ a b c d 伊藤小四郎, 「柳葉魚 (シシヤモ) の生殖巣並に孕卵数について」『魚類学雑誌』 7巻 2-4号 1958-1959年 p.57-60, 日本魚類学会, doi:10.11369/jji1950.7.57,
  3. ^ 疋田豊治,「本邦産 Argentinidae の一新種に就いて」『動物学雑誌』 25巻 p.127-129, 1913年, NAID 10016972874
  4. ^ a b シシャモ大辞典 釧路市漁業協同組合
  5. ^ a b フリーランス雑学ライダーズ編『あて字のおもしろ雑学』 p.54 1988年 永岡書店
  6. ^ 新居久也、村上一夫、米田隆夫、上田宏、「シシャモ Spirinchus lanceolatus の遡上河川における産卵場所と物理環境条件の関係」『日本水産学会誌』 72巻 3号 2006年 p.390-400, 日本水産学会, doi:10.2331/suisan.72.390
  7. ^ 新居久也, 上田宏, 「シシャモの産卵行動および産着卵の生残に及ぼす河川流速の影響」『水産増殖』 54巻 4号 2006年 p.437-447, 日本水産増殖学会, doi:10.11233/aquaculturesci1953.54.437
  8. ^ a b 新 ししゃも豆知識 十勝総合振興局産業振興部水産課
  9. ^ 水産統計 水産林務部総務課
  10. ^ 鵡川ししゃもの旬と漁 鵡川漁業協同組合
  11. ^ 釧路の漁業1 釧路総合振興局産業振興部水産課
  12. ^ 北海道シシャモ漁、今年も記録的不漁”. 日刊水産経済新聞 (2021年11月19日). 2022年11月9日閲覧。
  13. ^ 北海道むかわ町の特産シシャモ漁獲量、過去最低の64.6キロ…5年前は70トン超”. 読売新聞 (2022年11月8日). 2022年11月9日閲覧。
  14. ^ 小西雅樹, 武内啓明, 久保喜計, 細谷和海, 「干物のカラフトシシャモとシシャモの簡易識別法」『日本水産学会誌』 2011年 77巻 1号 p.84-88, 日本水産学会, doi:10.2331/suisan.77.84
  15. ^ アイヌ伝説 神からの贈りもの【ししゃも】”. APNA食品図鑑. 2013年9月21日閲覧。
  16. ^ 鵡川ししゃも「楊の葉に命を与えたのは神様」”. 北海道むかわ町. 2016年2月9日閲覧。
  17. ^ 第五章 シシャモとカラフトシシャモ”. 『ししゃも大辞典』. 釧路市漁業共同組合. 2013年9月21日閲覧。
  18. ^ 日本おさかな雑学研究会 『頭がよくなる おさかな雑学大事典』 p.70-71 幻冬舎文庫 2002年
  19. ^ a b 知里真志保編訳. “図書カード:えぞおばけ列伝”. 青空文庫. 2015年9月22日閲覧。
  20. ^ 北海道レッドリスト (魚類)(別紙5) (PDF) 北海道
    北海道レッドリスト (2001年)について 平成13年5月10日 北海道環境生活部
  21. ^ 武田典子, 楠田聡, 寺西哲夫 ほか、「シシャモ(Spirinchus lanceolatus)粘着性除去卵に付着した鉄の濃度と孵化への影響」『北海道立水産孵化場研究報告』 56号 2002年 p.107-113, 北海道立水産孵化場, ISSN 02866536
  22. ^ ししゃもの資源回復目指し むかわ町に新たなふ化場完成”. NHK (2022年11月7日). 2022年11月9日閲覧。


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