コンテンツにスキップ

強き蟻

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
強き蟻
著者 松本清張
発行日 1971年4月
発行元 文藝春秋
ジャンル 小説
日本の旗 日本
言語 日本語
ページ数 421(文庫本・2013年版)
コード ISBN 4167697335
ISBN 978-4167697334(文庫本)
ウィキポータル 文学
[ ウィキデータ項目を編集 ]
テンプレートを表示

強き蟻』(つよきあり)は、松本清張の長編小説。『文藝春秋』に連載され(1970年1月号 - 1971年3月号)、1971年4月に文藝春秋から刊行された。夫の遺産を根こそぎ確保しようとたくらむ女性の、周到な殺害計画を描くピカレスク長編。タイトルは西東三鬼の句「墓の前強き蟻ゐて奔走す」に由来する[1]

これまで3度テレビドラマ化されている。

あらすじ

[編集]

東銀座の「みの笠」で水商売をしていた伊佐子は、現在はS光学取締役の肩書きを持つ沢田信弘に嫁ぎ、渋谷松濤で生活している。夫は30前後も年齢が離れているが、伊佐子の今後の人生計画からすれば、夫にあと3年くらいで死んでもらうのが理想的であった。身体の若さを保ちたい伊佐子は、20代の男たちと遊びの交際をしていたが、ある時、伊佐子の遊び相手の石井寛二が殺人容疑で捕まる。石井の仲間から弁護料を負担するよう求められた伊佐子は、食品会社副社長の塩月芳彦に援助を交渉する。塩月とは「みの笠」の時から続く関係だが、威光の利く保守党の実力者を叔父に持っていた。石井の件の始末をはかろうとする矢先、信弘が心筋梗塞を発症する。財産の確保のためには、最適な時期に最適な条件で夫に死んでもらうことが必要であり、伊佐子は状況を有利にするため奔走を続けるが……。

登場人物

[編集]
小説の舞台となる東京・渋谷区の住宅街・松濤(写真は東京都知事公館)
  • 原作における設定を記述。
沢田伊佐子
S光学重役夫人。夫の前では愛情を口にしているが、その裏では・・・。
沢田信弘
伊佐子の夫。工学博士号を持つ、S光学の技術的功労者。
塩月芳彦
政治家など有力筋の人脈を持つ副社長。多芸で器用。
佐伯義男
塩月が伊佐子に紹介した弁護士。兄は病院の院長。
石井寛二
五反田アパートに住む、証券会社セールスマン
宮原素子
沢田家に来た若い速記者
豊子・妙子
ともに信弘の先妻の娘。
福島乃理子
石井の彼女。キャバクラ嬢

エピソード

[編集]
  • 本作執筆の動機に関して著者は、非常に割り切った性格の若い後妻が外に恋人を持っているらしいが、病気で寝ている夫の方はどうしようもない、その状況に胸打たれたことからと発言している[2]。その人物が誰を指すか著者は明言していないが、当時『文藝春秋』で本作の担当編集者であった高橋一清は、本作が木々高太郎(本作連載開始前の1969年10月に心筋梗塞で死去)をモデルにしていると言われて話題になったと述べている[3]
  • エッセイストの酒井順子は、沢田伊佐子は「性欲、金銭欲、そして夫殺しをも厭わない実行力」と、三拍子揃った全方位的な悪女、清張型悪女の典型と言ってもいい存在と述べ、読者の年齢層が高く、さらには週刊誌よりも高所得層が読んでいそうな雑誌(『文藝春秋』)に書くには、後妻によるお家乗っ取りは最適の話題と言えると述べている[4]

翻訳

[編集]

テレビドラマ

[編集]

1981年版

[編集]
松本清張の強き蟻
ジャンル テレビドラマ
原作 松本清張『強き蟻』
脚本 重森孝子
監督 香坂信之
出演者 浜木綿子
製作
制作 日本テレビ
放送
放送国・地域日本の旗 日本
放送期間1981年6月25日
放送時間木曜日21:02 - 22:51
放送枠木曜ゴールデンドラマ
放送分109分
回数1
テンプレートを表示

松本清張の強き蟻』は、日本テレビ系列2時間ドラマ木曜ゴールデンドラマ』(毎週木曜日21:02 - 22:51、JST)で1981年6月25日に放送された。主演は浜木綿子。視聴率20.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。

キャスト
スタッフ
日本テレビ系列 木曜ゴールデンドラマ
前番組 番組名 次番組
はばたけ愛の翼
(原作:草鹿宏
(1981.6.18)
松本清張の強き蟻
(1981.6.25)
かげろうの死
(1981.7.2)

2006年版

[編集]
松本清張特別企画
強き蟻
ジャンル テレビドラマ
原作 松本清張『強き蟻』
脚本 西岡琢也
監督 黒沢直輔
出演者 若村麻由美
エンディング 島谷ひとみ恋水-tears of love-
製作
制作 テレビ東京
BSジャパン
放送
放送国・地域日本の旗 日本
放送期間2006年7月16日(BSジャパン)
2006年7月19日(テレビ東京)
放送時間21:00 - 23:18
放送枠BSミステリー(BSジャパン)
水曜ミステリー9テレビ東京系
放送分138分
回数1
テンプレートを表示

松本清張特別企画・強き蟻』は、テレビ東京BSジャパン共同制作の2時間ドラマで放送された。主演は若村麻由美

BSジャパンの「BSミステリー」(日曜日21:00 - 23:18、JST)では2006年7月16日に放送。

テレビ東京系の『水曜ミステリー9』(水曜日21:00 - 23:18、JST)では2006年7月19日に放送。

キャスト
スタッフ
テレビ東京系列 水曜ミステリー9
前番組 番組名 次番組
松本清張特別企画
強き蟻
(2006.7.19)

2014年版

[編集]
松本清張 強き蟻
ジャンル テレビドラマ
原作 松本清張『強き蟻』
脚本 森下直
演出 松田秀知
出演者 米倉涼子
製作
プロデューサー 岡部紳二(テレビ東京)ほか
制作 テレビ東京
放送
音声形式音声多重放送
放送国・地域日本の旗 日本
放送期間2014年7月2日
放送時間水曜21:00 - 23:08
放送分128分
回数1
公式サイト

特記事項:
20:58 - 21:00に直前番組「"松本清張 強き蟻"みどころ」も別途放送。
テンプレートを表示

松本清張 強き蟻』は、テレビ東京系2014年7月2日に放送された。主演は米倉涼子

テレビ東京開局50周年特別企画。

放送時間(JST)は水曜21:00 - 23:08[5]で、この枠は通常編成時の『水曜ミステリー9』の時間帯での放送だが、本作は『水曜ミステリー9』枠外で放送された。視聴率は10.0%(ビデオリサーチ調べ・関東地区)[6]

キャスト
ほか
スタッフ

脚注・出典

[編集]
  1. ^ 米倉涼子、テレ東初出演で“悪女” 松本清張ドラマ主演に「この上ない喜び」”. ORICON NEWS (2016年10月5日). 2019年11月18日閲覧。
  2. ^ 佐野洋との対談「清張ミステリーの奥義」(『小説推理』1976年6・7月号掲載、後に『発想の原点』(1977年、双葉社、2006年、双葉文庫)に収録)参照。
  3. ^ 高橋一清『編集者魂』(2008年、青志社、2012年、集英社文庫)参照。
  4. ^ 酒井順子「松本清張の女たち」第9回「三大"玄人悪女もの"を読む」(『小説新潮』2023年4月号掲載)参照。
  5. ^ 20:58 - 21:00に直前番組「"松本清張 強き蟻"みどころ」も別途放送(出典:朝日新聞デジタル テレビ番組表 2014年7月2日 20:58〜21:00 テレビ東京 2014年6月30日閲覧)。
  6. ^ 週間高世帯視聴率番組10(最新) | ビデオリサーチ

外部リンク

[編集]