鍵のない夢を見る
鍵のない夢を見る | ||
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著者 | 辻村深月 | |
イラスト | いとう瞳(装画) | |
発行日 | 2012年5月15日 | |
発行元 | 文藝春秋 | |
ジャンル | 短編小説集 | |
国 | 日本 | |
言語 | 日本語 | |
形態 | 四六判上製カバー装 | |
ページ数 | 240 | |
公式サイト | 鍵のない夢を見る 文藝春秋 | |
コード | ISBN 978-4163813509 | |
ウィキポータル 文学 | ||
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『鍵のない夢を見る』(かぎのないゆめをみる)は、辻村深月による日本の短編小説集。第147回直木三十五賞受賞作[1]、短編「芹葉大学の夢と殺人」は第64回日本推理作家協会賞短編部門候補作。
青春もので知られる著者が、今作ではより経験豊富な年代の人にも読んでもらいたいと読者に委ねる書き方を意識して執筆した[2]。ごく普通の女性5人がふと魔が差して起こしてしまった窃盗や放火といった犯罪をテーマとし[3]、新聞やテレビのニュースで大きく取り上げられることのない町の事件を扱った短編集[2]。
2013年にWOWOWの「連続ドラマW」にてテレビドラマ化された[3]。
各話あらすじ&登場人物
[編集]仁志野町(にしのちょう)の泥棒
[編集]- 初出:『オール讀物』2009年10月号
母と参加した観光バスツアーで、バスガイドの女性が小学校の同級生だった律子だと気付いたミチル。小学3年生の時に隣町から転校してきた律子と親しくなったミチルはある日、別の同級生から“りっちゃん(律子)のお母さんは泥棒だ”“何度注意してもやめない”などと聞かされる。到底信じられないミチルだったが、ついに留守中の我が家から出てくる律子の母と鉢合わせしてしまう。律子の母から口外しないよう言い含められ、それまでどおりに律子と仲良くするミチルだったが、律子と一緒に買い物に行った際に、彼女が万引きしようとしているのを目撃してしまう。泥棒のDNAを感じずにはいられず、ミチルは律子と距離を置くことを決める。
- ミチル
- 律子や優美子と仲が良く、優美子とは家も近所だった。運動神経は良くない。
- 現在は小学校の教師で、6年生をうけもっている。
- 水上 律子(みずかみ りつこ)
- 小学校3年生の夏休み明けに隣町から町内で一番規模の小さい仁志野小学校に引っ越してきた。明るく、手先が器用。みんなからは”りっちゃん”と呼ばれていた。アイドルになって『ミュージックステーション』に出るのが夢。よく日焼けしており、背の高さはクラスで1、2番を争う。ミチルのことが好きな2つ年下の幹也という弟がいる。
- 現在は結婚して姓は近田(ちかだ)に変わっているが、意志の強そうな目と黒く艶やかでまっすぐな髪の毛は昔から変わらない。那賀(なか)観光バスツアーのガイドをしている。
- 律子の母
- 小柄でぽっちゃり、短髪。いつもすっぴんで、エプロンをして内職をしていた。ミチルや律子が小学5年生の時、泥棒をしているという噂が流れる。夫はホテル風月で働いている。
- 優美子(ゆみこ)
- 律子と1番仲が良かったクラスメイト。いつもニコニコ笑っているだけで人の意見には反対も賛成もしないが、それすらも許されてしまう天使や妖精のような子。母親がピアノ教室を開いており、優美子自身もピアノがうまく、律子の歌によく伴奏をつけていた。小さくて手足が白く細い。
石蕗(つわぶき)南地区の放火
[編集]- 『オール讀物』2010年4月号
公有物件の保険事業を担当する災害共済地方支部に勤める笙子は、不審火が出たという実家近くの消防団の詰所となっている神社に現場調査に向かった。そこには案の定、顔を合わせたくない消防団員・大林の姿もあったが、笙子は気づかないふりを続ける。お世辞にもいい男とは言い難いあんな男と1日とはいえプライベートで一緒に出かけてしまったことを他人に知られることは、綺麗でモテると今までもてはやされてきた笙子のプライドが許さなかった。しかし大林はわざとらしい演技でたった今気づいたかのように、親しげに声をかけてくる。
- 笙子(しょうこ)
- 短大卒業と共に財団法人町村公共相互共済地方支部に正職員として入社して16年目、36歳のOL。実家から通える短大に通っていたため一度も県外に出たことがなかったが、30過ぎても結婚していないため、両親から結婚をせかされ、それが嫌で家を出た。見た目はおとなしそうだが実際は気が強い。動物や子供が嫌い。礼儀知らずには絶対になりたくないという思いを持っているため、仕事上で関わる人間からの誘いを嫌でも断れない。
- 朋絵(ともえ)
- 去年から入職した笙子より10歳年下の後輩。臨時職員。身長と体重は笙子と全く同じだったこともあるが、小さな顔やきゅっと引き締まったウエストなど、体型はまるで違う。笙子には”ともちゃん”と呼ばれている。
- 大林(おおばやし)
- 石蕗町役場の職員で、現在は水道課に勤務している。38歳、独身。ほぼボランティアである地元の消防団に入っていて、団の中では1番年上。後輩達からは「バックドラフト」というあだ名で呼ばれている。薄くなった頭髪、分厚い唇、太っているわけでも極端に痩せているわけでもないが身体の肉がだらしなくたるんでいる体型など、お世辞にもいい男とはいえない。駅伝に出場実績のある横浜の私立大学卒。
美弥谷(みやたに)団地の逃亡者
[編集]- 初出:『オール讀物』2010年1月号)
友達の初体験を知り、自分も早く処女を捨てたかった美衣は携帯のご近所サイトで彼氏を探す。そして出会ったのが、悩み相談に相田みつをの詩をまじえてコンタクトをとってきた陽次だった。幸せは自分で決められるのだと美衣は喜び、2人は付きあうようになる。しかし陽次はすぐに束縛が激しくなり、事あるごとに美衣に暴力をふるうようになってしまう。時は過ぎ、20歳を過ぎた美衣は今も、陽次と2人でいる。『るるぶ』を持って、海岸近くのスポットを周り、そして2人は一体どこへ向かおうとしているのか。
- 美衣(みえ)
- 日焼けサロンで焼いていて、化粧もしている今風な女。陽次とは高校を卒業してアルバイトをしたりしなかったりな日々の中、携帯の出会い系サイトの一種であるご近所サイトで知り合った。小百合と敦子とは小学校の頃から仲が良く、修学旅行の班も同じだった。保育園の時に両親は離婚し、現在は母親と生活している。今年68歳になる祖父がいる。
- 柏木 陽次(かしわぎ ようじ)
- 2年付き合っている美衣の恋人。痩せていて筋肉が無い。変なところで礼儀にうるさい。
- 小百合(さゆり)
- 美衣の友達。勉強ができたため、中学は受験して私立へ行った。眼鏡をかけており、地味で真面目そう。ジャニーズが好きで、現実の男とは付き合ったことがない。
- 栄美(えみ)
- 美衣が小学生の時のクラスメイト。キョンシーごっこをやると、いつもテンテン役だった。県外で就職したらしい。
- 敦子(あつこ)
- 美衣と小・中が一緒の友達。身長は美衣と同じだが、昔から太っている。しかし初体験は美衣よりも早かった。
芹葉(せりば)大学の夢と殺人
[編集]- 初出:文春ムック『オールスイリ』
研究室の教授・坂下が殺されたと聞いた時、未玖はかつての自分の恋人・雄大が犯人だったらどうしようと不安になった。とても本気だとは思えない夢を真剣に語って周りを唖然とさせ、嘘やお世辞が言えずに容赦なく相手を傷つける雄大は、教授とはそりが合わなかった。そしてその教授のせいで雄大は自分が卒業できなかったと思っているのだ。そしてその不安は的中、数日後に雄大は容疑者として全国に指名手配されてしまう。別れたのだから関係ないと思い込もうとしていたが、3日後、逃亡中の雄大から電話を受けた未玖は、周りに嘘をついて雄大の元へと向かってしまう。
- 二木 未玖(にき みく)
- 群馬県高崎市在住。芹葉大学工学部デザイン工学科坂下研究室卒業。高校の同級生がたまたま出版社でアルバイトをするようになったコネで、雑誌の連載コラムで半年間、挿絵を描く仕事をしていたことはあるが、イラストレーターとして生計を立てる夢は叶わず、私立高校の美術教師となった。雄大と大学時代に付き合っていた。喫煙者で化粧気がなく、髪も無造作に伸ばしている。
- 羽根木 雄大(はねぎ ゆうだい)
- 未玖の元交際相手で同じ坂下研究室に所属していた。目立つタイプではなく、口数も多い方ではない。美形で華奢で色白。顔立ちは人工的に彫ったように涼しげに整っている。転部して医学部に入った後はサッカー選手になって日本代表を目指したいと本気で思っている。嘘やお世辞が言えない性格。デザイナーズマンションの一室に住んでいる。
- 坂下教授殺しの容疑者として指名手配される。
- 坂下 元一(さかした もとかず)
- 芹葉大学工学部教授。57歳、独身。馬鹿がつくほど生真面目で、研究や学問以外に興味がないタイプ。工学部研究棟にある自身の研究室で、頭や顔面、腹部に暴行を受け、首を絞められて殺され、ロッカーで発見された。
- 宝井(たからい)
- 未玖の同期採用の化学教師。真面目で親切。生まれてから一度もじったことのなさそうな太い眉と、間隔がかなり広い小さい目がちぐはぐな印象で、洒落っ気のないレンズの大きい眼鏡がいつも着ている白衣の印象と相まって宇宙人めいた風貌にみせている。目と目の感覚がかなり広い。未玖が美術教師として働きだした時、交際を申し込んでくる。
- 真野(まの)
- 未玖が授業を受け持っている1年2組の生徒で、美玖に好意をもっている。鋭い目元と色素の薄い前髪をしており、雄大と少し似ている。
君本家の誘拐
[編集]- 初出:文春ムック『オールスイリ2012』
君本良枝は大型ショッピングモールの中で半狂乱になっていた。今さっきまで自分が押していたベビーカーと、中に乗っていたはずの娘の咲良が忽然と姿を消してしまったのだ。やっと妊娠できて咲良が産まれてきた時の喜びを忘れ、泣き声に毎日悩まされて咲良を疎ましく感じはじめてしまっていた良枝は、激しく後悔する。
- 君本 良枝(きみもと よしえ)
- 健康と美容を売り文句にした自然食材やその加工品を扱う大手の食品会社勤務。以前は営業にいたが、今は経理の事務職に変わった。実家は静岡にある。
- 子供が欲しい願望が強かったがなかなかできず、悩んでいたが結局自然妊娠した。しかし産まれてみれば毎日咲良の泣き声に悩まされ、毎日のように咲良から離れたいと思っている。
- 君本咲良(きみもと さくら)
- 生後10か月の君枝と学の娘。一重まぶたの丸顔で、誰が見てもはっきりと口にするほど父親の学に似ている。
- 君本 学(きみもと まなぶ)
- 良枝の夫で良枝と同い年。君枝とは同じ大学で知り合い、お互い26歳の時に結婚した。実家は茨城にあり、長男夫婦が同居している。3歳になる姪がいる。
- 皐月(さつき)
- 学の兄の嫁で専業主婦。3歳になる娘がいるが、「子供なんて産むもんじゃない」と良枝に愚痴をこぼし、よく実家に娘を置いたまま遊びに行ってしまう。
- 天野 千波(あまの ちなみ)
- 良枝の高校時代からの友達。保育士で、子供が好き。
- 照井 理彩(てるい りさ)
- 良枝と高校生時代のクラスメイト。女性誌にもよく掲載されている海外ブランドの青山店で働いている。良枝より後に結婚した。
テレビドラマ
[編集]鍵のない夢を見る | |
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ジャンル | テレビドラマ |
原作 | 辻村深月 |
脚本 |
武井彩 大久保ともみ 阿相クミコ 佐藤久美子 |
演出 |
村上正典 木下高男 後藤庸介 |
出演者 |
倉科カナ 成海璃子 木村多江 高梨臨 広末涼子 |
製作 | |
プロデューサー |
喜多麗子(プロデュース)/ 貸川聡子 森安彩 |
制作 | WOWOW |
放送 | |
放送国・地域 | 日本 |
放送期間 | 2013年9月1日 - 9月29日 |
放送時間 | 日曜日22:00 - 23:00 |
放送枠 | 連続ドラマW |
放送分 | 60分 |
回数 | 5 |
公式サイト |
WOWOWの連続ドラマWにて、2013年9月1日から29日まで、全5話構成のオムニバスドラマとして放映された[3]。
キャスト
[編集]- 第1夜「芹葉大学の夢と殺人」
- 第2夜「美弥谷団地の逃亡者」
- 第3夜「石蕗南地区の放火」
- 第4夜「仁志野町の泥棒」
- 最終夜「君本家の誘拐」
スタッフ
[編集]- 原作 - 辻村深月
- 脚本 - 武井彩、大久保ともみ、阿相クミコ、佐藤久美子
- 音楽 - Team Legato(今泉洋、梅堀淳、高木洋、スワベック・コバレフスキ)
- イメージソング - EXILE TAKAHIRO 「一千一秒」[14]
- 演出 - 村上正典、木下高男、後藤庸介
- プロデュース - 喜多麗子
- プロデューサー - 貸川聡子、森安彩
- アソシエイトプロデューサー - 後藤庸介
- 制作 - WOWOW、共同テレビ
放映日程
[編集]話数 | 放送日 | サブタイトル | 脚本 | 演出 |
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第1夜 | 2013年9月 | 1日芹葉大学の夢と殺人 | 武井彩 | 村上正典 |
第2夜 | 9月 | 8日美弥谷団地の逃亡者 | 木下高男 | |
第3夜 | 9月15日 | 石蕗南地区の放火 | 阿相クミコ | 後藤庸介 |
第4夜 | 9月22日 | 仁志野町の泥棒 | 佐藤久美子 | 木下高男 |
最終夜 | 9月29日 | 君本家の誘拐 | 大久保ともみ | 村上正典 |
関連商品
[編集]2014年10月3日にDVDが20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパンから発売された。
WOWOW 連続ドラマW | ||
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前番組 | 番組名 | 次番組 |
パンとスープとネコ日和
(2013.7.21 - 2013.8.11) |
鍵のない夢を見る
(2013.9.1 - 2013.9.29) |
LINK
(2013.10.6 - 2013.11.3) |
脚注
[編集]- ^ 竹縄昌 (2012年7月29日). ““直木賞”辻村深月、3年後の凄い作品に期待!”. zakzak 2013年9月25日閲覧。
- ^ a b “普通の人に訪れる転落を描く、作家の新境地”. 週刊文春WEB (2012年6月24日). 2013年10月27日閲覧。
- ^ a b c “鍵のない夢を見る:各話の主演女優に広末、成海、倉科ら WOWOWで9月から”. MANTANWEB. (2013年7月27日) 2013年10月26日閲覧。
- ^ 椿山和雄 (2013年8月27日). “倉科カナ「ダメ男、理解できました。」……“他人事”ではない怖さ描く、直木賞作品『鍵のない夢を見る』”. RBB TODAY. 2013年10月27日閲覧。
- ^ “倉科カナが“尽くす女”に!ダメ男の魅力は「3対7の“飴とムチ”」”. cinemacafe.net (2013年8月27日). 2013年10月27日閲覧。
- ^ 花 (2013年9月6日). “成海璃子、出会い系サイトで知り合ったDV男との関係を断ちきれず……”. RBB TODAY. 2013年10月27日閲覧。
- ^ “成海璃子、ヒロイン役も共感よりエール…「歪んでるよ!強くなれ!」”. cinemacafe.net (2013年9月6日). 2013年10月27日閲覧。
- ^ “木村多江、アラサ―女性の“恋の防衛本能”に「あるある…(笑)」”. cinemacafe.net (2013年9月14日). 2013年10月27日閲覧。
- ^ “高梨臨、“見て見ぬふり”に葛藤 「自分のことを一番に考えてもいい」”. cinemacafe.net (2013年9月20日). 2013年9月25日閲覧。
- ^ 高梨臨(インタビュー)「【WOWOW】連続ドラマW「鍵のない夢を見る」出演・高梨臨インタビュー」『産經関西』、2013年9月21日。オリジナルの2013年9月27日時点におけるアーカイブ 。2016年12月2日閲覧。
- ^ “広末涼子、育児を語る「喜びと発見の連続で、最高に楽しい」”. 映画.com (2013年8月27日). 2013年10月27日閲覧。
- ^ “広末涼子、女優業の充実語る 30代で花嫁姿は「本当恥ずかしい(笑)」”. ORICON STYLE (2013年9月27日). 2013年10月27日閲覧。
- ^ “広末涼子、育児ノイローゼのヒロインに共感…「甘えることが大事」と世のママにエール”. cinemacafe.net (2013年9月27日). 2013年10月27日閲覧。
- ^ “連続ドラマ「鍵のない夢を見る」のイメージソングにEXILE TAKAHIROの初ソロシングル「一千一秒」が決定”. BARKS (2013年7月27日). 2013年9月25日閲覧。
外部リンク
[編集]- 文藝春秋
- 鍵のない夢を見る - 公式サイト
- 辻村深月インタビュー - 週刊文春WEB
- 直木賞受賞会見 - BOOK.asahi.com
- WOWOW
- 連続ドラマW 鍵のない夢を見る - ドラマ公式サイト
- 辻村深月×木村多江 - スペシャル対談
- 連続ドラマW 鍵のない夢を見る - WOWOWオンライン
- 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
- WOWOW×FOX「鍵のない夢を見る」 - DVD特設サイト