コンテンツにスキップ

東雅夫

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ひがし まさお

東 雅夫
宮城県仙台市でのイベントにて
(2024年10月19日)
生誕 東 政男
(1958-04-11) 1958年4月11日(66歳)
日本の旗 神奈川県横須賀市
国籍 日本の旗 日本
職業 文芸評論家
編集者
アンソロジスト
テンプレートを表示

東 雅夫(ひがし まさお、1958年4月11日[1] - )は、日本文芸評論家編集者アンソロジスト[2]。本名、東政男[3]神奈川県横須賀市出身[4]神奈川県立横須賀高等学校を経て早稲田大学第一文学部日本文学科卒業[5]

メディアファクトリー刊行総合雑誌『ダ・ヴィンチ』の増刊号である、怪談専門雑誌『』の編集顧問(2014年9月までは編集長)[6]。アトリエOCTA刊行怪奇幻想文学評論誌『幻想文学』の編集長を、創刊から終刊まで20年余にわたり務めた。近年は編集者としてよりも、アンソロジーの編纂や、ホラー小説を中心とする文芸評論、怪談文学研究などの分野で精力的に著述活動を展開している。評論家として「ホラー・ジャパネスク」「怪談文芸」「800字怪談ムーヴメント」などを提唱。

元早稲田大学非常勤講師。「怪談之怪」発起人の1人。日本推理作家協会会員。

経歴

[編集]

1958年4月11日、神奈川県横須賀市に生まれる。1974年、神奈川県立横須賀高等学校入学。同学年に後の評論家、浅羽通明がおり、相互に影響を受ける。放送部の同期にアニメーターの宮﨑なぎさ。1977年、早稲田大学第一文学部日本文学科入学。1979年、早稲田大学政治経済学部生が創立した「幻想文学会」に参加。メンバーには石堂藍倉阪鬼一郎南條竹則菊地秀行(南條、菊地は他大学からの参加)らもいた。また、浅羽通明は正式メンバーではなかったが、会にしばしば顔を出した。のちの同名の評論誌の原点となるガリ版同人誌『幻想文学』発行。

1980年、本格的な季刊幻想文学同人誌『金羊毛』を創刊し、数軒の書店にて直販を試み、成功。これがアトリエOCTA刊行の『幻想文学』の前身となる。1981年、文芸出版社である青銅社に入社。1982年、青銅社を退社し独立するが、同社社長の協力もあって季刊研究評論誌『幻想文学』を創刊。編集人・東、発行人・川島徳絵(石堂藍)、発行所・有限会社幻想文学会出版局。誌上には澁澤龍彦中井英夫種村季弘荒俣宏ら大家も名を連ねた。売れ行きは好調ではあったが、この頃は学習塾で国語の講師も務めていた。1985年、澁澤龍彦、中井英夫を選者に迎えた幻想文学新人賞を創設。

1986年『幻想文学』の姉妹誌として幻想小説専門誌『小説幻妖』を創刊。1987年夏の澁澤逝去に伴い、翌88年秋に追悼特集『別冊幻想文学 澁澤龍彦スペシャル シブサワ・クロニクル』を発行。これは東の編集歴の中で最も思い入れ深いものとなった。さらに1989年に『同 ドラコニア・ガイドマップ』を、澁澤没後10年の1997年に『幻想文学 50 特集 澁澤龍彦1987 - 1997』を発行した。

1990年、SF専門雑誌『SFマガジン』(早川書房)にて、以後12年にわたるホラー小説時評の連載を開始。『幻想文学』の姉妹誌として書評専門誌『ブックガイド・マガジン(BGM)』を創刊。1994年、『幻想文学』の発行元が川島徳絵(石堂藍)代表の株式会社アトリエOCTAへ移行。これを機に個人事務所「幻想文学企画室」を立ち上げ、他社でも企画・編集業務を展開。学研で「学研ホラーノベルズ」シリーズなどの企画編集に携わる。1996年、雑誌『ムー』(学研)にて、「日本伝説紀行」の不定期連載を開始。1997年、ぶんか社で「HORRORWAVE」シリーズや日本初のホラー小説専門誌『ホラーウェイヴ』の企画編集に携わる。1999年、京極夏彦中山市朗木原浩勝らとともに「怪談之怪」を結成し、総合雑誌『ダ・ヴィンチ』(メディアファクトリー)誌上で活躍。

2000年、雑誌『ムー』20周年記念企画「学研伝奇プロジェクト」にブレーンとして参画、ムー伝奇ノベル大賞創設や伝奇専門誌『伝奇M(モンストルム)』創刊などに協力する。自らもアンソロジストとして「伝奇ノ匣」シリーズを手がける。またオンライン書店ビーケーワンの開業に際してホラー書籍担当の社外エディターとして参画、後に「東雅夫の幻妖ブックブログ」を開設し、同社との提携を続けた。2002年、雑誌『小説推理』(双葉社)にて、「幻想と怪奇」時評の連載を開始、不定期特集「幻想と怪奇への誘い」も企画構成。2003年、売行き不振と他社での編纂文筆活動の多忙化などにより、『幻想文学』は7月刊の第67号で終刊した。

ビーケーワン主催「ビーケーワン怪談大賞」の選者を加門七海福澤徹三と共に務める。2004年、『ダ・ヴィンチ』増刊号怪談専門雑誌『幽』を創刊、初代編集長に就任。同誌で「怪談文学史逍遙」「日本怪談紀行」の連載を開始。2005年頃より、ちくま文庫角川文庫小学館文庫などで怪談やホラーのアンソロジーを多数手がけるようになる。2006年、メディアファクトリー主催『幽』怪談文学賞の選考委員となる。2007年、ポプラ社での「てのひら怪談」シリーズ発刊にあわせて800字掌篇の怪談文芸ムーヴメントを推進。以後も意欲的に怪奇幻想文学分野で活躍している。

2011年、『遠野物語と怪談の時代』で第64回日本推理作家協会賞評論その他部門受賞。2012年5月、ビーケーワンのhontoへの併合により、業務提携を終了。

著作

[編集]
※は電子書籍で再刊

共著

[編集]
  • 『事典の小百科』大修館書店 1988年
  • 『日本幻想作家名鑑』 幻想文学出版局 1991年
  • 『幻想文学1500ブックガイド』 国書刊行会 1997年、石堂藍
  • 『日本幻想文学全景』 新書館 1998年
  • 『京極夏彦の世界』 青弓社 1999年
  • 『伝染る「怖い話」』 宝島社文庫 1999年
  • 『ホラーを書く!』 ビレッジセンター出版局 1999年/小学館文庫 2002年
  • 『真夜中の檻』 創元推理文庫 2000年
  • 『ワールド・ミステリー・ツアー13 京都篇』 同朋舎 1999年
  • 『ワールド・ミステリー・ツアー13 空想篇』 同朋舎 2000年
  • 『日本怪奇幻想紀行 一之巻 妖怪/百鬼巡り』 同朋舎 2000年
  • 『日本怪奇幻想紀行 二之巻 祟り・呪い道中』 同朋舎 2000年
  • 『日本怪奇幻想紀行 三之巻 幽霊・怨霊怪譚』 同朋舎 2000年
  • 『日本怪奇幻想紀行 五之巻 妖怪/夜行巡り』 同朋舎 2001年
  • 『ジャンル別映画ベスト1000』 学研M文庫 2001年
  • 『永遠の伝奇小説BEST1000』 学研M文庫 2002年
  • 『ゾンビ映画大事典』 洋泉社 2003年
  • 『泉鏡花『高野聖』作品論集』 クレス出版 2003年
  • 『「学校の怪談」はささやく』 青弓社 2005年
  • 『稲垣足穂の世界 タルホスコープ』 平凡社 2007年
  • 『クトゥルー神話の本』 学研 2007年
  • 『日本幻想作家事典』 国書刊行会 2009年10月、石堂藍と
  • 『幻想文学講義 「幻想文学」インタビュー集成』 国書刊行会 2012年9月
  • 『ぼくらは怪談巡礼団』 幽BOOKS角川書店 2014年6月、加門七海

アンソロジー

[編集]
※は電子書籍で再刊

編・解説

[編集]

共編著

[編集]
  • 怪談之怪之怪談 メディアファクトリー 2003年 ISBN 484010848X
  • 日本怪奇小説傑作集1 創元推理文庫 2005年 ISBN 4488564011
  • 日本怪奇小説傑作集2 創元推理文庫 2005年 ISBN 448856402X
  • 日本怪奇小説傑作集3 創元推理文庫 2005年 ISBN 4488564038
  • 怪談の学校 メディアファクトリー 2006年 ISBN 4840114978
  • 響鬼探究 国書刊行会 2007年 ISBN 4336049270
  • てのひら怪談 ポプラ社 2007年 ISBN 4591096998
  • てのひら怪談2 ポプラ社 2007年 ISBN 4591100103
  • てのひら怪談 百怪繚乱篇 ポプラ社 2008年 ISBN 4591103870
  • てのひら怪談 ポプラ文庫 2008年 ISBN 4591103528
  • てのひら怪談 己丑 ポプラ文庫 2009年
  • てのひら怪談 庚寅 ポプラ文庫 2010年
  • てのひら怪談 辛卯 ポプラ文庫 2011年
  • てのひら怪談 壬辰 ポプラ文庫 2012年、文庫判はほか多数
  • 幻想と怪奇の英文学 春風社 2014年。下楠昌哉と責任編集(以下も)
  • 幻想と怪奇の英文学Ⅱ 増殖進化編 春風社 2016年
  • 幻想と怪奇の英文学Ⅲ 転覆の文学編 春風社 2018年
ローズマリー・ジャクスン『幻想文学―転覆の文学』下楠昌哉訳 を収録

脚注

[編集]
  1. ^ 東 雅夫 年譜 (1歳〜12歳) : 東雅夫の幻妖ブックブログ
  2. ^ 大学院教養デザイン研究科 特別講義|明治大学
  3. ^ 『読売年鑑 2016年版』(読売新聞東京本社、2016年)p.462
  4. ^ 未来授業 - TOKYO FM Podcasting
  5. ^ 妖怪と怪談の文学誌 | 東 雅夫 | 早稲田大学エクステンションセンター
  6. ^ 恭賀新年 : 東雅夫の幻妖ブックブログ

参考文献

[編集]
  • 「幻想文学」とその時代 東雅夫インタビュー(『ナイトメア叢書2 幻想文学、近代の魔界へ』青弓社 2006年)
  • 読書をめぐる冒険(いのうえさきこ『スキ!がお仕事!』メディアファクトリー 2006年)

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]