メッシュ (漫画)
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『メッシュ』は、萩尾望都による日本の漫画作品。漫画雑誌『プチフラワー』(小学館)にて1980年夏の号から1984年6月号まで連載された。
概要
[編集]パリを舞台に、母親に捨てられ、父親に憎まれている少年・メッシュの放浪と成長、父親との対立を描いた連作短編。
父親ときずなを取り戻すも結局捨てられる少年の物語『訪問者』(『プチフラワー』1980年春の号)[1]に続いて描かれた作品[2]で、父親にアンビバレントな感情を抱く少年を描く。父親と息子の対立を主題とする[3][4]一方、主人公は男性なのに女性の名を持ち、女装を楽しみ、同性愛者に言い寄られるなど、性同一性の混乱・あいまいな性という副題が全編を通して存在し、後年の『マージナル』・『残酷な神が支配する』に通ずるものがある。萩尾望都作品では初めてベッドシーンが描かれ、キスシーンも多い。
作者の転換期の作品で、初期の細かい挿話を積み重ねるように描く構成から、旧来の漫画に見られるような平明な構成に変化している。シリアスな話の中にユーモアを織り交ぜている。同時に画風も、手塚治虫の影響を受けた柔らかなものから、硬質でリアルな筆致に変化している[5]。
作品
[編集]- メッシュ(『プチフラワー』1980年夏の号)
- ルージュ(『プチフラワー』1980年秋の号)
- 春の骨(『プチフラワー』1981年初夏の号)
- モンマルトル(『プチフラワー』1981年夏の号)
- 革命(『プチフラワー』1981年秋の号)
- ブラン(『プチフラワー』1981年冬の号)
- 耳をかたむけて(『プチフラワー』1982年5月号)
- 千の矢(『プチフラワー』1982年7月号)
- 苦手な人種(『プチフラワー』1982年9月号)
- 謝肉祭(『プチフラワー』1983年3月号)
- シュールな愛のリアルな死(『プチフラワー』1984年6月号)
- 番外編
- Plan de Paris(『春の骨 メッシュ2』小学館、1982年1月)
- Movement I(『革命 Revolution メッシュ3』小学館、1982年8月)
- Movement II(『プチフラワー』1983年5月号)
- Movement III(『謝肉祭 メッシュ6』小学館、1983年11月)
登場人物
[編集]- フランソワーズ・マリー・アロワージュ・ホルヘス(メッシュ)
- 本名が女性らしい女性名であるため、自他ともにメッシュと呼ぶ。
- 愛称の由来は金に一部銀が混じった特徴的な髪色。第二次性徴で発現した父方祖父からの遺伝で、ホルヘスの息子であることを裏付ける証拠となった。
- 感情が不安定。2歳のときに母親が駆け落ちすると、実子かどうか疑った父親によってスイスの寄宿学校に入れられる。のちに父親は実子だと認めたが、メッシュを放っておいた過ちを母親に転嫁したため、父親を憎悪するように。14歳のときから家出している。
- ミロン・ファレル
- 贋作(がんさく)画家。怪我(けが)をしたメッシュを拾い、そのままアパートで同居させる。
- 周囲の人に疎まれていた過去があるが克服している。
- ルイ・シラノ
- アパートの住人。ミロンの階下に住む医者。
- エレーヌ
- アパートの向かいに住むタイピスト。ルイの恋人。
- ラカン画廊の主人
- ミロンのお得意先。
- カティ
- ミロンの恋人。
- ドルー
- ギャング。ミロンに拾われる前にメッシュが居候していた。
- バン
- ドルーのボスでサムソンと組んでいる。ギャング。
- ジャン・サムソン・ホルヘス
- メッシュの父。ギャング。メッシュを支配しようとする。
- エーメ・ホルヘス
- ホルヘスの後妻でメッシュの義母。メッシュを心配している。
- マルセリーナ・ルビエ(マルシェ)
- メッシュの母親。現在は心を病んでいる。
舞台劇
[編集]Studio Lifeにより2005年6月15日 - 7月4日までシアターサンモールで舞台化された。脚本・演出は倉田淳。
- キャスト
脚注
[編集]- ^ 「親と大げんかしているとき、『訪問者』とかの頃です。ちょっと暗くなるんですよ。」と語られている(『imago(イマーゴ)』(青土社)1995年4月号「特集 少女マンガ」の巖谷國士との対談(「少女マンガという装置」)より。)。
- ^ 『訪問者』は『トーマの心臓』の番外編で、オスカー・ライザーがシュロッターベッツ・ギムナジウムにやって来るまでが描かれており、本作品とはストーリー・登場人物とも無関係。
- ^ 両親との不和が高じて大げんかし、内なる親から解き放たれるために親殺しをテーマに本書を描いたということが、『AERA』2006年5月1日-8日合併増大号「萩尾望都 少女漫画が文学を超えた日」に記されている。
- ^ 『imago(イマーゴ)』(青土社)1995年4月号「特集 少女マンガ」の巖谷國士との対談(「少女マンガという装置」)にも、『訪問者』の頃に親と大げんかしガックリきて、「まあとにかく親と決裂したので変な親子の話を描いてやろうと。『メッシュ』ですね。ここでやっと私は親と対決する話を描くハメになるんですね。なぜ対決するかというと、理解したいから。」と語られている。
- ^ 画風の変化について作者は、「1980年は、『訪問者』『メッシュ』を描いていた頃です。その前あたりから、絵が変わってきました。『ポーの一族』のような、頭が大きく、手足の細い、子供体型から、少し、頭が小さく手足が長くなっています。実際の人物に、近づけたい。そう描きたいが、その描き方に、まだ、なれていなくて、バランスが悪いなあと思いつつ、人物を描いていました。」と記している(『金銀砂岸』(株式会社ブッキング 2006年)作者あとがきより)。