加賀乙彦『殉教者』大分・国東 不屈の司祭が眺めた入り江
加賀乙彦『殉教者』大分・国東 不屈の司祭が眺めた入り江
転び申さず候
キリスト教が厳しく迫害された江戸時代初期、エルサレムの地を日本人として初めて踏んだ男がいた。信仰に殉じた人、ペトロ岐部である。
驚くべき生涯だった。豊臣秀吉が宣教師の追放令を出した1587年生まれ。長崎県南島原市にあった神学校で学び、キリシタン追放令によってマカオに渡った。船に乗って、マラッカからインドのゴアへ。仲間と別れ陸路を旅し、灼熱(しゃくねつ)の砂漠を越えて聖地エルサレムに…