三井淳平
三井 淳平(みつい じゅんぺい、1987年4月11日[1][2] - )は、日本人初のレゴ認定プロビルダー[3]。兵庫県明石市出身[4][5]。既婚者。大学時代のハンドルネームは「ミトゥイー」。日本のレゴファンからは、「神」と称されている[2][6]。
経歴
[編集]研究者の父と専業主婦の母との間に生まれる[1]。3歳上の兄の影響で生後すぐの小さい頃からレゴで遊んでおり[1]、誕生日プレゼントはいつもレゴというぐらい遊んでいた[7]。中学3年生の夏休みにインターネットで海外の大きな作品を見てオリジナル作品に挑戦する[8]。秋に野球部を辞めてから時間ができ、熱中するようになる[9][5]。手持ちのブロックでは足りないことから、世界中のレゴファンが余ったパーツを売買するサイト「BrickLink」でブロックを安く大量に購入し、長さ2メートルの「サターンV型ロケット」を制作した[7]。灘中学校・高等学校時代もレゴに熱中し、高校3年の文化祭で等身大ドラえもんを披露した[7]。
自らのホームページにアップした作品が番組スタッフの目に止まって誘われ[10]、大学受験で忙しいはずの高校3年の秋に『TVチャンピオン』(テレビ東京)の「第2回レゴブロック王選手権」に出場、デンマークで行われる決勝に進出し、準優勝を果たす[9][11]。なお第1回にも誘いのメールが来ていたのだが、見逃していた[7]。
現役で東京大学理科一類に進学後、インターネットを通して知り合っていたレゴ好きの先輩たちと2007年1月、「レゴ部」を日本の大学で初めて創設する[9][5][12]。2007年の五月祭で1/40スケールの安田講堂を発表し、May Festival Awards(人気投票)で文化部門1位に輝いた[13][14]。精巧な出来映えが評価され、三越日本橋本店で7月24日から開かれた「'07こども博」に出展された[14][15]。さらに同年11月、東京大学創立130周年記念事業「知のプロムナード」に選ばれ、コミュニケーションセンターに常設展示された[16][3]。その後も東大・赤門、駒場キャンパスなど東京大学の建造物を制作した[4][17]。
一方で個人制作も続け、中学3年の時から約20万パーツと6年4ヶ月の年月をかけた1/40スケールの戦艦大和を2009年に完成[18][6]。レゴ愛好家が作品を紹介する世界有数のホームページMOCpages.comで2010年7月、MOC Of The Yearに選ばれた[19]。
チャリティーイベントへの世界遺産のレゴ作品出品[5]、母校でのレゴを使った立体表現の講演[6][20]、タイにおけるレゴを使った子供との交流[6]など、「レゴブロックを素材とした作品制作や関連する課外活動を通した社会貢献」が評価され、大学院修士1年の2010年10月に東京大学総長賞を受賞した[21][22]。
2011年7月には世界で13人目、日本人としては初のレゴ認定プロビルダーに選ばれた[3][4]。プロビルダーは、「世界最高レベルのレゴ作品制作能力を持つ一般人」とレゴ社が認定したもの[4]で、レゴ社の専任担当者が選抜し、幾つかの審査を経て選ばれる[2]。レゴブロックのブランド名を用い、様々なビジネス展開や活動を行うことができる[2]。2015年3月現在、アジア地域では他にシンガポールに1人いるだけである[2]。
2012年3月に東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学専攻修士課程を修了後[23]、新日鐵住金に入社して君津製鐵所に配属される[24]。勤務の傍ら、「バリシップ2013」(2013年5月23-25日)新日鐵住金ブースにおけるレゴブロックの鉄鉱石運搬船制作[24]や、君津製鐵所などが共催する君津市民ふれあい祭りへの「ふれあいレゴワールド」開催[25]などに携わる。平行した個人活動として、依頼されたレゴブロックによる巨大オブジェ制作や子供向けにレゴを使ったワークショップの開催を行ってきた[2]。
2015年3月9日、レゴブロックの組み替えレシピがダウンロードできるアプリケーションソフトウェア『PlusL』(株式会社ハンゾー)をプロデュースしてリリースした[26][27]。
レゴ制作をフルタイムで行いたいという思いが強くなったことから2015年に新日鐵住金を退社し、4月に三井ブリックスタジオを創業した[7]。依頼作品の制作の他に、子供相手のワークショップなども行っている[28]。
制作
[編集]変わった形をした特殊ブロックを作品に使う人が多い中で、基本ブロックのみを使って制作している[9]。基本ブロックだけでどこまで忠実に再現できるかこだわっており、基本ブロックだけで滑らかな曲線を作ろうとすると作品は大きなものになってしまう[10]。世田谷のオフィスには200-300万ほどのブロックが保管されており(2015年時)、在庫状況・保管位置は頭の中でほぼ記憶している[7]。
パソコンを使って設計する人もいるが三井は使わず[9]、大まかなスケッチを基にするだけで詳細な設計図は描かない[29]。また海外のレゴビルダーには設計と制作を分業している人もいるが、自分なりの解釈によるオリジナリティのある作品を制作したいことから、手作業にこだわっている[7]。
自分の作品には執着せず、ほとんどは壊して次に転用してしまう[6]。「壊すことでかえって想像力が鍛えられる」[8]、「別のモノに生まれ変わる過程が楽しいんです」[6]と語っている。そのため、手元に残っているのは戦艦大和など2、3点だけである[8]。
完全オリジナルの物の制作よりも、テーマを与えられた物や、既存の物をレゴで再現する方が好みである[7]。
戦歴・表彰
[編集]- 2005年11月17日 - TVチャンピオン「第2回レゴブロック王選手権」準優勝[30][11]
- 2008年4月17日 - TVチャンピオン2「第3回レゴブロック王選手権」出場[31]
- 2010年4月15日 - TVチャンピオン特別版「レゴブロック王選手権」出場[32][33]
- 2010年6月21日 - 第1回レゴブロック作品コンテスト(レゴブロック専門店05block.com主催) 審査員特別賞、05block.com賞[34]
- 2010年7月2日 - MOC Of The Year[19]
- 2010年10月 - 東京大学総長賞[21]
- 2011年7月 - レゴ認定プロビルダー[3]
主な出演番組
[編集]テレビ
[編集]- TVチャンピオンお正月スペシャル「レゴブロック王選手権 ザ・レジェンド」(テレビ東京、2013年1月1日)[35][36]
- 1Hセンス(フジテレビ、2013年10月20日) - 特集
- 探検バクモン(NHK総合テレビ、2015年1月14日) - 君津製鐵所の取材で紹介
以下の番組はいずれも、TBSテレビで制作。
- ゴロウ・デラックス(2012年10月19日) - ゲスト
- マツコの知らない世界(2012年3月17日・3月24日、2016年4月26日) - ゲスト
- レゴ マスターズ JAPAN(TBSテレビ、2023年5月27日 - )
ラジオ
[編集]- 井上貴博 土曜日の『あ』(TBSラジオ、2023年5月27日 - )
- メインパーソナリティの井上貴博(TBSテレビのアナウンサー)が進行役を務める『レゴ マスターズ JAPAN』が当日の本番後から放送を始めることを背景に、同番組のPRを兼ねてゲスト出演。
主要作品
[編集]- サターンV型ロケット - 初めて完成させた大きな作品[7]
- 等身大ドラえもん[4] - 灘高文化祭展示[20]
- ゼブラシ(歯ブラシ二つを重ねるとゼブラが出てくる) - TVチャンピオン「第2回レゴブロック王選手権」第1ラウンド[30]
- 日本デンマーク友好(東大寺大仏殿の中にデンマークの街並みを再現) - TVチャンピオン「第2回レゴブロック王選手権」決勝ラウンド[30][29]
- びっくり果物 - TVチャンピオン2「第3回レゴブロック王選手権」[31]
- ホワイトタイガー - TVチャンピオン特別版「レゴブロック王選手権」1R[33]
- 未来のバイク便 - TVチャンピオン特別版「レゴブロック王選手権」2R<前半戦>[33]
- ハムハムブロックハウス - TVチャンピオン特別版「レゴブロック王選手権」2R<後半戦>[33]
- オードリー春日 - TVチャンピオン特別版「レゴブロック王選手権」3R[33]
- ペンギンたちの春休み - TVチャンピオン特別版「レゴブロック王選手権」決勝戦[33]
- 東京大学・安田講堂(共同制作)[4] - 五月祭展示
- 東京大学・赤門(共同制作)[4] - 五月祭展示
- ブーン- 2ちゃんねるの人気キャラクター。制作過程を「VIP板」でリアルタイム実況し話題となる[7]
- 戦艦大和 - MOC Of The Year[19]
- 宇宙戦艦ヤマト - 第1回レゴブロック作品コンテスト(レゴブロック専門店05block.com主催) 審査員特別賞、05block.com賞[34]
- 国会議事堂[5]
- ピサの斜塔[5]
- アスキーアート[37]
- 金閣寺[6]
- エメラルド寺院[38]
- エッフェル塔[38]
- 『宇宙兄弟』等身大主人公兄弟 - 映画『宇宙兄弟』PR[29]
- 岡山市中心部の街並 - 三井不動産販売中国(現在の三井不動産リアルティ中国)岡山支店 常設展示[39]
- 鉄鉱石運搬船 - 「バリシップ2013」(2013年5月23-25日)新日鐵住金ブース[24]
- モアイ像 - 東京駅展示[8]
- きみぴょん - 君津市役所1階ロビー展示[8][40]
- 伊藤若冲「鳥獣花木図屏風」 - 特別養護老人ホーム「ラスール麻生」(川崎市)[41]
- アンリ・ルソー「人形を抱くこども」 - 大阪市立美術館こども展(2014年7月19日-10月13日)[42]
- レゴシティヒーロージオラマ - 20万ピースで作られた幅6mのジオラマ。キャンペーン「レゴシティ トラックキャラバン」で4tトラックにジオラマを載せ、全国を回る[43][44]。
- その他多数
著書
[編集]- 三井淳平『空間的思考法 世界が認めた、現役東京大学大学院生の頭の中!』メディアファクトリー、2012年。ISBN 978-4840143776。
DVD
[編集]- 三井淳平(出演)『三井淳平のレゴ(R)ブロックで作ろう!』(DVD)ポニーキャニオン、2012年6月20日 。2015年3月18日閲覧。
脚注
[編集]- ^ a b c 『空間的思考法 世界が認めた、現役東京大学大学院生の頭の中!』、30頁
- ^ a b c d e f 蛯谷敏 (2015年3月16日). “ファンの頂点、“レゴの神様”は日本人”. 日経ビジネスオンライン 2015年3月18日閲覧。
- ^ a b c d 『三井淳平さん 日本で初の【レゴ®認定プロビルダー】に決定! おめでとうございます!!』(プレスリリース)レゴ、2011年7月25日 。2011年8月2日閲覧。
- ^ a b c d e f g 「レゴブロック:東大院生の三井さん、国内初「プロビルダー」に」『毎日新聞』東京朝刊、2011年7月13日、28頁。
- ^ a b c d e f 「ひと:三井淳平さん=細密なレゴ作品で「世界一」になった」『毎日新聞』東京朝刊、2010年12月3日、6頁。
- ^ a b c d e f g 「(ひと)三井淳平さん 東大総長賞を受けた「レゴの神様」」『朝日新聞』東京朝刊、2011年1月29日、2頁。
- ^ a b c d e f g h i j 岡田有花 (2015年5月19日). “大企業辞め「レゴ」で起業——日本初の“レゴ認定プロ”三井淳平さんに聞く、「好きを仕事に」できた理由”. HRナビbyリクルート. 2015年5月19日閲覧。
- ^ a b c d e 「ブロックで「きみぴょん」 君津市役所 「レゴ認定プロビルダー」三井さん=千葉」『読売新聞』東京朝刊、2014年5月12日、33頁。
- ^ a b c d e 『三井淳平さん - 東大な人』(プレスリリース)東京大学、2006年9月12日 。2011年8月2日閲覧。
- ^ a b 北尾トロ「北尾トロの大陸超越 第17回 レゴマニア 灘高生に講義する天才ビルダー」『ラジオライフ』第30巻第11号、三才ブックス、2009年11月、156-159頁。
- ^ a b 秋長さちこ (2006年8月17日). “TVチャンピオン レゴ王選手権2005(第2回)”. 2015年3月18日閲覧。
- ^ 東大LEGO部ブログ (2007年2月21日). “LEGO部ログ開設”. 2015年3月18日閲覧。
- ^ 「東大レゴ部、『レゴで作った安田講堂』で五月祭人気投票文化部門第1 位に輝く」、淡青(東京大学広報誌)20号。
- ^ a b 「東大・安田講堂、レゴで再現」『産経新聞』東京朝刊、2007年6月30日、17頁。
- ^ 「“レゴ”で安田講堂を再現 学生「細部にこだわり」中央区・三越本店/東京都」『朝日新聞』東京地方版/東京、2007年7月27日、35頁。
- ^ 『東京大学創立130周年記念イベント』(プレスリリース)東京大学 。2015年3月18日閲覧。
- ^ 「[話の港]11月21日 」『読売新聞』東京夕刊、2009年11月21日、17頁。
- ^ Jumpei Mitsui (2009年8月6日). “Battleship YAMATO 1/40”. MOCpages. 2015年3月18日閲覧。
- ^ a b c Chris Phipson (2010年7月2日). “2010 MOCie Awards!”. MOCpages. 2015年3月18日閲覧。
- ^ a b 「好っきやネン関西私学 SPECIAL 灘校土曜講座」『中学受験進学レーダー』第19巻第9号、みくに出版、2007年9月、70-71頁。
- ^ a b 『学生表彰「総長賞」受賞者一覧』(pdf)(プレスリリース)東京大学 。2015年3月18日閲覧。
- ^ 東大LEGO部ブログ (2010年10月22日). “【号外】ミトゥィーさん総長賞受賞!!”. 2015年3月18日閲覧。
- ^ 「ブロックで戦艦、ドラえもん レゴ公認のビルダー・三井淳平さんが本=YJP」『読売新聞』東京夕刊、2012年6月23日、8頁。
- ^ a b c 「鉄鉱石運搬船をレゴ製作/新日鉄住金三井氏バリシップで展示」『鉄鋼新聞』、2013年5月31日、5頁。
- ^ 「新日鉄住金君津/君津ふれあい祭り/多数の親子連れ」『日刊産業新聞』、2014年8月5日、3頁。
- ^ 三橋ゆか里 (2015年3月12日). “世界13人目のレゴ社認定プロビルダー三井淳平氏が開発:1つのレゴセットを組み換えて何通りでも遊べるアプリ「PlusL」”. THE BRIDGE 2015年3月18日閲覧。
- ^ 盛田諒 (2015年3月13日). “LEGOの恐竜キットでカニが出来たよ、やったー! 組み換えLEGOの作り方が分かるアプリ『Plus L』がめちゃ熱い”. 週アスPLUS 2015年5月19日閲覧。
- ^ 例として、“【三井ショッピングパーク ららぽーと富士見】「LaLaport GW Kid‘s Festa」開催!ファミリーで楽しめるイベントが盛りだくさん!”. 産経新聞. (2015年3月12日) 2015年5月19日閲覧。
- ^ a b c 「曲線美を極めたレゴの達人」『Newsweek日本語版』第27巻第31号、阪急コミュニケーションズ、2012-8-15/22、58頁。
- ^ a b c 『TVチャンピョン 第2回レゴブロック王選手権』(テレビ番組)テレビ東京、東京都港区、2005年11月17日 。2015年3月18日閲覧。
- ^ a b 秋長さちこ (2011年6月19日). “TVチャンピオン レゴ王選手権2008(第3回)”. 2015年3月18日閲覧。
- ^ 『TVチャンピョン特別版 レゴブロック王選手権』(テレビ番組)テレビ東京、東京都港区、2010年4月15日 。2015年3月18日閲覧。
- ^ a b c d e f 秋長さちこ (2011年6月21日). “TVチャンピオン特別版 レゴブロック王選手権 2010(Vol.4)”. 2015年3月18日閲覧。
- ^ a b 05block.com (2010年6月21日). “第1回レゴブロック作品コンテスト”. 05block.com. 2015年3月18日閲覧。
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- ^ gooテレビ番組 (2013年1月1日). “「TVチャンピオン」 - レゴブロック王選手権 お正月SP -”. 2015年3月18日閲覧。
- ^ 「カラーグラビア レゴで、つくれます」『週刊新潮』第54巻第20号、2009年5月28日、159-161頁。
- ^ a b “A model WORLD”. The Nation: 3D. (1 2008).
- ^ 「ブロック玩具で岡山の街 日本人初のビルダー岡山で展示 3ヵ月かけ制作」『山陽新聞』朝刊、2012年2月15日、26頁。
- ^ 「ニュースな人:レゴで君津市キャラ、1カ月かけ制作し寄贈 日本人初の認定「プロビルダー」三井淳平さん /千葉」『毎日新聞』地方版/千葉、2014年3月6日、27頁。
- ^ 「壁画:横10メートル、レゴで 若冲の代表作「鳥獣花木図屏風」 川崎・来月1日開所の特養ホームに/神奈川」『毎日新聞』地方版/神奈川、2014年3月29日、26頁。
- ^ こども展トピックス (2014年8月8日). ““LEGO認定プロビルダーの三井さんが来てくれた!””. 読売テレビ. 2015年3月18日閲覧。
- ^ 大野雅人 (2015年4月30日). “レゴシティ トラックキャラバン始まる – “プロ”がつくった巨大ジオラマが全国行脚”. マイナビニュース 2015年5月19日閲覧。
- ^ 太田智美 (2015年4月28日). “20万ピースのLEGOで作った「街」が圧巻 制作期間は約3カ月”. ねとらぼ 2015年5月19日閲覧。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- Jumpei Mitsui.com[リンク切れ] - レゴビルダーとしての公式サイト
- LEGO Certified Professionals - LEGO.com
- 三井淳平 / Jumpei Mitsui (@Jumpei_Mitsui) - X(旧Twitter)
- Jumpei Mitsui (@jumpei.mitsui) - Instagram
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