N-QUALIS
N-QUALIS(エヌクオリス)[1]は、日本車輌製造が2021年(令和3年)から製造をしている、ステンレス車体および台車(NS台車)[2]のブランドである[3] 。
本項では、車体における技術的な前身となる日車式ブロック工法についても記述する。
前史
[編集]日車式ブロック工法
[編集]N-QUALISに先立ち、日本車輌製造では軽量ステンレス製鉄道車両の低コストな製造法として日車式ブロック工法を開発した。同社の公式サイトでは日車式ブロック工法あるいは日車式SUSブロック構体と紹介されている。
今までの車両製造での車体の側構体の組立てでは、車体全長と同じ長さの骨組に上部に幕板、下部に腰板、扉の部分に入口枠を溶接で取付けて組立てていたのだが、その組立作業には広いスペースが必要であり、特に幕板の長さは車体全長と同じで、組立て時においての取り扱いが難しかった。そこで、側構体を車端窓ブロック、中間窓ブロック、側入口ブロックなどのブロック単位に分けて、各ブロック単位でブロックを製造後、最終的に各ブロックを溶接接合して側構体を組立てる方式である。これにより、ブロックの製造を狭いスペースでも作業できるほかに、各ブロックの製造を平行して進めることで、工期短縮や各ブロックの保管が容易となり、車両製造コストの削減にもつながっている。また、最終工程でのブロックの接合では、各ブロックの継ぎ目に余裕があるため、継ぎ目の間隔を微調整して接合することにより、寸法精度が高い側構体を製作することができる[注 1]。
日車式ブロック工法は発表時点で軽量ステンレス車体のうち側面のビードを廃した工法としては後発の部類[注 2]であったが、競合他社が各々の工法をブラッシュアップさせブランド名をつけている[注 3]中、日本車輌製造も自社のブロック工法を発展・改良させブランド名をつけたのがN-QUALISである。
採用例
[編集]- JR東海315系電車[備 1]
- 京王9000系電車[備 2]
- 小田急3000形電車(2代目)[備 3]
- 小田急5000形電車(2代目)[備 4][4]
- 京成3000形電車(2代目)[備 5]
- 京成3100形電車(2代目)[備 7]
- 横浜市交通局3000形電車3次車以降
- 名鉄300系電車
- 名鉄3300系(3代目)・3150系電車
- 名鉄4000系電車
- 名鉄5000系電車(2代目)
- 名鉄9500系・9100系電車
- 名古屋市交通局N1000形電車
- 名古屋市交通局N3000形電車第2編成以降[備 8]
- 名古屋市交通局6050形電車
- 名古屋臨海高速鉄道1000形電車
また、日本国外では台湾車輌に技術移転され、台湾鉄路管理局EMU700型電車の704F以降は現地生産となっている。
ギャラリー
[編集]ブロック工法で製造された車両。扉周辺に継ぎ目が見える。
-
小田急3000形(2代目)
-
名鉄3300系(3代目)
-
台湾鉄路管理局EMU700型
概要
[編集]車体
[編集]「N-QUALIS」ブランドの車体のコンセプトは、安全・品質・保守である。また、この車体は先述の日車式ブロック工法をベースとしている。
特徴
[編集]- 車体強度の強化
- 表面の平滑化
- 構体シールの削減
などである。
台車
[編集]台車は特許を取得した一体プレス式台車枠の採用およびタンデム式軸箱支持装置(軸梁式も選択可能)の採用による安全性・保守性の向上と優れた走行性能を特徴とするほか、オプションの専用ゴムにより自己操舵台車にすることを可能としている。東海旅客鉄道(JR東海)との共同開発である[注 4]。
採用車両
[編集]- JR東海315系電車(2021年 - )
- 現時点は315系のみであるが、今後はJR東海向け以外の車両(特急車両やほかの通勤車)にも採用される予定である。
- 2024年(令和5年)2月に、本ブランドの特急用車両のステンレス構体が完成した[5]。
-
JR東海315系電車
- 京成3200形電車 (2代) (2024年 - )
類似コンセプト
[編集]車体
[編集]- sustina - 総合車両製作所のステンレス製の標準型鉄道車両。
- efACE - 川崎車両(旧・川崎重工業車両カンパニー)の標準型鉄道車両。ステンレス車体とアルミ車体が存在する。
- A-train - 日立製作所による類似コンセプトのアルミ車両。
台車
[編集]- efWING - 川崎重工業車両カンパニー(現・ 川崎車両)の開発した台車。
関連項目
[編集]脚注
[編集]備考
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ “N-QUALIS コンセプト動画・カタログ 鉄道車両製品紹介”. 日本車輌製造株式会社. 2022年5月5日閲覧。
- ^ “NS台車 動画・カタログ N-QUALIS 鉄道車両製品紹介”. 日本車輌製造株式会社. 2022年5月19日閲覧。
- ^ “日本車輌 新ブランド「N-QUALIS」、車両銘板公開!どんな性能? | RailLab ニュース”. レイルラボ(RailLab). 2022年5月4日閲覧。
- ^ “小田急12年ぶりの新型通勤車両、「5000形」を見る”. 鉄道コム リポート. 朝日インタラクティブ (2019年11月14日). 2020年8月21日閲覧。
- ^ “N-QUALISブランドの特急車両用ステンレス構体が完成しました!” (2024年2月22日). 2024年6月15日閲覧。