量
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/21 13:42 UTC 版)
各領域とさまざまな量
量は以下に示すように、領域ごとに、様々の観点から分類することができる。
物理量
JIS-Z8103における物理量の定義は「物理学における一定の理論体系の下で次元が確定し、定められた単位の倍数として表すことができる量」である[3]。[注 5]
また『丸善-単位の辞典』での定義・説明では、物理量とは「物理現象や物質の、一つの測定できる属性」である[5]。[注 6]
また[誰?][いつ?]「物理量とは物理的実体について客観的に測定可能であり測定器等による測定方法が定められた量である[要出典]」ともされる。物理量を表す単位を物理単位という。
この定義では測定器等としてどのような範囲のものを想定するかによる任意性がある。「だが、極めて狭義に解釈すれば、国際単位系における7種の基本量(長さ、質量、時間、電流、熱力学的温度、物質量、光度)およびそれから誘導される量のみ、例えば、速度、加速度、濃度、比重、密度、 圧力、エントロピー、 エンタルピー、体積、モル濃度、 電力、 照度、 ラド、 ベクレル、 シーベルト、レイノルズ数などを指すと言える[要出典]。」 広義に解釈すれば例えば、分子数、微粒子数、細胞数、生物個体数、恒星数、他様々な物体の個数も測定方法が確かな物理量である。また個数の測定にもパーティクルカウンターやセルソーター等の測定器を使うことも多い。また、固体の硬度、引火点、ガラス転移点など正確な値を定義しにくい量でも広義には物理量と見なすことができる。
ただし「物理量」という言葉は自然科学分野の文書中でさえ特に明確な定義なしで使われることが多く、それが指す範囲には曖昧さがあり、著者と文脈により異なることがある。つまり、ある特定の量が物理量であるか否かという判断が著者と文脈により異なったり判断できなかったりする。
物理学(や化学)で用いられる量の大きさを表すためには、2つの因子が必要である[9]。ひとつは、問題としている量と同じ種類の「標準量」、つまり「単位」である[9]。もうひとつは、この「単位」との大きさの比を表す数値である[9]。
ある物理量というのは、それとは相違した2種以上の物理量との関係式によって定義される[9]。したがって、適切な「基本量」をいくつか選ぶということをすると、他の様々な物理量は 基本量の組み合わせで定まることになる[9]。このような方法で、基本量の組み合わせによって導かれる量を「誘導量」という[9]。「基本量」としては、通常は、「長さ」「質量」「時間」を選択している[9]。ただし物理学で、熱の問題を扱う場合は、これら3つに加え「温度」を加えている[9]。
物理学では、1つの数値だけで表わされる量だけでなく、複数の数値の組(セット)で表わされる物理量も扱う[9]。ただ一つの数で表される量を「スカラー量」と呼び、複数の数の組で表される量を「ベクトル[要曖昧さ回避]量」と呼ぶ[9]。「ベクトル量」としては、例えば力や速度などがある。これらは空間内のベクトルに対応している(「3次元空間ではベクトルはx軸、y軸、z軸、それぞれの3つ数値を持つ」と考え、その結果、3つの数字の組わせとなる)。
また物理学では、テンソルに対応するテンソル量(例. 固体の応力など)、複素数に対応する複素数量(例.量子力学での波動関数[疑問点 ])もある。
古典物理学では「測定可能な物理量は、理想的な実験を行えば(任意の精度で)決定され、その結果は数値または数値の組で表現される」と 考える[9] (考えた)。だが量子力学では、不確定性原理を認め、「ある物理量とそれに共役な物理量とを同時に正確に測定することはできない」とし、物理量を状態ベクトルに作用する演算子(行列)で表現する[9]。
Quantity in numerator (分数の)分子の量 | ||||||||||||
Amount of substance 物質量* Symbol 記号: SI単位: |
Volume 体積* Symbol 記号: SI単位: |
Mass 質量* Symbol 記号: SI単位: | ||||||||||
Quantity in denominator 分母の量 |
Amount of substance 物質量* Symbol 記号: SI単位: |
amount-of-substance fraction 物質量分率* SI単位: |
molar volume モル体積* SI単位: |
molar mass モル質量* SI単位: | ||||||||
Volume 体積 Symbol 記号: SI単位: |
amount-of-substance concentration 物質量濃度* SI単位: |
volume fraction 体積分率* SI単位: |
mass density 質量密度* SI単位: | |||||||||
Mass 質量 Symbol 記号: SI単位: |
molality 質量モル濃度* SI単位: |
specific volume 比体積* SI単位: |
mass fraction 質量分率* SI単位: |
* 日本語訳は「IUPAC 物理化学で用いられる量・単位・記号] 第3版 日本化学会監修 産業技術総合研究所計量標準総合センター訳[11] から採用した。
工業量
工業量(英: industrial quantity、engineering quantity)はJIS規格で定義されている量の分類であり、工業分野で使われる多くの量が含まれる。工業量を計ることを「工業計測」と呼び、物理量を計ることを「物理測定」と呼んでそれらを区別することも多い。JIS-Z8103の定義では「複数の物理的性質に関係する量で、測定方法によって定義される工業的に有用な量」であり硬さや表面粗さが含まれる[3]。例えばロックウェル硬度の測定では、プローブである圧子の形状(長さおよび角度の次元の複数の量)、加える力(質量×長さ/時間の二乗)などを規定し試料の変形量(「長さ」次元の複数の量)を測定する。つまり複数の物理量を測定した上で計算されるのが硬さという工業量なのである。
なお工業量の中には以下の項目に挙げる心理物理量に属するものもある。
感覚量
感覚量、あるいは心理量とは人間が主観的に感じる感覚の強さである。これは個人差があり、同一人でも環境や体調による差がある。
物理量としての刺激の強さを感覚量の強さで評価した心理物理量(英: psychophysical quantity)と呼ばれる量を「特定の条件の下で、感覚と1対1に対応して心理的に意味があり、かつ、物理的に定義・測定できる量」として定義している[3][注 7]。心理物理量には次の例がある。
皮膚による感覚である痛覚と温感も量的判断の下せる心理量と言えるが、これらに対応する心理物理量として定まった定義のものはまだない。皮膚感覚の触覚は量的に表現されることは希であり、感覚ではあっても感覚量とは言えないであろう。
感性工学
感性量は感覚量よりもさらに内面的に人の心が評価するような量のことである。しかし感性量と感覚量の境界は必ずしも明確ではない。心理量という言葉は感覚量のみならず感性量をも含んで使われることも多い。感覚量は人が感覚器官で感じたままの量であり、生理的には感覚神経の発火信号の量に相関すると考えられるが、感性量はさらに内面的にもしくは総合的に評価される量と言える。
様々な物理化学的刺激の強さとそれに対して生じる感性の相関を測定評価する試みは盛んに行われており、その結果を製品の質の向上や人間生活の向上に役立てようとする試みは感性工学と呼ばれている。日本では1998年(平成10年)10月に日本感性工学会が発足して研究が続けられている(外部リンク参照)。
感性量には例えば次のようなものが挙げられる。「食感」「風合い(ふうあい)」。また「手触り」「不快指数」「快適さ」「爽快感」[要出典] 等々。
医学・生理学、医療
たとえば、「毒性」「半数致死量」「発癌性」「皮膚刺激性」「線量」などがある。
物理化学的刺激に対して生物は様々な生理的反応を示し、その反応の量は与えられた刺激の量に相関する。この反応の量は感覚量と性質が近く、通常は物理量とは呼ばない。ただし人間以外の生物では生理的反応量も物理化学的測定手段でしか測定することはできず、心理物理量に対応するような量として表現するしか方法がない[要出典]。
社会科学
経済学では、生産量(英: production)や様々な通貨単位により計られる通貨量、金額、価格、所得、金利、国民総生産などが扱われている[注 8]。
政治学において、国家運営の指針に何を据えるかについては様々なものがありうる。 20世紀には、先進諸国を中心に経済的な発展が国家運営の指針において大きな位置を占めており、国民総生産が目安とされてきた。しかし、国民の幸福は経済活動だけでは量れないということが次第に理解されるようになってきた。ブータンでは国民総幸福量が重視されている。これが世界的に注目されるようになり、日本でも国会などの政治の場で、この国民総幸福量がテーマとして扱われるようになった。
試験
- ^ この「質」は、あえて言えば「品質」の「質」である。
- ^ [誰?]「性質というものも、複数の「量」を組み合わせて総合的に判断したものと見ることもできる。[要出典]」
- ^ 領域ごと、学問分野ごとに、扱うのは離散量が多いか、連続量が多いか、異なっている。
- ^ なお、量同士の演算においては、これら助数詞も離散量の単位と見なして式の変形などにおいて単位と同様に扱うことが可能である。
- ^ [誰?]「"一定の体系の下で"とは実際上は国際単位系の下でということであり[要出典]、"次元が確定し"とは基本量およびその組立量である[要出典]と解釈できる。これは複数の物理的条件により変動するため測定条件を約束事として定義する工業量との区別を意識した定義であろう。[要出典]」 また"定められ単位の倍数として表すことができる"ということは比例尺度または間隔尺度だと言うことであり、例えば順序尺度でしかないモース硬度はJIS-Z8103の定義では物理量とは言えない。
- ^ 「この物理量の定義は、心理量と比較すれば、測定者によらない物理現象や物質固有の属性であるという点に特徴を見た定義だと言える。[要出典]」心理量は「心理的要素によって評価される量」とされ、測定対象の物理現象や物質が同じでも測定者が異なれば異なりうる量である。
- ^ [誰?]「感覚量は、感覚を生ずる物理化学的刺激の強さとほぼ相関している[要出典] [要検証 ]」と考えている。
- ^ [いつ?] [誰?]「物理的実体はなく、物理量ではないと言える。[要出典]」と言った人がいる? 「ただし「コインの数」「紙幣の枚数」などは物理量であるとも言える。」とも。
- ^ [誰?]は「人為的に定められた量で物理的実体はなく、物理量ではないと言える。[要出典]」とコメントした。
- ^ a b 広辞苑第六版「りょう【量】」
- ^ a b c d e f g h i j JIS Z8000-1 量及び単位-第1部:一般
- ^ a b c d JIS Z8103 計測用語
- ^ 計量学-早わかり 第3版 6.用語集、p.70、Quantity(measurable) の説明、訳編者は産総研 計量標準総合センターと製品評価技術基盤機構 認定センター、2008年7月、ISBN 978-87-988154-5-7(オリジナル版)
- ^ a b 二村隆夫『丸善 単位の辞典』丸善、2002年3月
- ^ Stevens, S. S. (1946). “On the Theory of Scales of Measurement”. Science 103 (2684): 677–680. Bibcode: 1946Sci...103..677S. doi:10.1126/science.103.2684.677. PMID 17750512 .
- ^ 新計量法とSI化の進め方-重力単位系から国際単位系(SI)へ- pp.8-11、通商産業省 SI単位等普及推進委員会、1999年3月発行
- ^ 長倉三郎、他(編)『岩波理化学辞典-第5版』岩波書店、1998年2月
- ^ a b c d e f g h i j k l ブリタニカ百科事典
- ^ NIST Guide to the SI 8 いくつかの量とその単位についての注
- ^ 「IUPAC 物理化学で用いられる量・単位・記号 第3版 日本化学会監修 産業技術総合研究所計量標準総合センター訳
- ^ a b c 遠山啓(Toyama, Hiraku)『遠山啓著作集数学教育論シリーズ(6)量とはなにか』太郎次郎社、1981年7月,p16,69
- ^ a b 銀林浩『量の世界-構造主義的分析-』むぎ書房、1986年
- ^ 星田直彦『単位171の新知識』講談社ブルーバックス、2005年 ISBN 4-06-257484-5
- ^ 久保和良『量の理論とアナロジー』コロナ社、2021年、42-43頁。ISBN 9784339033830。
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