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リンブ文字

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
リンブ文字
シリジャンガ文字
類型: アブギダ
言語: リンブ語
時期: 1740年-現在
親の文字体系:
Unicode範囲: U+1900 - U+194F
ISO 15924 コード: Limb
注意: このページはUnicodeで書かれた国際音声記号 (IPA) を含む場合があります。
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リンブ文字(リンブもじ、: Limbu script、シリジャンガ文字とも)とは、ブラーフミー系文字に属するアブギダの1つ。

歴史

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言い伝えによると、リンブ文字は9世紀後半にリンブ族の王であるシリジュンガ・ハンにより発明され、その後使用されなくなったが、18世紀にリンブの学者テオンシ・シリジュンガ・シン・テーベが復活させたとされている。その間、リンブ文字を教えることはリンブワンシッキム地方では禁止されていた。

シリジュンガの説明

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リンブ語は、ヒマラヤ中部で独自の文字を持つ数少ないシナ・チベット語族の言語の1つである。(Sprigg 1959: 590), (Sprigg 1959: 591-592 & MS: 1-4) は、リンブ文字がまだリンブワンシッキムの一部であった、シッキムでの仏教拡大の時期である18世紀初頭に発明されたことを示している。リンブ文字はおそらく、第3代シッキム王のチャドル・ナムゲルにより発明されたレプチャ文字とほぼ同じ時期に発明されたと考えられている。リンブ文字はリンブの英雄であるテオンシ・シリジュンガ・シン・テーベのものとされている。

文字

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リンブ文字はアブギダであるため、基本的な文字は子音と随伴母音、あるいは子音とその他の母音からなる。リンブ文字では、随伴母音は/ɔ/である。

子音
転写 ko kho go gho ngo
IPA /kɔ/ /kʰɔ/ /ɡɔ/ /ɡʱɔ/ /ŋɔ/
文字
転写 co cho jo jho nyo
IPA /t͡ɕɔ/ /t͡ɕʰɔ/ /d͡ʑɔ/ /d͡ʑʱɔ/ /ɲɔ/
文字
転写 to tho do dho no
IPA /tɔ/ /tʰɔ/ /dɔ/ /dʱɔ/ /nɔ/
文字
転写 po pho bo bho mo
IPA /pɔ/ /pʰɔ/ /bɔ/ /bʱɔ/ /mɔ/
文字
転写 yo ro lo wo
IPA /jɔ/ /rɔ/ /lɔ/ /wɔ/
文字
転写 sho sso so ho
IPA /ʃɔ/ /ʂɔ/ /sɔ/ /ɦɔ/
文字

注記: ᤉ、ᤊ、ᤚは廃止された文字である。

随伴母音を変更するには、次のようなダイアクリティカルマークを利用する。

母音の付加記号
転写 -a -i -u -ee -ai -oo -au -e -o
IPA /a/ /i/ /u/ /e/ /ai/ /o/ /au/ /ɛ/ /ɔ/
付加記号
ᤁを利用した例 ᤁᤠ/ka/ ᤁᤡ/ki/ ᤁᤢ/ku/ ᤁᤣ/ke/ ᤁᤤ/kai/ ᤁᤥ/ko/ ᤁᤦ/kau/ ᤁᤧ/kɛ/ ᤁᤨ/kɔ/

ᤁᤨ /kɔ/ の文字はᤁ /kɔ/と同じ音節を表す。一部の利用者は、冗長であるとしてᤁᤨの分音記号を利用しないことがある。

音節頭の母音を表すためには、子音字と適合する母音付加記号を利用する。母音付加記号なしで利用すると、音節頭の/ɔ/を表す。

頭子音での子音連続は、子音字の隣に小さな記号を付加することで表す。

子音の付加記号
転写 -y- -r- -w-
IPA /j/ /r/ /w/
付加記号
ᤁを利用した例 ᤁᤪ/kjɔ/ ᤁᤫ/krɔ/ ᤁᤩ/kwɔ/

短母音の後の末子音は、これとは別の記号で表される。ただし、一部の末子音は外来語でのみ発生する。子音塊がある場合は、それらの記号の次に来る。

音節末子音
転写 -k -ng -t -n -p -m -r -l
IPA /k/ /ŋ/ /t/ /n/ /p/ /m/ /r/ /l/
付加記号
ᤁを利用した例 ᤁᤰ/kɔk/ ᤁᤱ/kɔŋ/ ᤁᤳ/kɔt/ ᤁᤴ/kɔn/ ᤁᤵ/kɔp/ ᤁᤶ/kɔm/ ᤁᤷ/kɔr/ ᤁᤸ/kɔl/

音節末子音のない長母音を表すには、Kemphrengと呼ばれる記号(᤺)を利用する。例: ᤁ᤺ /kɔː/

音節末子音のある長母音を表すには、主に二つの方法がある。

  1. Kemphrengの記号と音節末子音のための付加記号を組み合わせる。例: ᤁ᤺ᤰ /kɔːk/
  2. 音節末子音を対応する通常の子音に置き換え、その子音の下に横棒の形をした分音記号を追加する。これは、子音が母音なしであり、前の母音が長くなっていることを示す。例: ᤁᤁ᤻ /kɔːk/ この分音記号は、母音の長さに関係なく、リンブ文字に対応する音節末子音がない外来語の音節末子音を表すことがある。

前者はシッキムで広く使用されており、後者はネパールの作家により提唱されている。[1]

声門化Mukphrengと呼ばれる記号(᤹)を利用する。例: ᤁ᤹ /kɔʔ/

リンブ語版Wikipediaからのサンプル

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ᤛᤧᤘᤠᤖᤥ᥄ ᤀᤠᤍᤠᤱᤒᤠ ᤜᤠᤍᤠᤱᤔᤠᤛᤣ ᤗᤠᤶᤎᤡᤱᤃᤥ ᤗᤠᤶᤎᤰ ᤕᤠᤰᤌᤢᤱᤐᤠᤴ ᤖᤧ ᤘᤡᤁᤡᤐᤡᤍᤡᤕᤠ ᤀᤥ ॥

ᤛᤧᤘᤠᤖᤥ᥄ ᤀᤠᤍᤠᤏᤠᤒᤠ ᤀᤠᤍᤠᤏᤠᤔ ᤀᤠᤛᤧ ᤗᤠᤶᤎ ᤀᤡᤏᤠᤃ ᤗᤠᤶᤎᤠᤁᤠ ᤕᤠᤰᤌᤢᤱ ᤐᤠᤏᤠ ᤖᤧ ᤘᤡᤁᤡᤐᤧᤍᤤ ᤀ।

ᤗᤡᤶᤒᤢ ᤓᤠᤙᤠᤁᤥ ᤘᤡᤁᤡᤐᤡ᤺ᤍᤡᤕᤠᤔᤠ ᤛᤫᤠᤃᤋ ᤇ।

ᤗᤡᤶᤒᤢ ᤓᤠᤛᤠᤁᤨ ᤘᤡᤁᤡᤐᤡᤍᤡᤕᤠ ᤀᤜᤡᤗᤧ ᤀᤡᤴᤁᤢᤒᤧᤛᤠᤏᤠ (ᤐᤠᤖᤣᤰᤙᤠᤏ ᤘᤡᤁᤡ) ᤀᤷᤌᤠᤳ ᤁᤨᤁᤨᤔᤠ ᤇᤠ।

ᤕᤛᤗᤠᤀᤡ᤺ ᤀᤃᤠᤍᤡ ᤒᤎᤠᤀᤢᤏᤠᤁᤠ ᤗᤠᤃᤡ ᤁᤠᤶᤋᤡᤔᤠ ᥈ ᤛᤠᤕᤠ ᤗᤧᤰ ᤗᤡᤶᤒᤢ ᤓᤠᤙᤠᤔᤠ ᤜᤢᤏᤠ ᤈᤠᤖᤥᤖᤣ ᤇᤠ। ᤋᤩᤛᤁᤠᤖᤏ ᤗᤡᤶᤒᤢ ᤓᤠᤙᤠᤔᤠ ᤗᤧᤂᤠᤜᤠᤖᤢ ᤗᤧᤰᤏᤠ ᤛᤢᤖᤢᤃᤠᤷᤏᤠ ᤛᤠᤒᤤ ᤗᤡᤶᤒᤢᤓᤠᤙᤡ ᤔᤡᤳᤖᤜᤠᤖᤢᤔᤠ ᤜᤠᤷᤍᤡᤰ ᤀᤠᤏᤢᤖᤨᤎ ᤇᤠ।

廃止された文字

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初期のリンブ文字では、さらに追加で3つの文字が利用されていた。[1]

  • ᤉ /d͡ʑʱɔ/
  • ᤊ /ɲɔ/
  • ᤚ /ʂɔ/

ネパール語の子音接続のために、2種類の合字も利用されていた。[2]

  • ᤝ jña (デーヴァナーガリーにおけるज्ञ)
  • ᤞ tra (デーヴァナーガリーにおけるत्र)

19世紀の頃、鼻音化を表すためにアヌスヴァーラ(ᤲ)が利用されていた。これは、◌ᤱと同じ用途で利用されていた。

記号᥀は、感嘆助詞ᤗᤥ(/lo/) のために使用されていた。[1]

句読点

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リンブ文字では主に (句点に相当)が利用される。リンブ文字独自の感嘆符 (᥄)と疑問符 (᥅)が存在する。

数字

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リンブ文字独自の数字は次のようなものである。

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9

Unicode

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リンブ文字はUnicode 4.0 (2003年4月)で追加された。

リンブ文字のブロックはU+1900からU+194Fの範囲である。

リンブ文字
Official Unicode Consortium code chart (PDF)
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 A B C D E F
U+190x
U+191x
U+192x
U+193x
U+194x
Unicode 15.0現在。灰色のマスは、コードが割り当てられていないことを示す。

脚注

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  1. ^ a b c Unicodeへの文字の追加提案、2023年4月15日閲覧。
  2. ^ 合字2文字をUnicodeに追加する提案、Pandey, Anshuman (2023年4月15日閲覧。)