デストロイガンダム
デストロイガンダム (DESTROY GUNDAM) は、テレビアニメ『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』、および劇場用アニメ映画『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』に登場する、モビルスーツ (MS) に分類される[注 1]架空の有人式人型ロボット兵器の1つ。「地球連合軍」に属する。MS形態への変形機構を持つ。操縦には生体CPUの存在が不可欠で、劇中では第81独立機動群「ファントムペイン」所属のステラ・ルーシェをはじめとした「エクステンデッド」たちが搭乗する。「デストロイ」は英語で「破壊」を意味する。メディアや関連商品では「デストロイガンダム」と公称されるが、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』作中内の設定においては、同作の他のガンダムタイプ同様に「デストロイ」と呼称される。
設定解説
[編集]デストロイガンダム DESTROY GUNDAM[2] | |
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型式番号 | GFAS-X1[2][注 2] |
全高 | 56.30m[2] |
頭頂高 | 38.07m[2] |
重量 | 404.93t[2] |
装甲材質 | ヴァリアブルフェイズシフト装甲[6] トランスフェイズ装甲[注 3] |
動力源 | バッテリー[7] |
武装 | 75mm対空自動バルカン砲塔システム イーゲルシュテルン×4 高エネルギー砲 アウフプラール・ドライツェーン×2 熱プラズマ複合砲 ネフェルテム503×20 200mmエネルギー砲 ツォーンmk2 1580mm複列位相エネルギー砲 スーパースキュラ×3 マーク62 6連装多目的ミサイルランチャー×4 両腕部飛行型ビーム砲 シュトゥルムファウスト×2 MJ1703 5連装スプリットビームガン×2 陽電子リフレクター発生器 シュナイドシュッツSX1021×3 |
搭乗者 | ステラ・ルーシェ スティング・オークレー ファンフェルト・リア・リンゼイ 地球連合軍エクステンデッド |
ユーラシア連邦の軍事企業アドゥカーフ・メカノインダストリー社が開発した大型可変機。ザムザザーやゲルズゲーといった大型MAのコンセプトを推し進めるとともに、これまで連合が培ったMS技術を融合した機体である[8][注 4]。
単機でMS多数分の性能を発揮するガンダムタイプとして製造されているものの、ザフト側に対する技術的優位性が失われつつあったことと、バッテリーと装備の充実を考慮し機体は大型化した[10]。専用OS「G.U.N.D.Am. Fortress」によって制御される機体全身に多数の砲門を備え、艦隊や多数の敵機を消滅させる絶大な火力を誇る。また、強固な装甲と陽電子リフレクターを備え、ビーム・実体弾兵器を問わず鉄壁の防御力を有している。背面の円盤型バックパックは4基の高出力ホバースラスターを内蔵したフライトユニットとして機能し、MA形態時ではこれによって大気圏内の飛行も可能とした[2][注 5]。機体の性質上、デストロイの主形態はMA時であり[3]、その砲撃能力をもって移動砲台として機能する。反面、同形態の運動性の低さから拠点制圧用のMS形態を持ち合わせている[2][注 6]。
その戦闘力はMS・MAという戦術兵器を超えた戦略兵器とも呼ぶべき代物であり、単機での要塞攻略・殲滅戦を可能としている。しかし、その代償として機体制御や火器管制システムの複雑化を招いており、本機を円滑に運用するためには高い空間認識力が必要とされた[2]。そのため、連合では身体機能を強化されたエクステンデッドの専用機として扱われている[2][注 7]。また、本格的な格闘装備を持たないことから肉薄攻撃は不得手としている[12][注 8]。さらに、その圧倒的な火力ゆえに機体周辺に自軍の援護部隊も配置できず、また機動性の緩慢さと接近戦装備がない事が仇となり、ひとたび近接戦に持ち込まれるとたちどころに敵の標的になってしまう弱点がある(とはいえ、本機の懐に切り込める技量を持つのはキラやシンなどの一部のエース級パイロットだけに限られる)。操縦の際には、専用のパイロットスーツを着用しなければならない。
武装
[編集]- 75mm対空自動バルカン砲塔システム イーゲルシュテルン
- 頭部に装備する牽制用の機関砲[2]。
- 高エネルギー砲 アウフプラール・ドライツェーン
- 背部フライトユニットに装備される2連装×2基の長射程大出力ビーム砲。アウフプラールとはドイツ語で「衝突、反射」、ドライツェーンとは「13」の意味。
- 本機の最強の武装であり、一撃で艦隊を壊滅させるほどの破壊力を持つ[13]。主にMA形態で運用されるが、フライトユニット上部に可動アームを介してマウントされているため、MS形態でも使用可能[注 9]。
- MA形態において鳥脚状に変形した脚部は、こうした火器の一斉射撃の際に反動を吸収する役目も担う[2]。
- 熱プラズマ複合砲 ネフェルテム503
- フライトユニット円周上に計20門内蔵されるビーム砲。「ネフェルテム」はエジプトの神「ネフェルティム」に由来する。作中ではMA形態、MS形態を問わず使用される。ビームを発射しつつ照射角度を変える描写もみられた。
- 200mmエネルギー砲 ツォーンmk2
- 顔面口部のビーム砲。レイダーガンダムに装備されていたツォーンの改良型モデルで、口径が2倍になっている。装備箇所の関係上、MA形態では使用できない。
- 1580mm複列位相エネルギー砲 スーパースキュラ
- 胸部の3連装大口径ビーム砲。イージスガンダムやカラミティガンダムに装備されたスキュラの発展型であり、MS形態時の強力な主砲である。MA形態では使用不可[13]。
- マーク62 6連装多目的ミサイルランチャー
- 背部フライトユニットに装備されたミサイルランチャー。威力はビーム兵器にはおよばないが、追尾性が高く大型であるため、並みのMSならば十分に破壊できる。また、前後を向く形で装備されているため、追尾性と合わせて広範囲をカバーできるようになっている。
- 両腕部飛行型ビーム砲 シュトゥルムファウスト[15]
- 手甲部分にビーム砲、シュナイドシュッツSX1021を備える[2]デストロイの腕部。本体から分離し、ドラグーンシステムによる[15][11][16]遠隔操作が可能な、アームユニット兼攻盾システム。「シュトゥルムファウスト」とはドイツ語で「嵐の拳骨」の意味。形態を問わず使用できる武装で、大気圏内外を問わない自律飛行能力を有する。劇場版ではライジングフリーダムや同機のシールドブーメランに容易に両断されている。
- MJ-1703 5連装スプリットビームガン
- 両手の5指先端に装備されたビーム砲。指を曲げた状態でも発砲が可能[13]。「シュトゥルムファウスト」使用時は腕部から切り離されて手甲部分のビーム砲とともに火器として機能する。
- 陽電子リフレクター発生器 シュナイドシュッツSX1021
- シュトゥルムファウストに2基、フライトユニット先端に1基を備えるアンチビームフィールド発生器。
- 「シュナイドシュッツ」とは「勇敢なる盾」の意味[17]。 ザムザザーやゲルズゲーなどに装備されていたものと同型で、実弾・ビーム双方に効果を持つ[18]。劇場版では突進力のあるイモータルジャスティスのシールドブーメランの特攻にせり負けて腕部をえぐられている。
劇中での活躍
[編集]2クール目のオープニングでは、シルエットで登場。3クール目以降のオープニングでは、細部まで見えるようになった。
劇中ではユーラシア連邦西部における戦闘でステラ・ルーシェの搭乗機として初登場し、ネオ・ロアノークのウィンダムやスティング・オークレーのカオスと共に出撃。都市にはザフトが駐留しており、地球軍の接近に伴って出動していたが、本機はこの駐留軍をアウフプラール・ドライツェーンの一撃だけで焼き払う。その後もヨーロッパ各地の都市に配備されたザフトのMS部隊ごと街を殲滅しながら進攻し、ベルリンに到着するまで多くの都市をなぎ払った[注 10]。
ベルリンではアークエンジェルと交戦し、そのゴットフリートMk.71やキラ・ヤマトのフリーダムガンダムのハイマット・フルバーストをも無傷で防御しながらの戦闘を繰り広げていたところ、ザフトからはミネルバも参戦してシン・アスカのインパルスも交えた乱戦へ発展する。途中、ネオのウィンダムがフリーダムに撃墜されたことで死の危険を感じたステラは本機の火力に物を言わせて暴れ回るが、パイロットがステラと知ったシンの説得で戦闘を停止する。しかし、フリーダムを前にしたステラは再び暴走して正面のインパルスを目がけてスーパースキュラを発射しようとするも、その直前にフリーダムのMA-M01 ラケルタ ビームサーベルによる近接攻撃を受けて砲門が損壊し、エネルギーが行き場を失って暴発したことにより生じた内部機構の誘爆を経て、天空へ向いたツォーンMk2からビームを噴出しながら機能を停止した[注 11]。この戦闘でステラが戦死したことが、彼女へ好感を抱いていたシンにフリーダムとの対決を決意させる動機となる。
その後は少数ながら量産されており、ヘブンズベース攻略戦ではスティングの搭乗機を含む5機が出撃し、ザフト・反ロゴス同盟軍のディン、バビ、グフイグナイテッドやボズゴロフ級潜水艦などを破壊して多大な損害を与えた[注 12]。しかし、懐に飛び込まれると弱いという本機の弱点を看破され、デスティニーガンダムとレジェンドガンダムとインパルスによって次々と撃破されていき、最終的に5機とも撃墜された。 3号機が撃墜されて、敗色濃厚でジブリールがロゴスメンバーを見捨てて緊急避難を開始し、ロゴスが降参の白旗を上げる前後でスティングオークレーの1号機撃墜後に、最後の1機がシンのデスティニーに撃墜された。
レクイエム攻防戦でも3機が出撃したが、この頃になるとベルリン戦のような破壊力を見せつける前に倒される役回りとなっており、陽電子リフレクターもトランスフェイズ装甲もビームサーベルには無力で手も足も出ず、3機ともデスティニーとレジェンドとの交戦で短時間のうちに撃墜された。
『機動戦士ガンダムSEED C.E.73 Δ ASTRAY』ではファンフェルト・リア・リンゼイの搭乗機がアグニス・ブラーエのターンデルタと交戦するが、撃墜されている。
本機は地球連合軍、ブルーコスモス、そしてロゴスがプラントとの再戦の切り札として用意していた秘密兵器であるが、本編第27話や『機動戦士ガンダムSEED C.E.73 STARGAZER』第2話ではベルリン戦以前に、プラントなどの敵陣営に本機の情報が漏洩していたことが示唆されている。漏洩した情報はデュランダルが見ており、彼には早期のロゴス非難の情報工作作戦を練られ、ベルリン襲撃直後にロゴス非難声明を出されてしまう。
C.E.75年を舞台とする劇場版『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』ではブルーコスモス残党の戦力として物語冒頭に登場し、地球上においてジンやザウートなどを圧倒的な火力で殲滅するが、衛星軌道上より飛来した世界平和監視機構「コンパス」のヤマト隊を率いるキラの操るライジングフリーダムのハイマットフルバーストモードの掃射を受けた上にシールドブーメランで切り裂かれ、以前よりも容易に撃破される。エルドアでの戦闘時には背部ユニットと左腕を喪失し、右胸のスーパースキュラは破損したまま応急処置で、封印された中破状態の機体も登場。修復もままならない状態で出撃した結果、ライジングフリーダムとイモータルジャスティスにコンビネーション攻撃で追い込まれ、サーベルの同時攻撃で撃破された[注 13]。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ MSとする資料[1][2]、モビルアーマー (MA) として扱う媒体も見られる[3][4]。『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』アニメ公式サイトのメカニック解説では、MSとして扱われている。
- ^ 型式番号は、"Gressorial Fortress Armament Strategic" を略したもので、「戦略装脚兵装要塞」を意味する[5]。
- ^ 『機動戦士ガンダムSEED DESTINY GENERATION of C.E.』および『SDガンダム GGENERATION シリーズ』。後者ではライブラリーにも明記されている。
- ^ 後期GAT-Xの系譜図と繋がりをもつ資料も見られる[9]。
- ^ 変形シーケンスはフライトユニットを上半身に被って下半身を180度回転させ、脚部を鳥脚状に変化させることによって行われる。コクピットのスイッチ1つで変形することが可能であり、変形した脚部によって砲撃時の反動相殺能力も向上する[2]。
- ^ 制圧用の移動砲台としてMA形態、対MS戦用にMS形態を使い分けるとした資料も見られる[11]。
- ^ デストロイには専用のパイロットスーツが用意されている。コクピットもエクステンデット専用のもので、ナチュラルの操縦は不可能[2]。
- ^ 劇中では、MA形態時に接近戦を仕掛けてきたバクゥを陽電子リフレクターで弾き飛ばして踏み潰したほか、MS形態時にビームサーベルで斬りかかられた際はシールドで防御して即座に反撃するなど、接近戦がまったくできないわけではない。
- ^ 『C.E.73 Δ ASTRAY』ではファンフェルト・リア・リンゼイの搭乗機がMS形態で前方や上方に向けて発射している姿が確認できる[14]。
- ^ ベルリンにもザフト駐留軍がいたが、こちらも圧倒的な火力の前に太刀打ちできず、瞬時に殲滅させられた。
- ^ また、作中ではデストロイの再起動後、ミネルバが迎撃のために同機へ副砲トリスタンの照準を定めている。
- ^ ヘブンズベースやダイダロスに配備されていた機体は、ファントムペイン以外の特殊部隊などから徴用したエクステンデッドが搭乗していたとされている[19]。このタイプは、劇中で「ブーステッドデストロイ」と呼ばれていた。小説版においては搭乗するエクステンデッドに薬物投与と専用の調整が施されていたことが言及されている[20]
- ^ 本作品では、本機も他のMSと同様に大半のシーンが3DCGで描かれているが、このシーンは監督の福田己津央がかつて演出を担当したテレビアニメ『機甲戦記ドラグナー』最終話におけるD-1カスタムとファルゲンによるギルガザムネの撃破シーンへのリスペクトやオマージュも込めて演出を担当した[21]ほか、同作品のオープニングアニメーションや第46話のメカニック作画監督を担当したことでも知られる大張正己がメカニック作画監督を担当した手描きシーンの1つともなっている[22]。
出典
[編集]- ^ 『電撃データコレクション 機動戦士ガンダムSEED DESTINY 下巻』メディアワークス、2007年11月15日初版発行、4-5頁。(ISBN 978-4-8402-4087-1)
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o 『機動戦士ガンダムSEED DESTINY MSエンサイクロペディア』一迅社、2008年11月15日初版発行、116-119頁。(ISBN 978-4-7580-1126-6)
- ^ a b 『月刊ホビージャパン』2005年7月号、ホビージャパン、105頁。
- ^ 『週刊ガンダム・ファクトファイル 第140号』デアゴスティーニ・ジャパン、2007年7月3日、31頁。
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- ^ 『機動戦士ガンダムMS大全集2013[+線画設定集]』メディアワークス、2012年12月、154頁・437頁。(ISBN 978-4048912150)
- ^ 『ガンダムの常識 モビルスーツ大百科 ガンダムSEED 連合・オーブ篇』双葉社、2011年11月、52-53頁。ISBN 978-4575303667
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- ^ 『グレートメカニック18』双葉社、2005年9月、74-75頁。ISBN 978-4575464283
- ^ 『グレートメカニック17』双葉社、2005年6月、72-73頁。ISBN 978-4575464276
- ^ a b 『グレートメカニック20号』双葉社、2006年3月、139-142頁。(ISBN 9784575464306)
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- ^ a b c 『機動戦士ガンダムSEED DESTINY オフィシャルファイル メカ編Vol.3』講談社、2005年9月、8-9頁。ISBN 978-4063671575
- ^ ときた洸一『機動戦士ガンダムSEED C.E.73 Δ ASTRAY』2巻、角川書店、2007年6月、103-104頁。(ISBN 978-4047139329)
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- ^ @G1_BARIの2024年1月28日のポスト、2024年3月18日閲覧。