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焼津漁港カツオ窃盗事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
焼津漁港
地図
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焼津漁港カツオ窃盗事件(やいづぎょこうカツオせっとうじけん)は、2021年令和3年)10月に静岡県焼津市焼津漁港で発覚した、漁業協同組合(漁協)職員や地元水産業者社員によるカツオ窃盗事件。20年以上に渡り、漁協職員や一部の水産加工業者らが、水揚げされた冷凍カツオを計量する前に密かに抜き取って正規外の流通ルートに回して不正な利益を得ていたことが発覚し、漁業の街・焼津のブランドを失墜させる事態に発展した。焼津冷凍カツオ窃盗事件[1]焼津カツオ盗[2]などとも言われている。

概要

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カツオの水揚げ量が年間400億円を超え、日本一を誇る焼津漁港であるが、事件発覚以前から「焼津港では(鹿児島県などの港と比べて)水揚げが減る」という噂が漁業関係者の間で囁かれていた[3]

2021年(令和3年)10月11日、焼津市内の水産加工会社が水揚げした冷凍カツオ4.5トンを盗んだとして、市内の別の水産加工会社の幹部(元社長・役員)のほか焼津漁協職員、運送会社社員など7人が静岡県警に逮捕された[4][5]

主犯格とみられる漁協職員は、運送会社の社員に命じて水揚げしたカツオの一部を計量せずに運び出させて水産加工会社の倉庫に保管し、その水産加工会社の同じく主犯格と見られる社長(元)が、部下の役員(元)に命じて倉庫に運ばせたカツオを自社の所有と偽る工作を行っていた。これら未計量のカツオによる不正な売り上げの一部が漁協職員に渡り、また関与した者たちに報酬として分配されていた[3]。「焼津港では水揚げが減る」という噂が裏付けられる結果となった[3]

2021年(令和3年)11月29日、漁協は調査委員会による報告書を公表し、20年前から職員がカツオを加工会社に渡す見返りに現金を受け取っていた事実を認めた[6]。これらは、後に他の水産加工会社らによる別ルートのカツオ窃盗の実態も明らかになったため「第1の窃盗ルート」と呼ばれる。

2021年(令和3年)12月には、静岡県警が神奈川県南足柄市に本社がある運送会社[7]や大手水産会社マルハニチロの完全子会社「大洋エーアンドエフ」の東京本社と焼津営業所[8]にもカツオ盗難の疑いで家宅捜索に入り、2022年(令和4年)5月9日に上記の神奈川県の運送会社元社長や、マルハニチロのグループ企業の社員ら6人を窃盗容疑で逮捕した。盗まれたカツオは鹿児島県の業者に売却されたとみられ(第2の窃盗ルート)、事件は静岡県外にも波及した[9]

2022年(令和4年)10月11日、高知県の水産加工会社の元会長や、焼津市内の水産加工会社元常務、運送会社の社長ら5人が、カツオ窃盗容疑で逮捕された(第3の窃盗ルート[10][11]

焼津漁港でのこのようなカツオの不正抜き取り行為は、全貌は明らかではないが20〜30年前から行われていたとみられ、被害総額は数十億円に上るとも言われている[12]

焼津漁業協同組合長の西川角次郎は事件発覚後の2022年(令和4年)3月に再任されたが、同年6月9日に記者会見を開き、辞任する意向を表明した[13]

2023年(令和5年)3月、焼津漁協は職員が不正に関与したことをふまえ、被害を受けた水産加工業者15社に対し、解決金総額6億7000万円を支払う和解案を示した[14]

被害を受けた15社は、2023年(令和5年)5月24日までに漁協が提示した和解案(総額6億7000万円の支払い)に応じる意向を示し、うち3社は訴えを取り下げた[15]

2024年(令和6年)3月29日までに、被害を受けた県内外の10の水産会社と三重県の個人事業主が、第3ルートの焼津市の水産加工会社や元常務ら3人などに対し、8億円あまりの賠償を求める訴えを静岡地方裁判所に起こした[16]

脚注

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  1. ^ 暴かれた因習、独白・焼津港冷凍カツオ窃盗事件〈上〉”. 中日新聞 (2023年5月11日). 2024年3月7日閲覧。
  2. ^ 焼津カツオ盗の記事一覧”. 静岡新聞. 2024年3月7日閲覧。
  3. ^ a b c 漁協職員がカツオを大量窃盗…「焼津港では水揚げが減る」「30年前からうわさあった」”. 読売新聞 (2021年11月15日). 2021年11月15日閲覧。
  4. ^ ご報告とお詫びについて”. 焼津漁業協同組合 (2021年10月12日). 2021年11月15日閲覧。
  5. ^ 静岡新聞社. “カツオ盗 焼津漁協職員、元職員を逮捕 当時の加工会社社長も|あなたの静岡新聞”. 2024年3月7日閲覧。
  6. ^ 焼津港冷凍カツオ窃盗 20年以上前から現金授受”. 産経新聞 (2021年11月29日). 2021年11月29日閲覧。
  7. ^ 新たなカツオ窃盗事件発覚か? 監視カメラに窃盗シーンが… 神奈川県の運送会社に疑い 静岡・焼津市(静岡朝日テレビ)”. Yahoo!ニュース. 2021年12月29日閲覧。
  8. ^ 焼津港の冷凍カツオ窃盗事件に関与か 静岡県警がマルハニチロ子会社を家宅捜索:東京新聞 TOKYO Web”. 東京新聞 TOKYO Web. 2021年12月29日閲覧。
  9. ^ 焼津のカツオ盗難に「第2のルート」か…陸路と船で鹿児島の加工会社へ”. 読売新聞 TOKYO Web. 2022年5月15日閲覧。
  10. ^ カツオ計量証明を偽造 第3ルート容疑者、正規品見せ掛けか”. 中日新聞. 2022年10月14日閲覧。
  11. ^ 「盗んだカツオで船一隻が簡単に作れるという噂」焼津港・冷凍カツオ盗で“第三のルート”摘発。「関わった人は全部名乗り出て」地元からは落胆の声”. TBSNEWS. 2022年10月12日閲覧。
  12. ^ 闇に消えたカツオ~水揚げ額日本一の漁港で何が~”. NHK. 2022年4月8日閲覧。
  13. ^ 酒井健 (2022年6月10日). “焼津漁協組合長が辞任へ カツオ窃盗「けじめつける」”. 中日新聞. 2024年8月21日閲覧。
  14. ^ 冷凍カツオ窃盗、職員関与の焼津漁協が解決金6.7億円を提示”. 読売新聞. 2023年3月8日閲覧。
  15. ^ カツオ窃盗被害 水産会社3社が和解案応じ訴え取り下げへ”. NHKニュース. 2023年5月24日閲覧。
  16. ^ 焼津カツオ窃盗事件 被害の水産会社などが賠償求め提訴”. NHK (2024年3月29日). 2024年8月21日閲覧。

外部リンク

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座標: 北緯34度51分47.0秒 東経138度19分34.3秒 / 北緯34.863056度 東経138.326194度 / 34.863056; 138.326194