サウスダコタ級戦艦 (1920)
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サウスダコタ級戦艦 | |
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艦級概観 | |
艦種 | 戦艦 |
艦名 | 州名。一番艦はサウスダコタ州に因む。 |
前級 | コロラド級戦艦 |
次級 | ノースカロライナ級戦艦 |
性能諸元 | |
排水量 | 43,200 t |
全長 | 208 m (684 ft) |
全幅 | 32 m (105 ft) |
吃水 | 10.1 m (33 ft) |
機関 | 蒸気ターボ電気推進4軸、60,000馬力 |
最大速力 | 23 kt (43 km/h) |
航続距離 | |
乗員 | |
武装 | 50口径16インチ砲12門 53口径6インチ砲16門 50口径3インチ対空砲8門 21インチ魚雷発射管2基 |
装甲 | 水線345mm 甲板89-64mm 主砲塔前盾457mm 主砲塔天蓋127mm 司令塔406mm |
サウスダコタ級戦艦(サウスダコタきゅう せんかん、South Dakota class Battleship)は、アメリカ海軍が1916年に提出した海軍整備計画であるダニエルズ・プランにおいて建造が予定されていた戦艦である。16インチ砲12門(三連装砲塔4基)を搭載した超弩級戦艦であった[注釈 1]。 資料によってはインディアナ級戦艦と表記した事例もある[注釈 2]。時代的には、八八艦隊の加賀型戦艦に匹敵する性能であった[3]。
概要
[編集]戦艦10隻、巡洋戦艦6隻の整備を根幹としたアメリカ合衆国のダニエルズ・プランにおいて[4]、コロラド級戦艦(メリーランド級戦艦)4隻に続いて、超弩級戦艦6隻の建造が予定された[5]。本級は、当初艦形を大幅に拡大させた案も検討されたが、最終的にはパナマ運河を通航可能な範囲で兵装や機関をメリーランド級より強化させた案で決着した。大火力・重装甲の本級と、軽装甲・高速力のレキシントン級巡洋戦艦の組み合わせで運用する予定であった[6]。
前級のコロラド級はアメリカ海軍戦艦として初めて45口径16インチ砲を装備したものの、実際はテネシー級戦艦の準同型艦であった。船体の基本設計はネヴァダ級戦艦以降のいわゆる「標準型戦艦」の設計を踏襲していた。なによりも45口径16インチ砲は連装砲塔4基(8門)しか搭載しておらず、おおむね日本海軍の長門型戦艦に類似した艦級であった[2]。 これに対してサウスダコタ級は船体規模を拡大、主砲は新たに開発された50口径16インチ砲を3連装砲塔に収めて4基12門を備え、機関はコロラド級と同じくターボ電気推進であるが、出力は約2倍となり最高速力を23ノットに引き上げた[2]。 兵装や機関の増強に伴い舷側装甲はコロラド級より若干削減したが16インチ砲に対しての防御力は維持されており[7]、完成していればアメリカ海軍史上最大最強かつ最速の戦艦となるはずであった。
なお日本海軍では加賀型戦艦以降の戦艦・巡洋戦艦を検討する過程で本級の情報を入手し、その砲力や防御力が加賀型を上回るものと判断されたことから、紀伊型戦艦以降の計画にも影響を与えた[8]。アメリカ側も当初は「加賀と土佐は長門の姉妹艦」と判断し、加賀型の次のクラス(紀伊型戦艦)は18インチ砲(46センチ砲)搭載予定と推定するなど[9]、日米双方がお互いの情報収集に躍起になっていた[注釈 3]。
本級の建造は1917年3月4日に認可されたが、第一次世界大戦の影響もあって1920年以降に6隻が起工された。1921年前半時点での調査によれば、各艦の工事進捗状況は概ね二割から三割程度で、マサチューセッツのみ数パーセントという状況であった[11][注釈 4]。同年11月よりワシントン軍縮会議がはじまり、1922年2月にワシントン海軍軍縮条約が調印されて主力艦の保有が制限されたため、建造は同年2月8日に中止された。未完成の船体は1923年に売却された。建造中止艦の艦名は、のちに新世代戦艦(ノースカロライナ[13]、サウスダコタ級、アイオワ、モンタナ級)に流用された。
同型艦
[編集]- サウスダコタ (USS South Dakota, BB-49)
- インディアナ (USS Indiana, BB-50)
- モンタナ (USS Montana, BB-51)
- ノースカロライナ (USS North Carolina, BB-52)
- アイオワ (USS Iowa, BB-53)
- マサチューセッツ (USS Massachusetts, BB-54)
出典
[編集]注釈
[編集]- ^ 【米國戰艦及巡洋艦】[1] 米國海軍にては、先年來海軍大擴張案の遂行を期し、其の工程を急ぎ居るものゝ如し。最近フランクリン・インスチチユートに米國造船局長テイラー造船少将の寄せたる「軍艦計畫に及ぼせる大戰の教訓」なるものゝ中に、最新米戰艦ノース・カロライナ級及新巡洋艦の艦型圖あり、即ち次に示すが如し。(艦型圖略)
- ^ (メリーランド級略)[2] 是等ノ艦ハ如何ニモ畏ルヘキモノアレト次ニ來ルヘキ「インヂアナ」級ノ六艦ハ更ニコレヲ凌駕スヘシ、「インヂアナ」級ハ有ラユル點ニ於テ從來ノ世界ノ列國ニ依リ從來設計セラレタル戰艦中最大最強ノモノタリ、其排水量ハ四三,二〇〇噸ニシテ「メリーランド」級ヲ超ユルコト約一一,〇〇〇噸、速力ハ二十三節ニシテ從來建造セラレタル最大速力ノ米國戰艦ニ優ルコト二節ナルヘシ(中略)日本ハ長門級ノ四艦ニ於テ米國ノ「メリーランド」級ニ比シ砲力同等速力優越ナル一戰隊ヲ有ス、而シテ一九二〇 - 二一年中ニ起工シタル次ノ二艦ハ十六吋砲十二門ノ主砲ヲ有ストノコトナレハ米日兩海軍ノ最新型戰艦ノ間ニハ命中力ノ關スル限リニ於テハ明カニ甲乙無キ譯ナリ。(以下略)
- ^ 一九二〇年ニ起工セル加賀(神戸川崎造船所)土佐(長崎三菱造船所)ハ初メ長門ノ姉妹艦ト聞キシカ其後接受セル報告ニ由リ其一層強大ナルヲ知レリ、然レト日本ノ新聞紙ハコノ二艦ヲ目シテ米國ノ「インディアナ」級ニ酬ヒタルモノナリト謂フモ(中略)[10]然レト此ノ艦トテモ最近ニ裁可セラレタル造艦計畫ノ四戰艦ニハ排水量モ戰闘力モ價格モ遠ク及ハサルヘシ、コノ新戰艦ハ一八吋砲ヲ採用スヘシト豫想セラレ居ルモノニシテコノ巨砲ハ一九二〇年ニ呉海軍工廠ニテ設計ヲ了シタリト謂ヘハ、目下試驗砲一門或ハ二門以上ヲ建造中ナルヤ疑ナシ加賀ノ領収期ハ一九二二年十二月土佐ハ同年八月ノ契約ナルヲ以テ二艦ハ米ノ「インディアナ」級ノ最初ノ一組ヨリモ早ク就役スルニ相違ナク從テ日本ハ暫クノ間ハ世界ノ最大最強艦ヲ有スル名譽ヲ檀ニスルコトヲ得ヘシ。(以下略)
- ^ 建造中の米海軍精鋭[12] 本年四月一日附の調査に依れば米國海軍の精鋭たるべき超弩級艦十一隻は将に完成せんとしつゝありキャルホルニヤの既に九六一パーセント完成せるを初めとして コロラド六九.三、メリーランド九六.八、ワシントン六一.二、ウヱスト・バヂニヤ四九.五、サウス・ダコタ二六.七 インデヤナ二三.一、モンタナ一八、ノース・カロライナ二七.二、アイオワ一六.一、マサチュセッツ二.五の割に完成せるが二三隻を除きては總て建造を急ぎ居り(華府)(記事おわり)
脚注
[編集]- ^ 海事参考年鑑、大正10年版 1921, pp. 39–41.
- ^ a b c 太平洋海権論 1922, p. 55(原本102頁)
- ^ “●帝國海軍の大偉觀 ◇戰闘艦加賀土佐は十月中に進水◇”. Hoji Shinbun Digital Collection. Burajiru Jihō, 1921.09.30. pp. 06. 2023年9月18日閲覧。
- ^ 挑むアメリカ 1931, p. 179.
- ^ 太平洋海権論 1922, p. 54(原本101頁)
- ^ 太平洋海権論 1922, pp. 56–57(原本104-107頁)
- ^ 「世界の艦船」1990年1月増刊号 『アメリカ戦艦史』p150-151
- ^ 歴史群像シリーズ『帝国海軍の礎 八八艦隊計画』p104-105 学研パブリッシング、2011年
- ^ 挑むアメリカ 1931, pp. 193–194.
- ^ 太平洋海権論 1922, p. 93-94(原本179-180頁)
- ^ 挑むアメリカ 1931, p. 208.
- ^ “Shin Sekai, 1921.04.27”. Hoji Shinbun Digital Collection. pp. 01. 2023年9月8日閲覧。
- ^ “米國の新鋭艦カロライナ號 七千萬弗を投じてこの程竣工せるもの、米國では十九年振りの主力艦である。”. Hoji Shinbun Digital Collection. Singapōru Nippō, 1940.08.05. pp. 02. 2023年9月8日閲覧。
参考図書
[編集]- 「世界の艦船」海人社:刊
- 1990年1月号増刊 『アメリカ戦艦史』 1989年
- 2012年10月号増刊 『アメリカ戦艦史』2012年
- 篠原幸好 / 今井邦孝:文『未完成艦名鑑 1906~45』(ISBN 978-4877195328)光栄:刊 1998年
- p.56-63「ダニエルプラン」八八艦隊のライバルたち 【サウスダコタ】【レキシントン】
- p.59-60 サウスダコタ級
- 太平洋戦史シリーズ 58『アメリカの戦艦』(ISBN 978-4056046922)学研プラス:刊 2007年
- 国立国会図書館デジタルコレクション - 国立国会図書館
- 福永恭助『挑むアメリカ』日本評論社、1931年5月 。
- 海軍少佐福永恭助『増補 軍艦物語』一元社、1934年11月 。
- ヘクトル・バイウォーター 著『太平洋海權論』海軍軍令部 訳、水交社、1922年7月 。
- 藤田定市 編『海事参考年鑑 大正十年版』有終會、1921年3月 。