量 量の概要

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/21 13:42 UTC 版)

概説

「量」の概念は様々に定義されている。

  • 広辞苑では、測定の対象となる、ものの大・小や多・小[1]、としている。
  • [誰?]大きさを持ち、計測したり大小を比較したりできるもののこと[要出典]」としている。
  • 日本産業規格(JIS) Z8000規格群では、量(: quantity)とは「数と計量参照(: reference)との組合せとして表すことができる大きさ(: magunitude)をもつ、現象、物体又は物質の性質」であると定義されている[2]
    • JIS Z8103では、「現象、物体又は物質の持つ属性で、定性的に区別でき、かつ、定量的に決定できるもの」であると定義されている[3]
  • 計量標準総合センター 国際計量室が訳出した用語集では、「測定可能な量 Quantity(measurable) 」とは「現象、物体または物質の属性であり、その属性は大きさを持ち、その大きさを数値および計量参照(reference)として表せるもの」としている[4]

「量より質」の表現のように、「量」(: quantity、クオンティティ)の対比的概念としては「」(: quality、クオリティ)が挙げられる[1][注 1]。また「定量的(研究) / 定性的(研究)」という対比もある[注 2]

ほとんどの文書では特に断らない限りは量は実数値(自然数値のみのときも含む)を取るスカラー量である。本項目の以下の記載でも単に量と言えばスカラー量とする。

量と数

(測定できる量は)(すう)と単位(または単位に準ずるもの)のの形式で表せる。

対応する数の種類で量が分類されることもある。個数や貨幣のように分割できない最小量が存在する量は、「離散量」または「分離量」と呼ばれる。整数に対応している。一方、最小量(最小単位)がない量は「連続量」と呼ばれ、これは実数に対応する[注 3]。離散量と連続量はそれぞれ、デジタル量およびアナログ量とも呼ばれる。 離散量と似た言葉で可算量という言葉も使われる。ただし、数学における可算集合とは自然数と1対1に対応する集合のことであり、有理数は可算集合である。有理数は稠密集合なので、有理数で表した量が離散量とは言えない。有理数のみに対応する量の例はほとんどないが、多くの場合に量の値は有限桁数の小数、すなわち有理数の一部で表されている。しかしこれは通常は、実数値である真の値の近似値と見なされる。

単位(または単位に準ずるもの)によりその量の具体的種類の範囲が示される。また、物品、人員、服、紙、本などの可算量を数える助数詞の「個(こ)」「人(にん)」「着(ちゃく)」「枚」「冊」などは単位ではなくて「単位に準ずるもの」と見なされる[5][注 4]

統計学と尺度

統計学ではデータを示す変数を、名義尺度順序尺度間隔尺度比率尺度(比例尺度)、の4つの尺度水準として分類している。この中で、名義尺度は定性的な値、そのほかの量は定量的な値に区分される。[6]

物象の状態の量

日本における計量についての基本を定めた計量法においては、量のうち具体的に「取引または証明、産業、学術、日常生活等の分野での計量で重要な機能を期待されている」事象等として89量を列挙し、これを「物象の状態の量」(quantity of the state of physical phenomena)と規定している。この89量のうちの重要な72量については、計量法が定める計量単位のみを取引又は証明に使用することを計量法は強制している。詳細は法定計量単位#物象の状態の量を参照。

これらの89量は以下であり、これらが実際に用いられる量の具体例である。

確立された計量単位の存在する72の物象の状態の量

典型72量」と呼ばれる。1)長さ、2)質量、3)時間、4)電流、5)温度、6)物質量、7)光度、8)角度、9)立体角、10)面積、11)体積、12)角速度、13)角加速度、14)速さ、15)加速度、16)周波数、17)回転速度、18)波数、19)密度、20)、21)力のモーメント、22)圧力、23)応力、24)粘度、25)動粘度、26)仕事、27)工率、28)質量流量、29)流量、30)熱量、31)熱伝導率、32)比熱容量、33)エントロピー、34)電気量、35)電界の強さ、36)電圧、37)起電力、38)静電容量、39)磁界の強さ、40)起磁力、41)磁束密度、42)磁束、43)インダクタンス、44)電気抵抗、45)電気のコンダクタンス、46)インピーダンス、47)電力、48)無効電力、49)皮相電力、50)電力量、51)無効電力量、52)皮相電力量、53)電磁波の減衰量、54)電磁波の電力密度、55)放射強度、56)光束、57)輝度、58)照度、59)音響パワー、60)音圧レベル、61)振動加速度レベル、62)濃度、63)中性子放出率、64)放射能、65)吸収線量、66)吸収線量率、67)カーマ、68)カーマ率、69)照射線量、70)照射線量率、71)線量当量、72)線量当量率72量である。 (注)各々の物象の状態の量の前に付した数字は、計量法第2条第1項第1号における列挙順の番号である[7]

確立された計量単位のない17の物象の状態の量

73)繊度、74)比重、75)引張強さ、76)圧縮強さ、77)硬さ、78)衝撃値、79)粒度、80)耐火度、81)力率、82)屈折度、83)湿度、84)粒子フルエンス、85)粒子フルエンス率、86)エネルギーフルエンス、87)エネルギーフルエンス率、88)放射能面密度、89)放射能濃度の17量である。 (注)各々の量の前に付した数字は、計量単位令第1条における列挙順序であり、典型72量からの通し番号である。


  1. ^ この「質」は、あえて言えば「品質」の「質」である。
  2. ^ [誰?]性質というものも、複数の「量」を組み合わせて総合的に判断したものと見ることもできる。[要出典]
  3. ^ 領域ごと、学問分野ごとに、扱うのは離散量が多いか、連続量が多いか、異なっている。
  4. ^ なお、量同士の演算においては、これら助数詞も離散量の単位と見なして式の変形などにおいて単位と同様に扱うことが可能である。
  5. ^ [誰?]"一定の体系の下で"とは実際上は国際単位系の下でということであり[要出典]"次元が確定し"とは基本量およびその組立量である[要出典]解釈できる。これは複数の物理的条件により変動するため測定条件を約束事として定義する工業量との区別を意識した定義であろう。[要出典]」 また"定められ単位の倍数として表すことができる"ということは比例尺度または間隔尺度だと言うことであり、例えば順序尺度でしかないモース硬度JIS-Z8103の定義では物理量とは言えない。
  6. ^ この物理量の定義は、心理量と比較すれば、測定者によらない物理現象や物質固有の属性であるという点に特徴を見た定義だと言える。[要出典]」心理量は「心理的要素によって評価される量」とされ、測定対象の物理現象や物質が同じでも測定者が異なれば異なりうる量である。
  7. ^ [誰?]感覚量は、感覚を生ずる物理化学的刺激の強さとほぼ相関している[要出典] [要検証]」と考えている。
  8. ^ [いつ?] [誰?]物理的実体はなく、物理量ではないと言える。[要出典]」と言った人がいる? 「ただし「コインの数」「紙幣の枚数」などは物理量であるとも言える。」とも。
  9. ^ [誰?]は「人為的に定められた量で物理的実体はなく、物理量ではないと言える。[要出典]」とコメントした。
  1. ^ a b 広辞苑第六版「りょう【量】」
  2. ^ a b c d e f g h i j JIS Z8000-1 量及び単位-第1部:一般
  3. ^ a b c d JIS Z8103 計測用語
  4. ^ 計量学-早わかり 第3版 6.用語集、p.70、Quantity(measurable) の説明、訳編者は産総研 計量標準総合センターと製品評価技術基盤機構 認定センター、2008年7月、ISBN 978-87-988154-5-7(オリジナル版)
  5. ^ a b 二村隆夫『丸善 単位の辞典』丸善、2002年3月
  6. ^ Stevens, S. S. (1946). “On the Theory of Scales of Measurement”. Science 103 (2684): 677–680. Bibcode1946Sci...103..677S. doi:10.1126/science.103.2684.677. PMID 17750512. http://www.sciencemag.org/cgi/rapidpdf/103/2684/677. 
  7. ^ 新計量法とSI化の進め方-重力単位系から国際単位系(SI)へ- pp.8-11、通商産業省 SI単位等普及推進委員会、1999年3月発行
  8. ^ 長倉三郎、他(編)『岩波理化学辞典-第5版』岩波書店、1998年2月
  9. ^ a b c d e f g h i j k l ブリタニカ百科事典
  10. ^ NIST Guide to the SI 8 いくつかの量とその単位についての注
  11. ^ 「IUPAC 物理化学で用いられる量・単位・記号 第3版 日本化学会監修 産業技術総合研究所計量標準総合センター訳
  12. ^ a b c 遠山啓(Toyama, Hiraku)『遠山啓著作集数学教育論シリーズ(6)量とはなにか』太郎次郎社、1981年7月,p16,69
  13. ^ a b 銀林浩『量の世界-構造主義的分析-』むぎ書房、1986年
  14. ^ 星田直彦『単位171の新知識』講談社ブルーバックス、2005年 ISBN 4-06-257484-5
  15. ^ 久保和良『量の理論とアナロジー』コロナ社、2021年、42-43頁。ISBN 9784339033830 





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