メダル
メダル (medal) は、直径数センチ大の金属の延べ板に、業績や事績の記念などの目的で、何らかの意匠を刻印したものをいう。 ただし、通貨として利用される貨幣(硬貨・コイン)は含まれない。 メダルの形状は円形のものが一般的であるが、四角形や星形など円形以外の形状のものもある。また、単に形状が印刷されただけの物も有る。 メダイユ、メダイ(フランス語のmedailleなど)とも。
概要
[編集]メダルは、板に何らかの意匠を施したものである。金属製で円形のものが一般的であるが、金属以外の材料や円形以外の形状にデザインされることもある[注 1]。
コイン(硬貨)は、貴金属を通貨として利用する上で、ニセ金貨(→偽札)など公正性を欠くようなものが出回るのを予防する観点から、意匠が凝らされる。 メダルの場合は、褒賞として与えられる記念品(表彰)であることから、元来の意味からすれば、鋳潰して貴金属の資源的価値に還元される必要も無い。 このため、メダルの意匠は、偽造防止を目的としたコインの意匠とは異なり、賞を記念した、独自の意匠が凝らされるのが常である。 また、貴金属以外に、卑金属にめっきをして見栄えがするようにされたものも多く、この他にもリボンなどで装飾されたものが見られる。
商品や認定などでメダルが与えられる場合、実物は無く、単に意匠が印刷されただけの場合も有る。
スポーツにおけるメダル
[編集]現代、特に日本においてメダルと呼ぶ場合は、中でもスポーツなどの競技で勝利選手、優秀選手を表彰して贈られる各メダルのことを指す。団体競技の場合、トロフィー及び優勝旗・準優勝旗は「チーム」にひとつだけ授与され、また次回中央大会で返還しなければならない持ち回り[注 2]、優勝盾は当該チームに、メダルは構成選手全員に贈呈されるが、メダルの獲得数は「一個」と計算される[注 3]。通例、優勝者に金メダル、準優勝者に銀メダル、第3位の選手に銅メダルが授与され、受賞者はメダリストと呼ばれる。ただし第1回近代オリンピックでは優勝者に銀メダル、準優勝者に銅メダルが贈られた。
その性質上、“メダリスト”の呼称に見られるように、メダルを受けることはそれぞれの競技の世界における強力なステータスとして一般に認識されている。ゆえにメダル獲得を第一とするプレイを行う選手が後を絶たない。一方そういった勝利至上主義の競技姿勢は、スポーツの本来の理念(→スポーツマンシップ)に反するとして、しばしば批判の対象にされる。
上記以外のメダルの運用
[編集]優勝者のみに授与
[編集]- 全米ゴルフ協会主催競技の優勝者に金メダル。なお全米オープンではジャック・ニクラス金メダル、全米女子オープンではミッキー・ライト金メダルが授与される。囲碁の棋聖挑戦手合勝者には棋聖大賞メダルが贈呈される。
2位までに授与
[編集]- UEFA欧州選手権は制度上3位決定戦がないので銅メダルがない。表彰対象は準優勝まで。
4位にも授与
[編集]- FIFAワールドカップで4位チーム(3位決定戦敗退)にも銅メダルが授与されたことがある。
- 全米フィギュアスケート選手権は、4位までがメダル授与対象となる。4位選手には錫メダルが授与される。
全ての順位に授与
[編集]- 東京マラソンなど主要マラソン大会では、完走者にメダルを授与する。
軍隊におけるメダル
[編集]勲章、従軍記章の事を英語で「medal」と呼ぶ、著しい軍功をあげた・軍に功績のあった人物を表彰するためのものである。「medal」は日本語で一般的に「記章」や「褒章」、「メダル」などと呼称されるが、通常勲章などをメダルとは言わない。こちらは「order」と呼ばれる。
勲章までに至らない、若しくは記念等ではチャレンジコインが用いられる。
学術におけるメダル
[編集]学術研究などにおいて、ある分野で著しい功績があった研究者・技術者に対して授与するものがある。その分野の有名な研究者の名前を冠していることが多い。生物学におけるダーウィン・メダルや、電気電子工学分野でのエジソンメダルが有名である。ベンジャミン・フランクリン・メダル (フランクリン協会)のように、複数の分野を対象としたものも存在する。
メダル名に人名を冠する場合、一般的にその分野での著名な研究者の名前を採用する。また、死後にそのメダルが創設される場合が多い。しかしロスビー研究メダルのように、生前から研究者(この場合カール=グスタフ・ロスビー)の名前を冠したメダルが作られることもある。
ノーベル賞やフィールズ賞などといった著名な賞においてもメダルが授与されている。
学術におけるメダルの一覧
[編集]人道的活動におけるメダル
[編集]宗教におけるメダル
[編集]カトリック教会のロザリオには中心部分にメダイ(メダル)を連結させているものも多い。聖母の出現により製作された「不思議のメダイ」をはじめ聖ベネディクトのメダイ、ルルドの聖母と聖ベルナデッタのメダイなど、様々なものがある。メダリオン、メダリオなどとも呼ばれる。
ミッションスクールでは、華美な装飾品は禁止されていることが殆どであるが、メダイ(おメダイ[注 4]とも呼ばれる)ならば、身につけることが許されることもある。これにはキリストや聖母マリアなどがデザインされている。
トークンとしての利用
[編集]記念・表彰メダル以外にも、擬似的な硬貨(代用貨幣)、いわば硬貨の形態を取ったチケットとして利用される場合がある。
日本では、ゲームセンターのメダルゲームやライブハウスのドリンクチケット、パチスロなどにおいて、硬貨を模したものとして利用される。 サイズは、取り扱いのし易さから、直径25 - 30mm程度が多いが、勿論、それより大きいものや小さいものもある。
海外では、一部の公共交通機関や遊戯施設(ゲームセンター)において、硬貨やチケットの代替として、硬貨程度のサイズのメダルが利用される。 英語圏では、この様な一種のチケットとしての役割を持つメダルは、トークン(→代用貨幣)と呼ばれる。
カジノなどのギャンブルで使われる物はメダルとは呼ばずに「チップ」と呼ばれる(英語ではcasino tokenである)。
日本のカタカナ語としての「コイン」は硬貨を含め、上記のメダルやトークンという意味で使われる。
なお、英語のcoinは硬貨という意味であり、トークン類を示す意味で使うのは明白な誤用である。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 例えば2009年世界陸上競技選手権大会では長方形の形状のメダルがデザインされた。アルベールビルオリンピックでは主にガラスが使われた。
- ^ 完全に贈呈されるケースもある。
- ^ 例えば、陸上個人と四人のリレー競技でメダルを取得した場合、合計5個のメダルが贈呈されるが、メダルの獲得数としては2個と計算される。
- ^ メダイユ―medalのオランダ語読みから。