AN/AAQ-33
AN/AAQ-33は、ロッキード・マーティンが、LANTIRN システムのAN/AAQ-14の後継として開発した照準ポッドである。愛称はスナイパー。輸出仕様の名称はパンテーラ。
特徴
[編集]FLIR、デュアルモードレーザー、レーザー目標追跡装置および指示装置、レーザー測量機、CCDイメージセンサ、映像データリンクの機能を備えており[1][2]、レーザー誘導兵器の運用に加えてGPS誘導兵器に座標を送信することも可能である[3]。くさび形の先端部はサファイアガラスの窓を有し[4]、その中に収められたセンサーには左右の回転方向は無制限、前後方向は5度から-155度までの自由度が与えられている[5]。ロッキード・マーティンは、空対空用途に用いることも可能としており、受動式の探知および追尾やレーザースポット追跡に対応している[5]。また、ROVERデータリンクを搭載しており、地上部隊などに画像や映像の送信が可能である。
メンテナンス性も改善され、自己診断機能やLRUにより、約20分程度で整備が可能となっている[1]。
本機は、2001年にアメリカ空軍の先進照準ポッド(英:Advanced Targeting Pod)に選定され、現在では、F-16、F-15E、B-1B、B-52H、A-10Cなど、多くのアメリカ空軍の機体に装備されている[1]。輸出も行われ、多くの国の戦闘機にも装備されている[5]。機体側がLANTIRNのフル機能に対応しており自動操縦による低空飛行など地形追従レーダーの機能を必要とする場合は、LANTIRNの航法ポッドであるAN/AAQ-13と組み合わせて装備される。
F-35に内蔵される電気光学照準装置(EOTS)であるAN/AAQ-40は、AN/AAQ-33の派生型であり、幾つかのコンポーネントを共有している[6]。
改良
[編集]2010年、CMDL(Compact Multi-band Data Link)の搭載が行われて従来のビデオデータリンク機能が拡張され、より繊細な画像や映像のデジタル送信が可能となった[7]。また、同年には先進照準ポッド強化計画(ATP-SE:Advanced Targeting Pod – Sensor Enhancement)に選定された[1]。スナイパーATP-SEでは、センサーおよびプロセッサが強化され、NTISR(英:Nontraditional Intelligence Surveillance and Reconnaissance)モードが自動化されるなどの改良が行われている[1]。
スナイパーATP-SEは、2013年1月に本生産が開始され[8]、2014年3月17日にIOC(初期作戦能力)を獲得した[9]。
対応機種
[編集]- ロッキードマーチンUK、BAE システムズ、SELEX ガリレオのチームが2008年2月19日に実証に成功した[13]。
- 2007年2月に選択され、2009年に展開が完了した[14]。
- 2016年9月28日にクウェート空軍の機体に統合する契約が結ばれた[15]。
- 2020年2月にアラブ首長国連邦空軍が装備するミラージュ2000に装備する契約を締結[18]。
採用国
[編集]仕様
[編集]ロッキード・マーティン公式より[5]
出典
[編集]- ^ a b c d e f “Sniper pod”. アメリカ合衆国空軍 (2011年10月12日). 2013年10月6日閲覧。
- ^ “Sniper Pod”. ロッキード・マーティン. 2013年10月6日閲覧。
- ^ “Sniper XR / ATP - Advanced Targeting Pod”. Globalsecurity.org. 2013年10月6日閲覧。
- ^ Dr Carlo Kopp. “Thermal Imaging Sensors” (PDF). 2013年10月7日閲覧。
- ^ a b c d “Sniper Pod” (PDF). ロッキード・マーティン. 2013年10月7日閲覧。
- ^ “Lockheed Martin Conducts First Flight of F-35 Electro-Optical Targeting System on Cooperative Avionics Test Bed”. ロッキード・マーティン (2010年8月16日). 2013年10月6日閲覧。
- ^ Lockheed Martin to Upgrade Sniper Advanced Targeting Pod’s Digital Data Link Capability
- ^ “Full-rate production for new Sniper ATP”. UPI通信 (2013年1月17日). 2013年10月6日閲覧。
- ^ “U.S. Air Force Declares Initial Operational Capability for Lockheed Martin’s Sniper Advanced Targeting Pod – Sensor Enhancement”. ロッキード・マーティン (2013年3月17日). 2013年3月24日閲覧。
- ^ 航空自衛隊 (2013年8月2日). “ターゲティング・ポッドの機種決定について”. 2013年8月6日閲覧。
- ^ “空自のF-2戦闘機、スナイパーATP搭載8機種目に”. FlyTeam ニュース. (2015年8月14日)
- ^ Guard tests pod on F-15C for tracking ability
- ^ LOCKHEED MARTIN UK DEMONSTRATES SNIPER® ADVANCED TARGETING POD ON BOARD TORNADO GR4
- ^ The great GR9 journey
- ^ Lockheed Martin’s Sniper Advanced Targeting Pod Continues Platform Expansion with Eurofighter Typhoon
- ^ “Qatar picks Sniper pod for Rafale fleet” (英語). FlightGlobal. (2018年6月11日)
- ^ “Qatar Emiri Air Force Awards Lockheed Martin Sniper Advanced Targeting Pod Contract” (英語). Lockheed Martin. (2018年6月11日)
- ^ “United Arab Emirates Orders Additional Lockheed Martin Sniper Advanced Targeting Pods” (英語). Lockheed Martin. (2020年2月25日)
- ^ Commercial Deliverables for Commercial Signing Ceremony
- ^ a b Lockheed Martin's Sniper Advanced Targeting Pod Secures Bahrain and Taiwan Delivery Orders - Sep 26, 2018
- ^ 月刊軍事研究2009年8月号 別冊P.59
関連項目
[編集]- LANTIRN - 更新対象となった照準・航法ポッド。
- ライトニング - イスラエルのラファエル社が開発した照準ポッド。こちらはAN/AAQ-28として採用されている。
- ダモクル - フランスのタレス・グループが開発した照準ポッド。
- 航空自衛隊の装備品一覧
外部リンク
[編集]- ロッキード・マーティン公式サイト
- 仕様 PDFファイル - ロッキード公式