コンテンツにスキップ

新潟県道50号小出奥只見線

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
主要地方道
新潟県道50号標識
新潟県道50号 小出奥只見線
主要地方道 小出奥只見線
奥只見シルバーライン
総延長 32.4 km
制定年 1977年
起点 魚沼市本町3丁目【北緯37度13分54.5秒 東経138度57分36.1秒 / 北緯37.231806度 東経138.960028度 / 37.231806; 138.960028 (県道50号起点)
終点 魚沼市湯之谷芋川【北緯37度09分38.0秒 東経139度14分56.0秒 / 北緯37.160556度 東経139.248889度 / 37.160556; 139.248889 (県道50号終点)
接続する
主な道路
記法
国道352号標識 国道352号
国道17号標識 国道17号
テンプレート(ノート 使い方) PJ道路

新潟県道50号小出奥只見線(にいがたけんどう50ごう こいでおくただみせん)は、新潟県魚沼市内を通る新潟県の県道主要地方道)である。上折立 - 奥只見ダム間は奥只見シルバーライン(おくただみシルバーライン)とよばれる。

概要

[編集]
奥只見シルバーライン上折立側
奥只見ダム

起点である魚沼市本町から市内大沢、葎沢、湯之谷芋川を経て奥只見に至る道路。国道352号と並び、小出 - 奥只見を結ぶ幹線道路として機能している。

県道50号は、国道352号と共に佐梨川に沿うように東進。葎沢温泉、芋川温泉など湯之谷温泉郷の温泉場を抜け、湯之谷芋川から上折立までの約3キロメートル (km) の間は国道352号と重複区間となる。

大湯温泉手前の上折立で北側へ分岐し、上折立から奥只見ダムまでの区間は奥只見シルバーラインと呼ばれる。この愛称は、江戸時代に奥只見地区でが産出されていたことに因む[1][2](銀山についての詳細は上田銀山を参照)。全長22.6 kmのうち18.1 kmをトンネルが占め、計19本のトンネルから成っている[3]

奥只見シルバーラインの南側で平行して走る国道352号は、上折立以東にある難所の枝折峠を越える勾配が急な狭隘区間である。このため、奥只見シルバーラインはこの区間のバイパス道路としても機能している。ただし、二輪車・軽車両および歩行者は通行禁止となっている[3][注釈 1]

奥只見シルバーラインは奥只見湖畔で終点となる。県道50号は奥只見ダムから更に只見川に沿って北上し、上大鳥橋南詰が終点となる。その先は福島県境に沿って南会津郡檜枝岐村の村道、さらに只見町の町道となり、下流にある大鳥ダム先に至る[注釈 2]

路線データ

[編集]
全ての座標を示した地図 - OSM
全座標を出力 - KML
  • 起点:魚沼市本町3丁目(国道352号交点)
  • 終点:魚沼市湯之谷芋川
  • 延長:32.4 km(重複区間を含む)

施設命名権

[編集]

新潟県は2007年平成19年)12月26日、新たな歳入確保策の一環として、県道の通称名に施設命名権を導入する方針を発表した。県は同年度から、沿線の景観が良好な県道について命名権導入に向けた検討作業を進めていた。同年6月に県民を対象に実施したアンケートでは回答者の約7割が命名権導入に賛成した他、県内の企業を対象にしたアンケートでも関心を示す企業が複数現れたことから、道路の維持管理費捻出を目的として導入に踏み切った。企業が管理する私道では同年3月1日神奈川県箱根ターンパイクが命名権導入に伴い「TOYO TIRES ターンパイク」(現在はアネスト岩田 ターンパイク箱根)と改称した例があるが、公道への導入例は当時全国初とあって注目を集めた。

そして県は2008年(平成20年)1月31日、県道の命名権募集の第1弾として当県道の一部区間(奥只見シルバーライン、総延長22.6 km)と新潟県道560号田沢小栗山線(魚沼スカイライン、総延長18.8 km)の2路線を対象とした売却先の募集要綱を発表した。公募期間は同年4月1日から9月30日までとし、売却希望額はシルバーラインを年額1,000万円以上、魚沼スカイラインを800万円以上、契約期間はいずれも10年以上を条件とした。加えて、呼称は各路線固有の歴史や文化を考慮したものかつ公序良俗に反しないものとして、呼称決定には沿線自治体の同意を前提条件とした。このうち契約金額について、当時県側は「年間の維持管理費用の約半額程度を想定して設定した」と説明している。

だが結局、公募期間終了までに売却に名乗りを上げる企業は現れなかった。公募期間終了後、県側に対して「設定金額が高過ぎる」との指摘があった。さらに両路線とも大部分が冬季閉鎖となることなども指摘された。こうして結局2路線とも、命名権の売却計画は事実上頓挫している。

歴史

[編集]

シルバーラインは元々只見特定地域総合開発計画の根幹事業である国内最大級の貯水量を誇る奥只見ダムの建設工事用道路として3年の歳月をかけて建設されたもので、全線の80 %がトンネルという難工事の末に1957年昭和32年)に完成した[3]。ダム完成後は維持管理用の道路として電源開発が所有していたが、1969年(昭和44年)に県に譲渡され、1971年(昭和46年)8月から観光道路として一般車両に開放された[3]。当初有料道路として供用されていたが、1977年(昭和52年)4月から一般県道として無料開放され[3]、その後に主要地方道に指定された。

路線状況

[編集]
魚沼市道宇津野50号線白光岩トンネル坑口
明神トンネルと交差している

奥只見シルバーライン区間のトンネルは1950年代の工事用トンネルが基本となっているため、構内照明が暗く、道幅が狭い、構内の高さが低いなどの点がある。さらに、急カーブ・急勾配・素堀部分・湧水が随所にあり、さらに交差点がトンネル内に設けられているなど、一般にみられるような道路トンネルとは大きく異なる。素掘や湧水に伴い、トンネル内の路面は常にウエット状態で、外気温差でトンネル出入口付近に霧が立ちこめる場合もあり、極めて特徴的かつ特異なものとなっている。これに伴い、奥只見シルバーラインはスリップ防止や事故防止などの観点から二輪車、軽車両、歩行者は通行禁止で、1月下旬 - 4月中旬に冬季閉鎖となる[1][2]

別名・通称

[編集]
  • 浦町通り(本町3丁目 - 浦町七交差点)
  • 南一条線(浦町七交差点 - 南一条交差点)
  • 奥只見シルバーライン(上折立 - 奥只見ダム)

重複区間

[編集]

道路施設

[編集]

トンネル

[編集]
奥只見シルバーラインのトンネル内
明神トンネルの銀山平交差点
白光岩トンネル
仕入沢トンネル坑口

奥只見シルバーライン区間約22.6 kmのうち、約8割がトンネル区間である[1][2]。19本あるトンネルはところどころ連続して繋がれており、外光が差してくるところはほんのわずかであるところから、1本のトンネルのようにも見える箇所がある[3]。内壁は素掘りのため岩肌が露出しており、水がしみ出している場所も多い[3]。ここに記載しているトンネル名はすべて奥只見シルバーライン区間のトンネルである。

トンネル一覧[5]
番号 トンネル名 延長 備考
1号 折立おりたてトンネル 183.7 m
2号 西ノ沢にしのさわトンネル 169.0 m
3号 神山かみやまトンネル 76.0 m
4号 猿沢さるさわトンネル 100.0 m
5号 駒見こまみトンネル 37.3 m
6号 真平まだいらトンネル 118.0 m
7号 吹上ふきあげトンネル 67.0 m
8号 小屋場こやばトンネル 73.7 m
9号 トトが沢トトがさわトンネル 395.7 m
10号 高平たかひらトンネル 481.1 m
11号 栃ノ木とちのきトンネル 67.9 m
12号 津久ノ岐つくのまたトンネル 1,603.0 m
13号 湯ノ沢ゆのさわトンネル 2,263.7 m
14号 黒又くろまたトンネル 1,431.3 m
15号 蕨沢わらびさわトンネル 659.3 m
16号 居守沢いもりさわトンネル 284.0 m
17号 明神みょうじんトンネル 3,920.0 m トンネル内に白光岩トンネルとの銀山平交差点あり
18号 荒沢あらさわトンネル 3,070.5 m
19号 仕入沢しいれさわトンネル 3,129.7 m
白光岩びゃっこうがんトンネル 48.5 m

上記の距離にスノーシェッドの距離は含まない。

道の駅

[編集]
道の駅ゆのたに

地理

[編集]
銀山湖(奥只見湖)

奥只見は越後三山只見国定公園の区域にあたり、一年の約半分が雪に覆われる。奥只見ダムは堤高157 mを有す日本最大の重力式ダムである。ダム周辺はこの地区の観光の要衝となっており、奥只見湖を航行する遊覧船には尾瀬方面へ向かう航路もある(尾瀬口船着場から予約型バスで約1時間)。

また、夏の観光シーズンにシルバーライン内を走る南越後観光バス路線バスが設定され、航路や予約型バスと組み合わせて上越新幹線浦佐駅 - 湯之谷温泉郷 - 奥只見ダム - 尾瀬口 - 尾瀬沼山峠 - 桧枝岐 - 会津鉄道会津高原尾瀬口駅の周遊が可能である[6][7]

前述のとおり奥只見シルバーラインは1月 - 3月に冬季閉鎖となるため、本路線以外の交通アクセスがない奥只見丸山スキー場は本路線の冬季閉鎖中に営業を休止するスキー場として知られる。営業期間は11月下旬 - (奥只見シルバーラインの冬季閉鎖中営業休止) - 5月中旬という変則的な運営形態となっている。

通過する自治体

[編集]
  • 魚沼市

交差する道路

[編集]

登場作品

[編集]

シルバーライン最奥部にある奥只見ダムはのちに漫画・映画としても展開された「ホワイトアウト」の原作小説の舞台となった事でも知られている。作品において、シルバーラインは犯人グループに爆破され崩落している。

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ 現在では二輪車の通行が可能となっている枝折峠は2006年(平成18年)までは終日、通行が禁止されていた。さらに普通車も午前は銀山平方面への、午後は大湯方面への一方通行規制がとられていた(2006年に解除)(酷道も参照)。
  2. ^ ただし、奥只見ダム - 大鳥ダム間は一般車両進入及び一般人立ち入り禁止となっており、その先の大鳥ダム - 田子倉ダム間は只見川に並行する一般道路なし。

出典

[編集]
  1. ^ a b c 小川、栗栖、田宮 2016, p. 68.
  2. ^ a b c 中村純一 編 2017, p. 68.
  3. ^ a b c d e f g 佐々木、石野、伊藤 2015, p. 75.
  4. ^ s:道路法第五十六条の規定に基づく主要な都道府県道及び市道 - 平成五年五月十1日建設省告示第千二百七十号、建設省
  5. ^ 合計19㎞の地下世界が続く19本のトンネル群~奥只見シルバーライン~ - 土木学会関東支部新潟会.2021年5月30日閲覧。
  6. ^ 南越後観光バス時刻表(平成31年6月1日改正) (PDF) - 2019年4月14日閲覧。
  7. ^ 尾瀬往復乗車券 - 会津バス.2019年4月14日閲覧。

参考文献

[編集]
  • 小川秀夫、栗栖国安、田宮徹 著「奥只見シルバーライン」、中村純一 編 編『ニッポン絶景ロード100』枻出版社〈エイムック〉、2016年4月10日、68頁。ISBN 978-4-7779-3980-0 
  • 中村純一 編 編「奥只見シルバーライン」『日本の絶景道100選』枻出版社〈エイムック〉、2017年4月10日、68頁。ISBN 978-4-7779-4572-6 
  • 佐々木節、石野哲也、伊藤もずく 著、松井謙介編 編『絶景ドライブ100選[新装版]』学研パブリッシング〈GAKKEN MOOK〉、2015年9月30日。ISBN 978-4-05-610907-8 

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]